2010年5月4日火曜日

【JR久留里線PETIT撮影記】国鉄色キハ30、原付に負けながらも活躍す!

木更津では目の前に「国鉄ワールド」が広がっていた

■国鉄気動車色のキハ30に乗ってきた
「赤い電車は羽田からぼくらを乗せてひとっ飛び」(くるり『赤い電車』)というふうに軽やかにはいかないけれど、小さな山の裾野にある小さな小さな城下町の久留里駅に朱色とクリーム色の塗りわけのディーゼルカーがゆっくりやって来た。ここで上り列車とタブレットを交換する。そんなシーンを見て、来てよかったと思った。

連休二日目は小さな子どもを連れて房総半島を走るJR久留里線に乗ってきた。近くを走る小湊鉄道は何回も観光で出かけて乗ったことも数多くあるのに、久留里線に乗ったのは初めてだ。

■塗装のセンスが好みではなくて避けていた
行ったことのない理由は、おそらくたぶんみなさんと同じ。沿線にたいした観光名所もない気がした。それは単に知らないだけで、潮干狩りができる木更津や水のきれいな小さな城下町久留里、亀山ダムなど、その気になれば観光に値するなにかはある。また、久留里から養老渓谷まで12キロだから、車ならすぐだ。

久留里線を走っているのは私にはあれな塗装のキハ30、37、38。キハ30はかつては珍しくもなんともなかったディーゼルカーだったし。八高線電化後は貴重な存在になってはいたけれど、どうも派手な色にでセンス的にあれだと思っていた。

そういうわけで、房総方面に来たら養老渓谷があって車両的にもローカルムードがより好ましい小湊鉄道には行っても、ついぞ久留里線へ足を向けたことはなかった。

まずは上総亀山行きが入線

そんな久留里線だけど、あれは昨年のことだったか。パートナー氏が取材で出かけてきて「非電化単線でタブレット交換もしているし、久留里の町の雰囲気もいい。ローカルムードがたいへんいい感じである」という。そういわれると俄然行き先としての候補になる魅力がある。でも、キハの塗装がいまひとつなんだよなあ、と思っていた。

■国鉄色キター!
そうしたおり、昨年秋にキハ30がかつての国鉄気動車色に塗り替えられたというわけだ。タラコ色の首都圏色ではない。朱色とクリームのかつては日本全国津々浦々に走っていた、首都圏色以前の国鉄気動車標準塗装だ。しかも、この冬にかけてこの塗装の車両が1両ずつふえて、ついに3両になった。そして、このゴールデンウィークには国鉄色だけで3両編成や2両編成で走るというではないか。運用も公開されているので狙いやすい。やるな、JR千葉支社。**のストばかりではないね。

そこで、前日に八高線に乗りながらこのキハ30のことを思い出して、久留里線に小さな子どもを連れて国鉄色ディーゼルカーに乗りに行ったというわけだ。私の年齢だとタラコ色の首都圏色やアイボリーに紺色の相模線色しか実際にはリアルタイムで見てはいないけれど、ツートンカラーの気動車標準色はローカルムードに似合ういい塗装だと思う。

木更津までは東京湾アクアラインを経由する高速バスに新宿西口から乗って行った。どうせなら、内房線の横須賀色の113系電車に乗りたかったのに、新宿始発の高速バスの値段と時間に負けた。特急に乗るのと時間もそう変わらない時間でたどり着くのだもの。

バスから降りて木更津駅の久留里線ホームから見たら、キハ30は3両とも車庫に並んでいた。しかも、国鉄色のDE10もいる! 国鉄時代万歳! という雰囲気満点だ。ちなみに、今日は2両編成が夕方に一往復するだけの日だ。運用的には「はずれ」の日かもしれない。

じつはわざとそんな日を選んで出かけた。

■西日を浴びてやってきたキハ30国鉄色がすばらしい
理由は簡単だ。撮影目的の一人旅ではなく、小さな子どもを連れた行楽の「ついで鉄」なので、「3両編成で何往復もする」日に来たらおそらく人出が多かろう。小さい子どもがちょろちょろして他の撮影者に迷惑がかかるだろうし。人出が多いと「ついでにちょろっと」では撮りづらそうだ。

そこでまずは久留里まで久留里線色のキハ37・38に乗り、散策してお弁当を食べたり久留里城を見た。田植えシーズンだからあちこちの田に水が張られ蛙の鳴き声も聞こえる。鯉のぼりもひるがえり、ニッポンの典型的な農村風景が目の前に展開されていい気持ちになる。久留里の町では井戸水を飲んだり古い町並みを眺めた。

そうして散策を終えると、ねらったわけではないのに帰路はちょうと久留里駅に上り列車に国鉄色のキハ30の2両編成が来る時間だった。しかも、交換する下り列車も先頭は国鉄色キハ30だ。ホーム端にはまだ陽が当たる。どんどん赤みが増す光のなかをやってきたキハ30の2両編成はほんとうに懐かしい感じがしてうれしくなった。

西日を浴びて国鉄色2連が登場!

タブレット交換をして上下列車とも出発した。私たちは上り列車に乗った。それにしてもなつかしい、キハ30! 八高線で最後に乗ったのがおそらく1992年春ろうか。えーと、18年ぶりですか。

でもあれれ、エンジンの音がちがう気がする。あのうるさいアイドリングのがらがら音がしないような。帰宅してGoogle検索をあれこれかけて知ったのは機関交換がなされて、DMH17エンジンではなくなっていたということ。それはまあいい。

木更津までの上り列車は並行する道路を走る原付に何度も抜かれながらのんびり走っていた。わずかな時間ではあってもなつかしいディーゼルカーの旅は、素敵だった。

【撮影データ】
Nikon D2X/AI AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>/RAW