ドイツに行ったのは例の見本市関連でもあるけど、ほかにもとある町を仕事で訪れることも目的だった。目的地はヘッセン州の町ウェッツラー(ヴェッツラー、以下濁らずにカメラ・写真業界での日本語の慣用通りに「ウェッツラー」と記す)。
レギオナルエキスプレスの客車列車 |
こちらは各駅停車 |
当宿地であるデュッセルドルフからだと、ケルンとジーゲンを経由して2時半から3時間というところか。直通する特急列車がないようなので、ケルンとジーゲンでローカル列車に乗り継いだ。ちなみに、ウェッツラーはフランクフルト・アム・マインからのほうが距離が短く1時間くらいで到着できるそうだ。ウェッツラーまで直通する特急列車もあるようだ。
だから、いちどフランクフルト中央駅行き特急に乗り、さらに乗り換える方法もある。でも、遠回りすることになる。仕事で行くなら特急でとは思うけど、ここは外国だ。しかも、訪問する先の待ち合わせがあるわけでもない。そう思えば外国でローカル列車に乗り継ぎで旅行ができるのは、じつに楽しいではないですか。ありがたやありがたや。
■空港駅で"Scheisse!"おじさんに遭遇して「ドイツに来たなあ」と思う
さて、事前にインターネットで経路などの目星をつけて出発当日にデュッセルドルフ中央駅の切符売り場へ行った。こちらの鉄道の切符はカウンター式の窓口と自動券売機のどちらでも購入できる。だが、この券売機の操作はできればあまり私は用いたくない。操作がむずかしいわけではない。
私が経験した券売機のなかでいちばん考えこまされたのが、アメリカに行ったときに接したワシントンメトロの券売機だった。それにくらべたらこちらの券売機は簡単だ。タッチパネルも用意されているし。
だが、到着した日のフランクフルト空港駅のそれをうまく使うことができなかった。まず、使用言語を独仏英西トルコからを選択し、タッチパネルで行き先や枚数、等級などを入力する。初見の外国人でもそこまではわかる。ただ、いま思うとその端末のタッチパネルの感度がたまたま悪かったのだろう。
行き先に"Düsseldorf"と入力するためにDを押して出てくる変換候補が、どうやっても入力できないのだ。連想変換が使えないので一文字ずつ入力するモードに切り替えても、こんどはウムラウトのついた"ü"が入力できなくて"Düsseldorf"にならない。
こまったなあ、と考えていたらとなりの券売機でおじさんがやっぱり"Scheisse!"とののしりながらも操作して、でもなんとか切符を買っている。この"Scheisse!"を耳にして、「あー、いま俺氏超絶ドイツにいるわ」と実感したよね。
フランクフルト・アム・マインというと、それまではどうしてもクララが住んでいるところという連想をしていたのに。おじいさんに白いパンを……とハイジが夢遊病にかかってしまう大都会だもの。これ以降はどうしてもあの"Scheisse!"おじさんのことを思い出すようになった。
そこでその"Scheisse!"おじさんに、"Düsseldorf"と打ちたいのにどうすればどうすればエンターできるのかとたずねたら、「俺もわからないんだよねー」といいながら操作を教えてくれた。それなのに、やはり変換候補の入力ができない。「しかたない、窓口で買いますね。どうもありがとう」とその場では別れた。
のちにべつの端末ででは変換候補をタッチしてきちんと入力できたから、フランクフルト空港のあの端末がおかしかったんだ。
今回は乗り継ぎのことを聞きたかったこともあって、中央駅の窓口に来た。みどりの窓口みたいな窓口で、銀行や郵便局のように番号札で待つ。みなさんなにやら話しなながら切符を買うのでなかなか進まない。いちおうそれを予期して宿を早めに出たからあせることはない。
そうして陽気なイケメンおにいさんから切符を買った。飛行機のEチケットみたいなプリントアウトだ。
それにしても、この旅行であった人たちはみんな「グーテン・モルゲン」の「グーテン」を誰もいわないのね。
東日本大震災の写真展をやっていた |
■ケルン中央駅で時間つぶしをしてから乗り換え
陽気なイケメンお兄さんがお調子者だったのか、日本の鉄道があれなのか。切符を買ってホームに行くと、ケルン中央まで乗るはずだったICEがいきなり15分遅延ですよ。ドイツ鉄道Webサイトで調べた今回の行程での乗り継ぎ時間はケルン中央では10分程度しかない。
レギオナルエキスプレスの2階席からケルン中央駅ホーム |
もちろん、ケルン中央で接続する列車が待っているわけはない。そんないうわけで、ジーゲン行きは予定より1時間あとの列車になった。仕方なく駅前すぐの大聖堂をぽかーんと上げたり、マクドナルドでプレミアムローストコーヒーを買ったり、その前で集会をして某国政府に反対表明をしている宗教集団の人たちに話しかけられたり、写真展を見て時間をつぶした。
ジーゲン行き列車は111型電気機関車が牽引する2階建て客車列車だ。どうも高崎線や東海道線でE231系グリーン車で揺られているような気持ちになるね。
重連のタンカートレインだああ |
■吾妻線や御殿場線を走っているよう
ジーゲン行きはケルン中央を出るとフランクフルト方面へ行く本線とわかれて山の中へ進んで行く。そうだなあ、E231系グリーン車だけど、吾妻線や御殿場線にそのまま乗り入れて行くような感じかな。
列車とバスが同一平面で乗り換えできる |
情緒のある駅ではないけれど機能的だ |
ケルンからジーゲンまでのこの路線はドイツでも最も古い線のひとつなのだそうで、れんが造りの駅舎やトンネルがあちこちにある。ただし、側線の撤去や工場の引き込み線、貨物ホームの撤去などの鉄道の栄枯盛衰もかいまみえるようだった。トラック輸送の普及により車扱荷物が廃止になった日本の鉄道のことをどうしても連想する。
列車とバスの乗り換えがすぐにできる駅を見た。これは日本の鉄道にもほしい。地方に行けば行くほど鉄道駅からの二次交通がきちんと考えられていない駅は多い。駅からの二次交通が存在しないために、鉄道を利用したくてもしづらい駅が多いもの。
B-Bでセミセンターキャブとは |
あそこを走る列車はあるのかな |
1時間ほど乗ってジーゲンに着いた。鉄鋼と材木の町でオランダの画家ルーベンスの生誕地だそうで 山の中にある雰囲気だけど製鉄のおかげで古くから発達したのだろう。駅舎も古いし、なんだか水上あたりにいるような気持ちになる。ただし、人口10万5千人とそれなりに大きい。 駅前は大型ショッピングモールもいくつもあり、私の住む町よりも都会的だ。
レールバスと古いクレーン車、転車台と円形機関庫 |
そして、この鉄道には歴史があるという誇りのようなものを感じたは、駅構内に転車台と円形機関庫が残され、50型蒸気機関車をはじめ旧型客車やレールバスが保存されていること。わあ! かわいい!
ドイツの蒸気機関車はカッコいいよな |
ジーゲンで乗り換え。列車内に持ちこみ可能とはいえ 乗り換え時にホームで自転車に乗るなんてwunderbarですわね(ほめてる) |
ジーゲンから先はHLバーンというロゴのヘッセン州鉄道に乗り換える。乗り換え時間が少ないのでジーゲンの保存車両を見ている時間はないようだ。駅構内で自転車に乗る女の子がいるけれど、あらまあ合理的でいいわね。
そうしたら、駅員氏にウェッツラーに行くなら急ぎなさい!("Wetsler? Hurry up!!")と急かされた。
ウェッツラーは小さな駅。磐梯町よりは大きいか |
さらに1時間ほど揺られて目的地であるウェッツラーに到着した。小さな駅だ。そうだなあ、どこに似ているか。うーん、北本とか桶川とか高崎線の各駅停車しか停まらないような中間駅に似てるかなあ。変な例えだけど埼玉の誇りを忘れない私なりの表現だ。
どうしてウェッツラーに来たかって……カメラの歴史探訪みたいな記事の写真が必要だから。
【撮影データ】
Nikon D4/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED/RAW/Adobe Photoshop CC