日を追うごとに新緑が濃くなって来る。日も長くなり、少し前までは夕方が早かったのに、いまなら6時過ぎでも明るい。夏ほどには蒸し暑くないさわやかで過ごしやすい季節がやってきた。
春の運休期間を早めに終えて、連休中も秩父路を鉱石貨物列車が走っていた。その先頭に立つデキは日替わりであり、沿線訪問時の毎度のお楽しみとも言える。私自身は連休中に最古参のデキ102、赤デキの103号機、車体の角が少し丸められた105号機、ツララ切りのひさしのある108号機の活躍を見ることができたから、じゅうぶん楽しませてもらった。
緑のなかを走るデキの水色はなかなかかわいらしいと思う。それでも、小柄な見かけと違ってけっこうな力持ちなのだ。秩父党のみなさんで、武川、桜沢、寄居、波久礼、野上、長瀞、和銅黒谷、親鼻などの貨物列車が退避できる駅で鉱石貨物列車が発車するシーンをご覧になった方ならよくおわかりのはずだ。デキの運転士がブレーキを緩めると空気が列車全体を通る音がして、「ががががががーん!」と自動連結器の隙間が音を立てて、デキのうなり声のような始動音とともに列車が動き出すようすは、一見の価値がある。あれを見るとしびれるよ!
さて、1000系電車がいなくなったあとの秩父で何を撮ろうか迷い続けてしばらく経った。1000系電車がいないなら、
そもそも1000系電車だって、私にはもしかしたら"an old good thing"のうちのひとつだったのかもしれない。昭和という時代には愛憎があり、手放しで賛美する気持ちにもなれない。けれど、やはり私が撮りたいのは過ぎ去りしよき時代の名残なのだろうと思う。以前も書いたけど、写真家はやはり保守反動な生き物だ。だって、未来は写真に写すことはできないから。