2012年3月8日木曜日

【2012年3月】さよなら、485系電車『ホームライナー鴻巣3号』



■首都圏では貴重な「国鉄特急型」
国鉄特急色塗装、MT54主電動機と抵抗制御、方向幕、特急マークエンブレム、ダブルパンタグラフ……。こう書いただけでも2012年春のいまとなっては大変貴重な昭和な(国鉄好き鉄ヲタにとっての)国鉄的要素でいっぱいの、JR東日本新潟車両センター所属485系電車。この485系による臨時急行『能登』と、その間合い運用である『ホームライナー鴻巣』3号および『同古河』3号は、急行『能登』がJR西日本金沢総合車両所属の489系電車から置き換えられたあとに残された、首都圏で見ることができる貴重な国鉄特急形車両を用いた列車だった。



とはいえ、ご存知のとおり臨時急行『能登』の運転終了を受けて、来週(2012年3月)のダイヤ改正でほかの高崎線および宇都宮線ホームライナーと同じように、185系電車に置き換わる。その置き換えまで残り10日もない時期になってしまった。一昨年春から489系電車から485系電車に置き換わり、果たしてそれがいつまで続くかと思われたけど……。二年で置き換わるとは。首都圏で国鉄特急色車両が定期運用としては見られなくなるのは、昭和のおっさんとしては残念だ。


■二年で置き換わるのは残念なり
もっとも、やはり車両が古くなって傷んでいることは否定できない。新潟の485系はとても念入りに手入れされている印象があったけれど、それでも最新の特急型に比べたら車内設備のクオリティも見劣りする。急行『能登』としても高速バスに勝てなかったわけだし、ホームライナーとしても古めかしさは否めない。185系電車になるのはサービス向上かどうかは微妙な気もするけど、高崎線・宇都宮線にはほかに使える電車もない(【2016年6月追記】:常磐線の651系電車がやってくるとは)。その185系だって、国鉄末期の特急と急行の中間的な存在の「新特急」だ。



さて、そう思って気になりながらもずっと見に行けなかったのは、平日限定の列車であることと、会社勤めをしていて保育園児のいる私には微妙に撮りにくい時間に上野を発つからだ。子どもを迎えに行く時間に間に合わないので、見に行けずにいた。

ところが、幸か不幸か私の滞在している「ダーチャ」(ロシア語「別荘」)が鴻巣にあった。その偶然を享受すべく「滞在中」には何度も鴻巣駅まで夜の散歩に出て、到着の様子を出迎えた。ちゃんと「電車を見たいから」と主治医にはカミングアウトしていたけれど、出かけるたびに「パチンコに行くの」「赤い提灯がまぶしいわよね」「一杯引っかけてるんじゃないの」などと「シストラー」たちにからかわれながら。


■お名残乗車をしてきた
でも、見るだけではなくやはり乗ってみたい。

ダーチャ滞在中のある日のこと、都内に出る許可をもらって用事を済ませるべく上京した。そして、用を済ませたあとで、ダーチャへ戻るのに『ホームライナー鴻巣』3号を利用することにした。もちろん、このことも考慮して行程を組んだ。


さて、都内での用事を済ませてから息を弾ませて上野に着いたのが18時5分ごろ。まずはライナー券を買い、常磐線ホームへ早足で向かった。

葬式鉄だらけだとしたらいやだなあ。あ、三脚を制止されてるヲタがいる。ラッシュ時にホーム真ん中でこれから列車がやって来るのに三脚なんて立てたらだめだろ……。などという光景を見ながらホーム端に行く。すると先客は一名のみだった。『能登』じゃないからか、485系K1編成だからか。



「どうもどうも。こんばんは〜! 『鴻巣』3号ですね。私は後ろに立ちますからね、よろしく~」と、なごやかに場所の確保に成功した。一昨年の『能登』とホームライナーからの489系引退前は、2月中でも葬式鉄がワンサカいて、こういうふうに和やかには場所を確保できなかったっけ。

コンデジユーザーさんたちは夜の入線シーンを撮ろうなんて思わないか。コントラストAFのカメラでは夜の入線シーンは置きピンではないと難しいものね。

そこへ、数分後に尾久からのそのそと485系がやって来た。待ち時間なしで撮れてよかったけど、人数が少ないからなんとかなっただけで、けっこう時間的にはギリギリだ。以前、489系を撮ったときはD300SにAF-G DX16~85ミリVRレンズを組み合わせてISO 1,600が使えたけど、今日にの相棒であるD2Xでは、ISO 800がせいいっぱいだ。ただし持参したレンズがAF50mm f/1.4Dだからf2.8を選べる。1/40秒で絶賛流し撮りだ。上野は明るいから助かる。

常磐線ホームから撮るのは常磐線の電車がいるからあきらめて、『鴻巣』3号にそそくさと乗り込んだ。狙いは上り側先頭のクロハ481。一両にグリーン車室と普通車室がある車両で、ライナー号は座席指定ではないし、グリーン料金不要でグリーン車室に乗ることができる。

とはいえ、きちんと並んでいなかったのでさすがにグリーン車には座れなかった。この列車に乗り慣れている人たちは、この半室グリーン車の存在を知っているから、あらかじめ1号車を目指すから。入線シーンを撮るかグリーン車に乗るかはどちらか選ばないといけない。


それにしても、上野発車時は座席がきちんと埋まることを知って驚いた。スーツではなくカメラを持ち、缶ビールを飲まないお名残乗車の乗客はもちろんいたけど、乗客の大半は通勤帰宅客で、おそらくみなさん常連客だ。115系豊田M40編成時代の18時半大宮発の快速『むさしの号』と同様に、この列車は列車に乗り込んで「缶ビールプシュッ!」が好きな客に愛されていたのだろうと想像する。

今日はまだホームにいる鉄のみなさんも、コンデジがメインの人たちが多くて、がっつかない人が多かったのもありがたい。警備員が出て警戒され……みたいな騒ぎは見ていても愉快ではないもの。


■一時間ちょっとのプチ非日常を楽しんだ
さて、電車は定刻に上野を出て、通勤客満載の京浜東北線や高崎線、宇都宮線、湘南新宿ラインの走ルンですの合間をぬい、たまにあの寂しげな汽笛を鳴らして駆けていった。30分程度で大宮に着く。意外と乗降客が多い。定期券+500円でも、30分乗るならばたまの贅沢としては許容範囲か。小田急ロマンスカーの新宿~町田や西武レッドアローの池袋・西武新宿~所沢の利用客と似たようなものだろうか。

上尾でようやくグリーン室に空きが出たので座りに行く。足乗せがあり、シートピッチが広くてモケットが黒い。大人の落ち着いた雰囲気に満ちていてうれしくなった。そこへ、うとうとしかけたところであっというまに鴻巣に着いた。上野からせいぜい一時間程度の小さな旅だ。思えば私はいつもこんなことばかりしているけど……やはり楽しい。


鴻巣に到着した時点ですでに前後の方向幕はすでに回送幕のはずなので、何度も見ているのでもう先頭を撮りには行かなかった。そこで、後追いでも発車シーンの動画を撮るべく上りホームに行ってセッティングをした。485系は下り特急列車をやり過ごしてから、渡り線をわたって上り線に行きふたたび上野へ戻って行った。485系K1編成に乗ったのは、これが最後になった。新潟車両センターのこの485系K1編成は北陸新幹線開業にともない、2015年3月に廃車になったという。

【撮影データ】
Nikon D2X/AI AF Nikkor 50mm f/1.4D/RAW/Adobe Photoshop CC

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