2018年1月4日木曜日

【上毛電気鉄道撮影記事】晴れのち雪。デハ101を見ながら震えた日


■からっ風を浴びながら
東武伊勢崎線足利市駅を列車で通りかかるといつも、車窓から渡良瀬川にかかる古いアーチ橋(中橋)が見える。いつも気になっていて、列車から降りて歩いてみたいと思っていた。そこへ、上毛電気鉄道(以下、上電と略)の大胡電車庫(大胡列車区)で「新春イベント2018」が行われるというこの日に自宅から始発列車で上電沿線に向かっていたところ、経路ナビゲーションサービスでの経路検索結果には「東武伊勢崎線足利市駅で下車し、JR両毛線足利駅まで徒歩で移動して乗り替えろ」とあった。

渡りに船……というよりも、むしろ「橋」か。足利市で下車するりっぱな理由ができた。そう思って午前7時半ごろに足利市で下車したところ、風の冷たさにひどく驚かされた。そうか、これがからっ風などともよばれるやつではないか。そう思いひどく凍えながら渡良瀬川を渡った。気温自体はそう低くはない。風が強く、体感温度が下がるのだ。それにしても、この風の強さと冷たさは大丈夫なのだろうか。私はこのあと、この川の上流に行くつもりなのに。

■渡良瀬川の河川敷でアウフヘーベン
足利から乗ったJR両毛線を桐生で降りて上電西桐生に向かい、列車が渡良瀬川を渡る有名な場所にたどり着いた。ここしばらく、私は中央前橋寄りで撮ることが多かったし、この場所に来てももっぱら上流側からの道路橋である赤岩橋から撮ってばかりいた。理由は簡単で、下流側から上電の渡良瀬川橋梁を見ると、アングルを工夫しないと道路橋の赤岩橋をはじめ、桐生市内の住宅地が画面に写り込んでしまうから。

このところ、できるかぎり画面を単純でシンプルにしたいという気持ちが強い。そして、地方私鉄での撮影の腕のふるいどころは思うに、こうした写真に関係のないあれこれを画面のなかでうまく隠すところにあると思うのだ。あ、画面外に「排除」とか言ってはいけませんよ。怖いヒトだと思われてしまうからね。「アウフヘーベン(棚上げ)」するとか、そんな言い方のほうがきっといい。有名な映画監督のように「邪魔だなあ」とつぶやくとスタッフが走って行ってその対象物を解体してくれる……そんな妄想をしてひとりでくすくす笑いながら考えた。さあ、どうすればいいか。

自宅から始発列車でやってきたのは、こうしてあれこれ工夫する余裕がほしかったから。歩きまわりながらよく見ると河川敷のアシがすっかり枯れていて、長靴ではなくても水辺に降りやすくなっていることに気づいた。そこでさきほど、下流の渡良瀬川の橋の上で震えていたことなどを忘れて、藪の中を枯れたアシと格闘しながら水辺に出た。ランニングシューズのつま先を渡良瀬川の水が洗う。

とはいえ、さすがに水の中に降りる元気はない。それでも、三脚を川の中に立てて水辺で列車を待った。できるだけ渡良瀬川橋梁に近づき、橋梁に敷設されたケーブルが邪魔をしないようにし、赤岩橋を隠し、さらに背後の富士山(ふじやま)から列車が抜け出るところをうまくねらいたい。そのためにはカメラの高さを下げたかった。茶色い電車が茶色い木立の中にあると目立たないからだ。さらに10センチほど右側に三脚を立てることができれば、画面中央の橋脚の後ろに隠した白い建物を完全に隠せたろう。それをするには私自身も水中に立つ必要があった。富士山の木々の葉が緑色の時期ならば、もっとカメラ位置を引いて富士山と列車を組み合わせるのもいいなあ。水温が高く、かつ水量が少ない季節なら川の中から撮影してみたいと思っているのだが。

そうして1時間半ほどだろうか。河川敷を吹き抜ける風の冷たさを感じながら列車を待った……いや、ぶるぶると震えながら列車を待ったというほうが正しい。対岸の富士山下駅そばの電鈴式踏切が鳴りはじめて、デハ101が汽笛を鳴らして橋を渡り始めたときには、手袋をしていた手もかじかんでいた。ヒートテックも着てきたし、携帯式カイロを衣服に貼りつけていても、水辺でじっとしていたからね。じつに寒かったZE! 

■いつものようにおだやかで
このあとは、西桐生から折り返してくるデハ101を中央前橋方で撮るために、先行する列車に乗ろうと思っていた。けれど、このところいつも同じ場所で同じ撮り方をしているし、開けている場所ではないとこの時期は太陽が低くて建物の影も出る。そこで、中央前橋行きの第二便は赤岩橋からねらった。橋の上で赤城山を見ると白い雲に覆われていて山頂が見えない。

通りかかりのひとたちとあいさつがてらに雑談をしていて、よくまあこんな寒い日にいちばん寒い場所にいるね! 赤城山を見てごらんよ。雪雲で隠れているんだよ、あれは。とからかわれた。若い人たちが使っているネックウォーマーが必要だと思った。

赤岩橋で中央前橋行きのデハ101号車を撮ったあとは、すっかり凍えて寒いので大胡列車区に向かうつもりだった。ところが、デハ101を追いかける後続の普通列車の中央前橋着と、デハ101の第三便が中央前橋を出る時刻がほぼ同じ……ということは、大胡より中央前橋方にいれば、第三便もねらうことができる、ということに気づいてしまった。気づいてしまった以上、やるほかないよな、そりゃ。だから第三便もねらった。

そのあとで大胡まで戻ってきて、列車庫の中をあれこれ見た。デハ101と104が連結して試乗会が行われ、さらに綱引き大会も。腕章をつけた地元紙の記者が社長に取材しているのを横目に見つつ、会場を歩いた。いつ来てもわりとおだやかな雰囲気なのが素敵だなあ、と思いながら。


■風花が舞いはじめて
列車区のようすを写すために歩き回ってから、寒さにまいったこともあり早めに私は引き上げることにした。そこで、大胡のプラットホームで列車を待っていると、ときおり白い細かいものがあたりを舞うことに気づいた。きらきらと輝くこれはもしかして風花か、たしかに、雪が降ってもおかしくないような冷え込みだから……と思っていたら、風花はみるみる勢いを増した。これはもうりっぱな降雪なのではないかしら。望遠レンズがオートフォーカスでは誤測距するようになった。


そういうわけで、このあとやって来た列車で私は引き上げてしまった。寒いし、もうデハ101は入庫しているから。とはいえ、この雪は大胡から中央前橋に近づくにつれて姿を消した。ここ数年、年始に上電沿線にいることが多いけれど、風花を見たのははじめてだ。いや、訪れた日がたまたまいつも穏やかで暖かい日ばかりだったということなのかもしれない。ともかく、この日はデハ101の走りにも感激して震えたけれど、気温にも震えてばかりの一日だった。デハ101の走りはアツかったけどね。あっ、そういえばまた「北原ゆうきクリアファイル」を買い忘れた。

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【撮影データ】
Nikon D850/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR/RAW/Adobe Camera Raw/Adobe Photoshop CC 2018