2019年1月7日月曜日

【2018年夏関西リハビリ鉄記事】魅惑の近鉄旧特急色16007編成(Y07) 近鉄南大阪線沿線滞在記 最終回

オレンジとネイビーブルーの特急、まだおったんか!
■バラエティ豊かな近鉄特急の一端に触れて
2ヶ月ほど近鉄南大阪線沿線に滞在して知ったのは、近鉄特急はバラエティが豊かであるということ。近畿地方での長期生活がはじめての経験だったどころか、そもそも鉄道知識が1990年代のまま更新されていないような筆者は、近鉄特急というといまだにオレンジとネイビーブルーのツートンカラーのビスタカーとスナックカー、サニーカーばかり思い浮かべるような、古式ゆかしい人間なのだ。さすがに前面非貫通の連接車のあれを思い出すわけではないですよ。

しかも、ビスタカーもEXの文字がつかない姿だ。アーバンライナーやさくらライナーなどという列車のことはまったく知らなかった。自慢にもならないけれど。

それが南大阪線だけでも、16200系電車「青の交響曲(シンフォニー)」、26000系電車「さくらライナー」、汎用特急車である16000系電車、16010系電車、16400系電車「ACE」、16600系電車「新Ace」の6種もある。特急車両といえば1形式しかない私鉄沿線からきたあずまびとの私は驚かされたのだ。

ところが、南大阪線沿線について目にした青の交響曲(シンフォニー)」とさくらライナー以外の、汎用特急列車はほとんどが2019年夏の段階でもすでに白地にオレンジの新塗装だった。わずかに、16400系ACEがオレンジ色のままだったはずだ。

だからもう旧塗装の特急列車は南大阪線にはないのかなあ、と思って夕方の散歩に出たある日、なにげなく踏切で通過列車を見ていたら、目の前をオレンジとネイビーブルーの塗装をまとった16000系第7編成(16007編成、近鉄電算記号Y07)が通過していった。わお、まだおったんか! エウレカ!

■最短2両編成から走る
現在の近鉄特急はおもに新幹線乗換駅からの枝分かれ線(フィーダー線)的な役割を果たしている。そのうち、狭軌の南大阪線・吉野線は橿原神宮前で京都線直通特急(京橿特急)と接続しつつ、もっぱら大阪阿部野橋から吉野をめざす。平日の10時台から14時台をのぞいては30分おきの高頻度で運転されている。このうち、汎用特急は2両編成が基本で乗客の増減に合わせて最大8両編成になるようだ。この柔軟な運用が近鉄特急の特徴といっていいだろうか。

もっとも、大阪阿部野橋から橿原神宮前までは約35分(39.7km)で、吉野まで乗っても約1時間15分(64.9km)とそう長く乗るわけではないから、特急利用の利点は速達性というよりもむしろ着席できることにありそうだ。ハイシーズンの休日や、通勤ラッシュ時以外は2連でも十分なのだろうとは沿線在住ではない私の素人目にも思えた。

向かいの上りホームでひょっこり

大井川鐵道やないで(笑)

■「意識するとぎこちなくなる法則」ここでも発動
筆者が滞在していた昨年夏にこの旧塗装のままだったのはすでに16007編成(Y07)のみだったようだ。ひんぱんに走る特急列車のうちの1運用だけがこの塗装だと思うと、入念に調べるでもしない限りなかなか目にすることは……いや、ねらっていないときに限ってよく見たのよね。

あるときは尺土で御所線に乗り換えようと思って対向ホームを見ていると、上り特急としてひょっこり現れ、またあるときは古市で橿原神宮行きに乗ろうとしていると、目の前の吉野行き特急として過ぎていく。そして、筆者はそのたびに「うはっ、大井川鐵道!」と思っていたのものだ。この塗装で走る本数が大井川鐵道譲渡車のほうが多いのだもの。そりゃ。

以前に書いたラビットカー復刻塗装編成のときもそうだけど、人間の異性にたいしてもよくありませんか。好きだとかかわいいなどと意識していなかったときは自然に振る舞うことができていたのに、あ、やべ! 惚れた! と思うと自分が挙動不審になってしまい、「あたしのことが好きなんでしょー!」と本人に指摘されるほどだだ漏れになってぎこちなくなるっていうあれ。ま、もっとも私は相手に通じなくても自分の気持は簡単に明かす派なんだけどね。

この16007編成のことも、ある時点から「よっし! 撮ってやるけん!」と思ったときから、どうもなかなかうまく撮れないどころか、遭遇できなくなってしまった。べつに、近鉄や16007編成に「カメラのおっちゃん、うちのことが好きなんやろ!」とからかわれたりはしていないけどな。でも、まるでそう言われて翻弄されたかのように、なかなか撮れず(出た、厨二病的な被害妄想)。おかしいなあ。相手は電車なのに。

うほっ! まさかの16007編成、きはった!

こいつの折返しを撮るで! とおっちゃんは意気込んだ

■思い切って行動に出た
そこで、曇り空が続いたけれど外出したくてうずうずしていたある日、奈良盆地まで行くのはうまく写真にできそうもない空模様なので、以前から気になっていた南大阪線と道明寺線を撮るべく地元駅で下り列車を待っていた。そのとき、上り列車として16007編成が現れて、私は決意した。よし、今日こそは行動する! Today is the day! と。たしか、水曜日の「青の交響曲(シンフォニー)」運休日だったはずで、そのスジを汎用特急が走っていた日のはずだ。

そこで、道明寺線を撮る前に以前から気になっていた土師ノ里で降りて歩いてみた。望遠レンズがあれば土師ノ里駅近くの勾配を登るシーンを撮りたかったけれど、85mm相当ではねらいにくい。そこで、澤田八幡神社の境内に行って待ってみた。鳥居のところでは先客がいたので、線路沿いで待ち構えた。

そうしてやってきたのは……あれれれれ! 16010系電車だよ! さっき見たスジは折り返すのではなくて、車両交換するのか。このあたりはまったく無知だ。というわけで、16007編成を沿線で撮るのはあたわず。もっとも、16010系は2両編成が1編成しかないのだから、これはこれでとてもレアなのだ。まあ、撮れなかったものは仕方がない。

秋には16007編成が道明寺線を走ったそうで、みなさんが撮影された写真をWeb上で見るにつけ「いいなあ!」とうらやましく思っている。また大阪に行く機会があっても、それまで16007編成は走っているのか。運よく撮れたらいいけれど。

あれれれれ! 16007編成で来ると思ったら!

【撮影データ】
Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH. /LUMIX G 42.5mm / F1.7 ASPH. / POWER O.I.S./Adobe Photoshop CC 2019