2021年10月13日水曜日

【秩父鉄道撮影記事】デキ105号機茶色に塗装変更! その試運転に遭遇す

ほんとうに茶色塗装になっていた。画面左奥ではデキ102が洗浄中

■広瀬川原まで来てみると
「秋晴れの平日にふらりと秩父鉄道沿線を訪ねた」と前回のエントリーでは書いた。でも、それはいささかカッコつけすぎる気もする。もちろん、半分はほんとうにそういう気持ちでいた。だが、残り半分は下心があった。

それは、熊谷工場(広瀬川原車両基地)に入庫していたデキ105号機が茶色に白い裾帯という、かつての秩父鉄道の電気機関車の塗装に変更された姿を見たかったからだ。すでに秩父鉄道公式がTwitterで発表していた。そして、留置場所によってはどうやら敷地外からその姿を見ることができるようだと思われた。そこで、その姿を見たくなって広瀬川原に立ち寄るつもりで秩父鉄道を目指したのだ。

そう思って寄居でSLパレオエクスプレス5001列車を撮るなどして、上り列車を待っているうちに、Twitterのタイムラインには広瀬川原で桜堤側にデキ105号機が姿を現し、さらに両方のパンタグラフを掲げていて、さらに「試運転」を示す「試」マークが取りつけられている姿が流れてきた。マジか。こうなったら、行くっきゃない(古い)。

いい感じ

■もしかして走るのではないか
広瀬川原に着くと、平日でもそれなりにカメラを持ったファンがいた。リタイヤしたシニアや大学生だけではなくリモートワークが可能な方もいるのだろう。そしてみな熱心にシャッターを切っている。

私もはやる心を落ち着かせて、とりあえず観察し、いい雰囲気だと感心する。そして持ってきたレンズでもっとも焦点距離が長い180mm(270mm相当)をつけてあれこれねらった。そうしているうちに、「試運転のマークをつけていて、パンタグラフを上げているところを見ると、もしかして動くのではないか」ということが、鈍い私にも思えてきた。早めに立ち去るみなさん方が下り方向に向かっていたし。

そこで、広瀬川原で数枚撮ってから私も桜堤ぞいを下り方向に歩いて、SLパレオエクスプレス5001列車の撮影地として知られる隣駅まで戻り、カメラの設定を決めて待ち構えることにした。

この日は熊谷で日中の気温が29℃もあり、風が吹くとやや和らぐとはいえ日向にいるのは耐え難いほど暑い。カバンで位置どりをして、私は桜堤の木陰を探してじっと待った。暑いとつらいのだ。

トンボも舞っていてやはり秋めいてる。29℃もあったけどね

すると桜堤からカメラを持って広瀬川原から戻ってきた方々がさらに現れた。立ち話などをしているうちに、やはりデキ105号は試運転を行うという。いわく、試813列車で広瀬川原から永田まで行き、永田で折り返して試814列車のスジで広瀬川原に戻ってくるとか。いいことを知ってしまったぜ。

■遠くから前照灯の明かりが見えて
そこで、気合を入れ直して、カメラの設定の最終チェックをしながら待った。桜並木の木々はすっかり葉を落としていてもう冬のような装いだ。桜は夏の終わりから落葉するからね。ケーブルと木の影が列車にかかるかと危惧したもの、この時間であればむしろ正面に日が当たる。下り方向の踏切のほうが側面に余計な影もかからないかもしれない。でも、線路沿いの工場や駅を背景にするよりも、私は桜並木を背景に選びたかったのだ。たとえ花は咲いていなくても。

すると、遠くから前照灯の明かりが見えて、茶色い車体がちょこちょこという感じで近づいてきた。おお、動いているところはなんだかかわいいぞ。

遠くから前照灯と茶色い車体が見えて

「試」マークをはじめて目にした

副本線に入っていく姿も素敵

大井川鐵道の電気機関車を彷彿させる

暗い色合いの塗装だし、完全逆光にはなるけれど、振り返って駅の副本線に入っていく姿も思わず写した。14ビットで記録してパソコン上のソフトで16ビットモードで処理をするRAW現像時にハイライトを落としてシャドウを持ち上げて、ディテールを完全にはつぶさないことをことをもちろんあらかじめ考えながらだ。8ビットのJPEG形式でだけで撮っていたら、その画像からうまく補正する自信は私にはない。

ごとごととポイントを越えていく姿がいい感じ。どこか遠い地方の地方私鉄のようにも見える。でも、ここはすぐそばにコンクリート菅の工場と住宅地もある埼玉県熊谷市内なのだ。

■返しも撮った
「鉄道写真でスナップショットが撮りたい」などといっていたくせに、ガチでマジな列車写真を撮って、それはそれでホクホクして駅に戻った。えへへへへ。やったぜ。暑くて日向にいるのがいやになったからでもある。

駅には、広瀬川原やこの駅周辺で同じように試運転列車を撮ったみなさんが戻ってきていた。そうしてあいさつをして雑談をしていた方からさらに、広瀬川原でデキ102号機が車体を洗浄していたこと、さらには試814列車のダイヤを教えていただいた。私がお話しできるのはカメラのうんちくくらいなので、ありがたい情報を教えてもらい感謝の気持ちでいっぱいだ。こういうときに、秩父鉄道をはじめとする私鉄の撮影はいいなあと思う。

そうして、頑張れば歩ける距離にある川原明戸に行くために列車にわずかな区間だけ乗り、田んぼまで歩いて永田から戻ってくるデキ105号を待った。この場所では午後は上り列車を撮るには正面に日が当たらない。

そこで、こんどはひさしぶりに真横から流し撮りをしようと考えて、デキ105号がやって来るまえに旅客列車で流し撮りの練習を試みた。早めに着いて練習してよかった。しばらく追い写しや流し撮りをしないでいるうちに、ものすごくヘタクソになっていたから。

画面右に向かって走っています。念のため

そばのお宅の屋敷森が作り出す木かげに座り、犬の散歩をする地元の方と「暑いですねえ」などと世間話をし、さらにやってきた列車で流し撮りの練習をしているうちに、おめあてのデキ105号が戻ってきた。直線区間だからか、電車ほどではないものの意外と速度を上げる。あわてるなよ私……と思いながら、流し撮りをした。

ひさしぶりの流し撮りはいろいろとね……背景の重なりがあれだとか、反省点は大いにあるな。この場所は開けてはいるけれど背景が雑然としているのだから、もっと工夫が必要だ。それでも、往路以外にもカットを撮りためることができたし、なんといっても楽しかったから、まあいいや。

試運転を行っていたということはまもなく出場して営業運転入りするということだろう。鉱石貨物列車の先頭に立つ姿を見られる日が待ち遠しい。私は古くてもデキ100形がPS13型パンタグラフを装備していて前照灯がシールドビーム化されておらず、側面の機器冷却用ルーバーのうち中央寄りのものが埋められるまえの、1980年代終わりの姿しか知らないので、書籍などでしか知らないこの茶色い塗装は新鮮に思える。

しかも、お世話になっているTakaさんのTrains Photo Galleryなどの写真を見ると、デキが茶色塗装の時代は正面窓のパッキン(Hゴム)は黒だったようだ。今回のデキ105号も正面窓のHゴムが黒くされているから、それを再現しているのだろうか。Hゴムが黒いと「お目目ぱっちり」に見える気もする。え、それって私なにかの病気かな。

車体の形態が同じだった僚機デキ104号の1988年4月の姿
(2013年に運用離脱し2015年に廃車)

1988年4月に撮影したデキ105。
すでに前照灯はシールドビーム化されていた

広瀬川原で留置中の姿をせめて見ることができたら、と思っていたデキ105号が試運転で動く姿を撮ることができたのは、予想以上の大収穫だった。ふだんの私は試運転や特別な回送列車を意図してねらうことをしないので、なおさら新鮮で楽しい経験をさせてもらった。秩父鉄道の関係者のみなさん、いろいろとご教示いただいたみなさん、お会いしたみなさんには深く感謝したい。ありがとうございました。

【2021年10月26日追記】
ようやく本日デキ105号は鉱石貨物列車に運用入りしたようです。

【撮影データ】
(2021年)Nikon D7200/AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D, AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED/RAW/Adobe Photoshop CC
(1988年)Nikon F-301/AI Nikkor 85mm F1.4S/FUJICHROME 50, KODAK Tri-X/Adobe Photoshop CC