2022年11月16日水曜日

【カメラ機材の話】ソニーα7IIを修理に出したら1週間で完了して驚いたというお話

修理から帰ってきたα7II

■ソニーα7IIが不調だった
ソニーα7IIを友人から借りている。M42スクリューマウントとL39ライカスクリューマウントレンズあるいはマニュアルフォーカスのSタイプAIニッコールレンズなどの、オールドレンズを使うことがおもな用途であり、ソニー純正でもサードパーティでもオートフォーカス(AF)レンズで使ったことは私は一度もない。じつに偏った使い方だとは思う。

球面収差の残し方のバランスが現代のレンズとことなるために、一眼レフではフレアやにじみが多くて絞り開放でのピント合わせが非常に難しく思われたレンズでも、α7IIの電子ビューファインダー(EVF)で拡大すればピント合わせはしやすくなる。センサーシフト式の手ぶれ補正機構もボディ内に内蔵されていて、そこそこ効く。ボディサイズはかつての小型一眼レフ以下だ。

そういうなにかと便利な要素が多いために、世間でもユーザーは多い。機材を軽量化したい業務ユーザーにも使用者は非常に増えている。α7IIIはさらに使いやすく改良されたから、持ち歩いているユーザーを見る機会が少なくない。ローパスフィルターレスで高画素のRシリーズと純正カールツァイスレンズを組み合わせるのは、いまどきのカメラマンという感じ。

まあそうなんですけどね。便利なことは理解していた。だが私のところではα7IIはここしばらくずっと使われることがなかった。それは、EVFが不調だったから。

引取サービスを利用して修理に出した

■ソビエトレンズを使っていなかった理由
むかしから親しくしてくれている友人のみなさんはご存知だろうが、私の手元には、やや控えめにいうとソビエト製の交換レンズが「比較的」やや多めな感じに所有されている。回りくどい言い方から著者の気持ちを推察せよ。ほとんどが、かつて平和だった時代に非常に安価に手に入れたものだ。私はそれらを昨年よりずっと使っていなかった。

それは、ソビエトの後継国家となったかの"Z"の連邦が戦争を始めたから……という理由ではなくて、手元のα7IIのEVFがいつのまにか使えなくなってしまったからだ。満充電した電池を装填して数十分以上電源を入れて放置していると、ときどきEVFが点灯して使えることもあった。

だから、EVF自体に支障があるというよりも、EVFと背面モニターの表示切り替え用アイセンサーあたりに支障が出ているのだとは想像がついた。

だが、私は背面モニターだけで撮影するカメラが好きではない。私が所有しているカメラボディはみな光学ファインダーかEVFのあるデジタルカメラばかりだ。

EVFが使えないならば意味がない。だから、α7IIを持ち出すことをしなくなっていた。そうなると、ほかにM42やL39スクリューマウントを35ミリフルサイズで使えるボディを私は所有していないので、ニコンFマウント以外のオールドレンズを使うことができなかった。

距離計連動式カメラでは使いづらかったJupiter-9 2/85も
α7IIならば使ってみたくなる

■一念発起して修理依頼
しかし機械の故障、それもおそらくは電気系統の故障というのは人体の怪我や病気とことなり「自然治癒」することはないはずだ。だから放置していてもアイセンサーの故障が直るわけではなかった。

そうしている折に、世界的な半導体不足を理由にα7IIの販売終了が報じられた。α7シリーズ登場の少し前より、ソニーは新製品を出しても旧製品を置き換えず、販売継続をしてラインナップを増やしていた。それが部品供給のめどが立たないという理由でα7IIの製造と販売が終わってしまった。補修部品の在庫は2022年11月のいまならまだあるはずだが、ためらって修理に出さないでいるあいだに補修部品の在庫がなくなってしまうのは困る。

そういうわけで、一念発起して……というと大げさに聞こえそうだが、このところの体調不良もあったせいか、かなり強く思い立たないと修理依頼をする気になれなかった。10月はどうも長いあいだ風邪症状的なものに悩まされていたのだ。さいわいPCR検査は陰性だったのだが。ともかく、そんな気持ちを振り払うように、えいやっという気持ちで引取修理の依頼をした。

筆者は首都圏在住だから、秋葉原のサービス窓口まで持参することもできる。カメラとレンズの修理で都内に窓口があるものはいつもは持参するようにしていた。今回はインターネットから修理依頼をして、引取り修理を頼んだ。

ねんのために記しておくが、筆者はソニーのカメラはプロサービス会員ではないし、「ソニーの機材を使うインフルエンサー的なプロカメラマン」として先方に認知もされてもいない。個人事業主で法人化していないから、記事借用のための機材を個人では貸してもらえないレベルだ(使いたければ自分で買うか、媒体に掲載するならばその媒体編集部に機材を借りてもらう必要がある。ソニーマーケティングの内規がそうなっているから。実績のない無名の人間だから仕方がない)。だから、ごくふつうの一般の修理窓口で依頼した。また、保証期間は過ぎていた。

このところ使わなかった
ソビエト製L39ライカスクリューマウントレンズを引っ張り出した

■申込みから修理完了後の自宅への着荷が1週間!
そういうわけでインターネットで修理依頼をして見積もりを出してもらった。すると、思っていたようにアイセンサー部分の不良と、気づいていなかったマルチインターフェイスシュー(ストロボのホットシュー部分)の接触不良が認められたという。純正ストロボでTTL調光を使わないから気づいていなかったよ。他社製ストロボ……ニコンのクリップオンストロボでマニュアル調光はできていたからね。

そうして修理代金は……部品代は合計で2,190円、送料が往復3,000円、そして技術料が19,000円で税別24,190円、税込み26,609円……オウフ……ほんとうにオタクっぽく「オウフ」ってメールの文面を見ながら言ってしまった。淡谷のり子の口調を思い出しながら「高いわね、お宅の修理代金って」とも口に出た。部品代は安いのに。財布が寒いのは冬だからかなあ。

「寒い……ここにあと何年……」とハマーン・カーンのセリフをつぶやき、さらには「寒い時代とは思わんか」とワッケインのセリフもつぶやいた。

とはいえ26,000円でα7IIは買えない。アイセンサーの故障は自然治癒もしないし。だからもちろん見積額で了承して、修理続行を依頼した。「全俺が泣いた」ので全米も泣かしてやりたいぜ。あ、でもアルゼンチンは泣かないで

Jupiter OpticsのJupiter-3 1.5/50には
ニコンゼラチンフィルターホルダーAF-1を使おうかな

驚いたのは工程の素早さだった。修理代金にもものすごく驚かされたけどね。『風の谷のナウシカ』原作漫画に出てくるマニ族の僧正が、ナウシカが王蟲の怒りを鎮めたのを離れたところから察知したときのような、日本語にない文字の発音をしながらものすごい驚きの顔をしちゃったもの。修理依頼をして翌日に引き取り日の連絡メールをもらい、機材を引き取ってもらった翌日に見積もりメールが来た。それに即日で返事をしたところ、翌日に修理継続するむねの返信があった。クレジットカード払いにしたので、その翌日辺りに修理完了と支払先を指示するメールが来て、支払いを済ませたら翌日に発送完了のメールが来て……というように、申込みをしてから自宅に修理完了機材が届くまでにちょうど1週間というところだろうか。

首都圏内での荷物のやりとりとはいえ、これはものすごく早いのではないか。繰り返すが、プロサポート会員向けサービスではないのに。

だって……他社のプロサービスでは窓口に持っていっても工場での修理が必要な場合には、日数に余裕を見ているようではあるけれど、10日から14日くらい修理の日数がかかることが多い。ソニーのこの修理の場合は、修理工場に直接送っているということと、不具合の生じている基板やユニットごと交換するから修理の所要時間も短いのだろうか。想像でしかないが。

そういうわけで、ソニーのカメラ修理対応の早さには、非常に感激してしまった。スタパ齋藤さんふうにいうとズギャーッと修理が済んでジョリーグッドだ。手元にカメラが早く帰ってきたのはうれしいし。修理対応をしてくださった関係各位のみなさんには、あつくお礼申し上げます。ほんとうに感激しちゃったのだ。

修理が完了したカメラを手にして、ひさしぶりにソビエト製レンズを装着して試写してみようと思う。重い腰をそろそろあげますか。きちんと動く機材があるとインスピレーションも働くというものだ。

(2022年12月5日追記)
■修理品に問題がないか問い合わせが来てさらにびっくり
修理してもらったα7IIはその後問題を感じさせずにきちんと稼働している。そう思っていたら、修理品に問題がないかどうかという問い合わせの電話をソニーの修理担当の方からいただいて、私はまたものすごく驚いた。

中古カメラを買ってそれに問題がないかというメールをくださった中古カメラ店は1店だけ知っている。関西の有名カメラ店だ。さすが関西の有名店だと感心した。そういうマニュアルがあるのだろうとわかっていても、また利用したくなったもの。

だが、修理サービスでそういう対応をしてもらったのははじめてだから。いろいろなメーカーの機材を使って修理にも出したことがあるけれど、はじめて経験した。

ソニーのカメラの快進撃はきっと、新製品ごとに地道な改良がなされていることだけではなく、こういうサポート体制の改善という、ものすごく地道なところにもあるのだろうね。ほんとうにいい意味で心底驚かされたので追記した。

Webになんでも書くことは私は避けているのに、それでも書きたくなった。修理対応者のマニュアルにあるのだろうけれども、それでも心遣いにうれしくなってしまったからだ。私のようなちょろい客はそんな心遣いにうれしくなってしまう。

【2024年3月22日追記】
日経BPから出ている元・ソニーグループ副会長の石塚茂樹氏ソニーへのインタビュー本『ソニー デジカメ戦記 もがいてつかんだ「弱者の戦略」』がとてもおもしろい。カメラの歴史に興味のある方にはおすすめ。カメラ誌ではなく日経新聞社からこういう本が出たのはちょっとくやしくもある。ユーザーの要望を地道に拾い集めて、機種ごとに真面目に使い勝手の改良をしていったから、いまの市場評価を獲得できたのだろうなあと思う。

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