■湊線に通っていたときの話
ひたちなか海浜鉄道湊線(以下、湊線と略)沿線の撮影に通っていたのは2015年のちょうどいまごろ。梅雨入りするかどうかという時期だった。茨城交通時代に何度か通って好きになった鉄道でありながら、なかなか足を運ぶことができず、2007年に訪問してからは2015年まであいだを空けてしまった。そして、それから5年経つ。
この湊線は第三セクター化されて以降、金上駅の改良による交換施設の強化、高田の鉄橋駅の開業や利便性を高めたダイヤ改正、沿線の企業や学校などへの地道な営業活動といった施策により、最近は茨城交通時代末期に比べると定期券利用客が増えていることも報じられている。2021年にも平磯〜磯崎に新駅が開業するという。阿字ヶ浦からひたちなか海浜公園への延伸計画もあるといい、明るい知らせが多いのはじつによろこばしい。じっさい、私自身が2015年に何度か訪問した際に湊線の朝のラッシュアワーの列車利用客の多さも目にして、地元のみなさんの足として機能しているのを感じた。元気な鉄道路線は見ていて楽しい。
2015年6月の訪問のことは以前にも記事にした。拙著『ぼろフォト解決シリーズ067 Panasonic LUMIX GX8 実写インプレ』および『ぼろフォト解決シリーズ065 プロの撮影思考とテクニックを徹底解説する Panasonic LUMIX GX8 プロの撮り方』に掲載する写真を撮りに出かけた(どちらも月額読み放題制のkindle unlimitedに対応しています。よろしければご覧くださいますとうれしいです)。
このときの目的は朝のラッシュアワーに走る2両編成だ。キハ3710形ではなくキハ2004-キハ205の旧型気動車で行われているということをたまたまSNSで知ったから。かつては旧型気動車が4連で走っていたこともあるそうだけれど、このころはすでにキハ3710形が充当されるようになっていた。JR東海から導入したキハ11形はまだ整備中で運用入りはしていなかったものの、早晩運用入りして旧型気動車を置き換えるであろうことは想像がついた。「少し古い列車」が好きな私には国鉄気動車色と国鉄準急色の旧型気動車のほうがより絵になると思ったからね。
そして、もっとも日が長い6月であれば走る列車をねらいやすいこと、さらにはどうやら日の出の時間に霧が出ることが多いらしいと聞いたのも、腰の重い私が足を運んだきっかけだった。そこで、撮影しようと思っていた場所の近くにあるビジネスホテルに投宿した。勝田から金上にかけては、陸上自衛隊駐屯地と日立製作所とその関連会社の事業所がいくつもあるためか、ビジネスホテルがいくつもある。公共交通を利用して始発列車の撮影するにも便利だ。
■23時49分発の終列車がある
だからおもなねらいは朝の始発列車から数往復する旧型気動車の2両編成だったとはいえ、もうひとつ見てみたいものがあった。それは、勝田発那珂湊行きの終列車だ。地方私鉄にしてはめずらしく23時50分ごろ(2020年6月現在のダイヤでは23時49分)とたいへん遅い時間に設定されていた。これは、湊線内だけではなくJR常磐線を利用する乗客が多いということを意味する。上野発22時の特急列車で那珂湊まで行くことができ、水戸からなら23時40分発の列車にも接続する。仕事後にちょっといっぱいやっていきますか……という利用がしやすいわけだ。あ、もちろん残業時間が押してもだいじょうぶともいえるか。朝の定時に始業して残業だけでそんな時間になるのはいやだけどね。
■眠い目をこすって日工前駅へ
このころはまだ勝田の次は日工前という名称だった。このエントリーを書くために検索をあれこれかけてみて、2019年に工機前と名称が変更されたことをはじめて知った。いかに湊線とごぶさたかわかるだろう。あいたたた。
写真ではよけいな情報を入れたくないので、まるで山のなかの駅であるかのように見える構図で写している。現地をご存じない方のファンタジーを壊すのはよろしくはないが、実際には名前のとおり現在の工機ホールディングス株式会社(当時は日立製作所子会社の日立工機株式会社)の事業所のすぐ前にあり、もともとその従業員専用駅だった。木立がある後ろは道路がある。私がこの写真を撮ったところも住宅地に面した道路だ。勝田から歩いてもせいぜい10分程度か。ふりかえると以前は近くにジャスコ勝田店があり、その跡地はスーパーマルトSC春日店という大きなスーパーマーケットとドラッグストアになっている。
つまり、ひたちなかの町中にあるということ。チェックインしたビジネスホテルから時間を見計らって歩いてきて列車を待った。すると下り方向からまずは勝田行き上り列車がやってきた。ホテルから列車を観察して、キハ205が充当されていることはわかっていたものの、いざファインダーのなかに旧型気動車が見えるとどきどきした。
現在のダイヤでは工機前の勝田行き終列車は23時42分発、那珂湊行き終列車は23時50分とある。EXIFを見ると2015年のこのときは上りが23時32分のようで、すぐそばの勝田から折り返してくるまでに20分ほど待ったようだ。おでこにある前照灯をこうこうと灯してやってくる旧型気動車にほれぼれする。私はキハ20系列が好きなのだ。そうしてやってきた列車はがらがらというあのアイドリング音を響かせながら客待ちし、やがてエンジンの回転数をあげて走り出すと那珂湊へ去っていった。
もっともこれら終列車の写真は撮った本人はそれなりに好きでも、掲載した書籍では列車じたいを大きく扱うのではない見せ方をしたかったので、使わなかった。ひさしぶりに思い出してなつかしんでいる。つい最近、キハ205はひさしく色あせていたものが再塗装されたようだから、機会を見つけて湊線に行ってみたい。できればキハ205が走るところを見たい。それに、平成筑豊鉄道に譲渡されたキハ2004のクラウドファンディングにも参加したのだから、あちらも見に行ってみたい。機会は見つけるのではなく作るものか。
■始発も早い
さて、始発列車を撮るために湊線に通っていたと書いた。じつは湊線は上記のように終列車も遅いだけではなく、始発列車も早い。平日の阿字ヶ浦始発列車は4時58分発だ。西武鉄道沿線に住む私の最寄り駅の始発は5時すぎだし、6時台になって始発列車が走る地方私鉄もあるのだから、とても早いことはおわかりいただけるかと思う。ちなみに、この阿字ヶ浦発始発列車乗り勝田から特急『ときわ』に乗ると上野着は7時23分、普通列車に乗って水戸で上野行きに乗り換えても7時36分だから、都内のほとんどの会社の始業時間にまにあいそうだ。
都内に通勤するわけではない私は、0時近い終列車を撮ってからホテルに戻って就寝し、始発列車を撮るために4時前に起きて撮影地まで歩いた。はじめて行った日にはわずかに寝過ごしてしまいねらった場所まで行き着くことができず、それがくやしくて何度か通った。写真だけなら二本目の列車でも始発列車とは区別はつかないだろう。ところが、はじめて始発列車をねらった日は明るくなるとヘッドライトを消して走っていたのだ。だから、完全には明るくならないなかをヘッドライトを灯して走る姿を撮るには、始発列車ではないと自分にとっては絵になるように思えなかった。
2015年6月の訪問のことは以前にも記事にした。拙著『ぼろフォト解決シリーズ067 Panasonic LUMIX GX8 実写インプレ』および『ぼろフォト解決シリーズ065 プロの撮影思考とテクニックを徹底解説する Panasonic LUMIX GX8 プロの撮り方』に掲載する写真を撮りに出かけた(どちらも月額読み放題制のkindle unlimitedに対応しています。よろしければご覧くださいますとうれしいです)。
このときの目的は朝のラッシュアワーに走る2両編成だ。キハ3710形ではなくキハ2004-キハ205の旧型気動車で行われているということをたまたまSNSで知ったから。かつては旧型気動車が4連で走っていたこともあるそうだけれど、このころはすでにキハ3710形が充当されるようになっていた。JR東海から導入したキハ11形はまだ整備中で運用入りはしていなかったものの、早晩運用入りして旧型気動車を置き換えるであろうことは想像がついた。「少し古い列車」が好きな私には国鉄気動車色と国鉄準急色の旧型気動車のほうがより絵になると思ったからね。
そして、もっとも日が長い6月であれば走る列車をねらいやすいこと、さらにはどうやら日の出の時間に霧が出ることが多いらしいと聞いたのも、腰の重い私が足を運んだきっかけだった。そこで、撮影しようと思っていた場所の近くにあるビジネスホテルに投宿した。勝田から金上にかけては、陸上自衛隊駐屯地と日立製作所とその関連会社の事業所がいくつもあるためか、ビジネスホテルがいくつもある。公共交通を利用して始発列車の撮影するにも便利だ。
■23時49分発の終列車がある
だからおもなねらいは朝の始発列車から数往復する旧型気動車の2両編成だったとはいえ、もうひとつ見てみたいものがあった。それは、勝田発那珂湊行きの終列車だ。地方私鉄にしてはめずらしく23時50分ごろ(2020年6月現在のダイヤでは23時49分)とたいへん遅い時間に設定されていた。これは、湊線内だけではなくJR常磐線を利用する乗客が多いということを意味する。上野発22時の特急列車で那珂湊まで行くことができ、水戸からなら23時40分発の列車にも接続する。仕事後にちょっといっぱいやっていきますか……という利用がしやすいわけだ。あ、もちろん残業時間が押してもだいじょうぶともいえるか。朝の定時に始業して残業だけでそんな時間になるのはいやだけどね。
■眠い目をこすって日工前駅へ
このころはまだ勝田の次は日工前という名称だった。このエントリーを書くために検索をあれこれかけてみて、2019年に工機前と名称が変更されたことをはじめて知った。いかに湊線とごぶさたかわかるだろう。あいたたた。
写真ではよけいな情報を入れたくないので、まるで山のなかの駅であるかのように見える構図で写している。現地をご存じない方のファンタジーを壊すのはよろしくはないが、実際には名前のとおり現在の工機ホールディングス株式会社(当時は日立製作所子会社の日立工機株式会社)の事業所のすぐ前にあり、もともとその従業員専用駅だった。木立がある後ろは道路がある。私がこの写真を撮ったところも住宅地に面した道路だ。勝田から歩いてもせいぜい10分程度か。ふりかえると以前は近くにジャスコ勝田店があり、その跡地はスーパーマルトSC春日店という大きなスーパーマーケットとドラッグストアになっている。
つまり、ひたちなかの町中にあるということ。チェックインしたビジネスホテルから時間を見計らって歩いてきて列車を待った。すると下り方向からまずは勝田行き上り列車がやってきた。ホテルから列車を観察して、キハ205が充当されていることはわかっていたものの、いざファインダーのなかに旧型気動車が見えるとどきどきした。
現在のダイヤでは工機前の勝田行き終列車は23時42分発、那珂湊行き終列車は23時50分とある。EXIFを見ると2015年のこのときは上りが23時32分のようで、すぐそばの勝田から折り返してくるまでに20分ほど待ったようだ。おでこにある前照灯をこうこうと灯してやってくる旧型気動車にほれぼれする。私はキハ20系列が好きなのだ。そうしてやってきた列車はがらがらというあのアイドリング音を響かせながら客待ちし、やがてエンジンの回転数をあげて走り出すと那珂湊へ去っていった。
もっともこれら終列車の写真は撮った本人はそれなりに好きでも、掲載した書籍では列車じたいを大きく扱うのではない見せ方をしたかったので、使わなかった。ひさしぶりに思い出してなつかしんでいる。つい最近、キハ205はひさしく色あせていたものが再塗装されたようだから、機会を見つけて湊線に行ってみたい。できればキハ205が走るところを見たい。それに、平成筑豊鉄道に譲渡されたキハ2004のクラウドファンディングにも参加したのだから、あちらも見に行ってみたい。機会は見つけるのではなく作るものか。
■始発も早い
さて、始発列車を撮るために湊線に通っていたと書いた。じつは湊線は上記のように終列車も遅いだけではなく、始発列車も早い。平日の阿字ヶ浦始発列車は4時58分発だ。西武鉄道沿線に住む私の最寄り駅の始発は5時すぎだし、6時台になって始発列車が走る地方私鉄もあるのだから、とても早いことはおわかりいただけるかと思う。ちなみに、この阿字ヶ浦発始発列車乗り勝田から特急『ときわ』に乗ると上野着は7時23分、普通列車に乗って水戸で上野行きに乗り換えても7時36分だから、都内のほとんどの会社の始業時間にまにあいそうだ。
都内に通勤するわけではない私は、0時近い終列車を撮ってからホテルに戻って就寝し、始発列車を撮るために4時前に起きて撮影地まで歩いた。はじめて行った日にはわずかに寝過ごしてしまいねらった場所まで行き着くことができず、それがくやしくて何度か通った。写真だけなら二本目の列車でも始発列車とは区別はつかないだろう。ところが、はじめて始発列車をねらった日は明るくなるとヘッドライトを消して走っていたのだ。だから、完全には明るくならないなかをヘッドライトを灯して走る姿を撮るには、始発列車ではないと自分にとっては絵になるように思えなかった。
そんなわけで、湊線に通っていたときは日中はいつもじつにねむかった。
【撮影データ】
Panasonic LUMIX GX8/LEICA DG NOCTICRON 42.5mm F1.2 ASPH. POWER O.I.S./RAW/Adobe Photoshop CC 2020
【撮影データ】
Panasonic LUMIX GX8/LEICA DG NOCTICRON 42.5mm F1.2 ASPH. POWER O.I.S./RAW/Adobe Photoshop CC 2020