2020年6月24日水曜日

【航空自衛隊YS-11FC】在りし日の入間基地飛行点検隊YS-11FC「12-1160」号機


■航空自衛隊YS-11FC最後の活躍中
航空保安無線設備の保守点検の任務を果たすために、航空自衛隊には国産中型輸送機YS-11がいまも残されているということは、ここにお越しになる大半のみなさんはご存知だろう。入間基地に本拠を置く飛行点検隊(フライト・チェッカー・スクワッド)の略でYS-11"FC"の語尾がつく専用機だ。1971年(昭和46年)から3機のYS-11FCが運用されていたそうだ。旅客仕様機を改造したものと新造したものがあるという。


機体番号は52-1151(151)、62-1154(154)、12-1160(160)。このうち2015年に154号機は退役し数年前に入間基地で解体されたとみられる。また、2019年秋に160号機も退役した。いまは格納庫で保管されているようだが、エンジンとプロペラが外された写真がTwitterにアップされているのを見たので、詳細不明ではあるがおそらくは部品取り用に機体自体は残されていると思われる(2020年11月追記:目撃情報によると解体が開始されたようだ)。2020年6月の段階で運用中なのはもっとも古い151号機だけだ。


■オリジナルのエンジン音はMT46主電動機ふう
このYS-11FCは電子戦訓練機や電子偵察機のYS-11EAおよびEBとことなり、オリジナルのロールス・ロイス「ダート」ターボプロップエンジンを積んでいて、プロペラも4枚ブレードだ。いっぽう、YS-11EAと同EBはP-2Jから転用されたエンジンに換装され3枚ブレードのプロペラになり、機体形状やエンジン音がことなる。


YS-11FCに残されたオリジナルのダートエンジンは高音域の音がどことなく、あたかも国鉄MT46主電動機の音を思い出させる気がして私には大変好ましい。私は病人か。ここの部分の描写の意味がわからない方が大半かもしれないな……。国鉄101系電車が加速していくときの甲高い音に似ている気がするということね。なんとなく、だからね。

飛行点検隊機として無線アンテナや機内に計測機器が設けられていても、このオリジナルのエンジンと白と赤のツートンカラーで旅客機を彷彿させてそれほど軍用機然としていない外観が維持されているところが、私には好ましい。旅客用のYS-11を写真に残すことができなかったからかも。


■160号機をいろいろと撮っていた
前述のようにここ数年は3機のYS-11FCのうち、151号機と160号機のみが飛んでいた。10年ほどまえに基地近隣に転居してきて以来、いちばんはじめに退役した154号機よりもこの2機を見たことのほうが多い。そして、2機体制になってからもどちらかというと160号機のほうを比較的多く見かけた気がする。お目にかけるのは160号機の2018年の秋から暮れと2019年秋にかけての姿だ。

昼間の姿が一枚しかないのは、訓練日程が予告される夜間飛行訓練のほうがねらいやすいことと、薄暮や悪天候に飛ぶ飛行機の姿が好きだからだ。土休日は自衛隊機は通常は飛行しないので、撮影機会は平日しかない。平日に昼間にずっと待ち構えていられることはそう多くないだろう。負け惜しみではなく、薄暮のほうが空に表情があり、背景に変化が出る。もっとも、私自身の「絵心のバリエーション」が少ないままなのは惜しい。もっとうまくなりたかったよ。



■残された151号機の活躍もそう長くはない
ところが2019年にこの160号機が退役して151号機のみとなってからは、YS-11FCの撮影は残念ながら難易度が高くなってしまった。まず、飛行する回数自体が減っていると思われるのだ。航空無線の受信機も所有していないので、すべてのフライトを知っているわけではもちろんない。それでも、近隣住民ではあるので飛んでいれば音でわかることが多い。

などと書いているうちにどこかへ飛んでいったけれどね……。YS-11EAとEBが飛んでいるのはもう少し目にするように思えるのだが。

これは後継機であるサイテーション680Aが2020年春から運用を始めたからでもあるだろう。全3機導入される予定だそうだが、2機がすでに運用を始めている。この新鋭機を習熟訓練をかねて重点的に使用することは理にかなっている。

自衛隊機の運用については私はまったく門外漢ではあるけれど、老朽化が進む151号機は予備的な位置づけであってもおかしくないだろう。今年度末までにもう1機のサイテーション680Aが導入されるようなので、そうなると151号機もお役御免となるにちがいない。


私にとって撮影の難易度が高くなったもうひとつの理由は、基地の滑走路の両端で工事が行われているから。私の持つ機材では450mm相当まででしか撮影できないので、滑走路を入れた撮影をすると工事の様子が写ってしまい絵柄がすっきりとしない。だから私に撮ることができる場所がなお限られてしまうようになった。

おまけに昨今の情勢だ。自衛隊機が飛んでいても、滑走路は近所とはいえ撮影を控えていた。定番撮影位置にはいままでにはいない撮影者の数がぐんと増えた。それを見てしまうと近くに寄らないようにしている。だから、私には2020年に入ってからは151号機を撮影できたのはわずかだ。残された時間はそう多くはないだろうから、機会を作ってその姿をできる限り多く記録したい。

【撮影データ】
Nikon D7200/AI AF Nikkor ED 300mm F4S(IF), AI AF Nikkor 24mm f/2.8D/RAW/Adobe Photoshop CC 2020