先日、休日の夕方に京王競馬場線をひさしぶりに訪ねた。土休日に7000系電車が競馬場線で走り始めるのは日没後の18時55分東府中発の列車からだ。これは、東府中駅にも京王電鉄Webサイトにある東府中駅の時刻表にも表示がある。「この列車は7000系ですよ」とはもちろん書かれていない。「1番線から府中競馬場正門行き列車が発車するのが18時55分発から」という表示を見てほしい。ただし、日が早い冬場には撮影しづらい。そこで、日中にも7000系電車が走っている平日に時間を作って再度訪問した。
7000系電車の2両編成は本線を回送するシーンは写したことがある。前回の訪問時には高幡不動まで行って回送列車が出発するところも見届けた。だが、競馬場線で営業運転を行う姿をいまだに見ていかなった。自宅から遠くはないのに、その存在を忘れていたのだ。
京王7000系電車は1984年に登場した。この7000系電車は当時の京王帝都電鉄で主役級の活躍をしていた6000系電車をステンレス車体にした改良版というべき存在だった。車体デザインは正面の貫通路を挟んだ左右の窓サイズがひとしくなって6000系電車のウインクしたような表情ではなくなったものの、側面戸袋窓があるなどスタイルは6000系に準じていて、足回りも6000系と製造時は同じものだった。
そのころの私は『鉄道ファン』誌をきちんと読んでいるようなまじめな鉄道少年だったので、登場予告がなされたイラストもおぼえている。『鉄道模型趣味』誌(もしくは『Nゲージマガジン』だったかもしれない)でNゲージのKATOの103系電車の完成品模型とグリーンマックスの京王6000系のキットからこの7000系をNゲージで作る記事を読んだ記憶もある。二日酔いの筆者が朝の通勤時にこの電車を見て酔いがさめるほどかっこいいと感じて、帰宅時に模型屋で材料を買い集めていたという記事だ。
ところが登場時は各駅停車の運用に用いられていた。ステンレス車体ではあっても6000系類似のデザインと、優等列車には用いられないという運用のためか「どことなくおとなしい印象を与える電車」だというのが、沿線に在住はしていなくても首都圏の私鉄車両が好きだった当時の私の感想だ。
その後7000系は1996年まで増備され、車両数が増えるとともに優等列車にも用いられるようになった。製造途中からコルゲート車体からビードプレス車体に変更され、正面の幌枠や渡り板もなくなった。塗装も正面がアイボリーに塗装されるようになり、帯色も現在の京王電鉄のコーポレートカラーに合わせたものに変更された。製造時には無塗装だった初期車も増備車にあわせて正面に塗装がなされた。内装もリニューアルされた。パンタグラフはシングルアーム式になり、制御方式もVVVFインバーター制御に改装されている。いろいろと手を加えられて登場時とはだいぶようすがことなる。鉄道趣味に出戻りしてから7000系に乗ったときに、VVVFインバーターの磁励音が聞こえておどろかされた記憶がある。
「どことなくおとなしい印象を与える新車」などと書くとこの電車が好きな方は気を悪くされそうだ。あのころは景気もよくて宇髄天元(『鬼滅の刃』)ふうにいうと「ド派手な」新車が続々と出てくるような時代だったからかも。私自身もリアル中二だったから、ゆるしてくれよな。
だが、私はいまではこの電車の持つ質実剛健さを好ましく思う……というよりもかなり好ましいしかっこいい。直線的なデザインと重量感のある雰囲気が好ましい。むかしから好きだったけれど忘れがちだったところが私の至らなさだ。本線で優等列車として高速で走る姿を見かけるたびに「かっちょええのう……」と思う。立派になったなあ。
■先頭にパンタグラフがある「クハ」
いっぽう走行距離が短い競馬場線では高速走行はしない。ちょっと力行して加速しては惰行で(いわば惰性で)走るだけだ。それはそれでまたしみじみとさせて好ましい。まさに、病膏肓に入るというやつかもしれないな。好きになったらどんな姿でも好ましいんだよ、うっせぇわ。クソだりぃな。私はいったいなにと闘っているのだろう。
そして競馬場線ではないと見られない姿がある。それは、2両編成でパンタグラフが運転台側にある車両を先頭にして走る姿だ。7000系電車の2両編成の京王八王子方の車両を先頭にしたいわゆる「前パン」で走る姿は本線では基本的にはこの競馬場線用車両の回送のほかには見られないはずだ。
競馬場線にはワンマン運転に対応した7421編成と7422編成の2編成が走る。7000系電車の2両編成は2両ともにパンタグラフがあるのに、「前パン」になる京王八王子方の車両はモーターがない「クハ」(Tc:制御付随車)なのは京王に詳しくない私には新鮮でおもしろい。
西武西武園線と京王競馬場線という、競輪観戦客と競馬観戦客向けの路線をおもしろがるのは自分でもおかしい。ろくでなしここに極まれり。あとは、競艇場のある西武多摩川線にも通えば完璧だろうか。ははは。
とはいえ、「自分なりの絵」にできるほどに雰囲気をまだまだうまく消化しきれていない。もう少し通って工夫したい。遠くに行かなくても撮れる絵はいろいろあるさ。
【撮影データ】
Nikon D7200, Panasonic GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH. , AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D, AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED, AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW/Adobe Photoshop CC 2021