思わぬ大雪に見舞われた日に、秩父鉄道沿線で列車を待った日の話を続ける。15時ごろに鉱石貨物列車がどうやら運休になったようで、それ以降は旅客列車しか姿を現さなくなった。それでも、ひさしぶりに見る秩父地方の雪景色が私には新鮮に思えて、あたりが暗くなるまで線路沿いにいた。昼間よりも日が暮れ始めてからのようすのほうが私には好ましい。雪あかりであたりがほのかに明るいのも心踊る。
さすがに暗くなってしまったので駅まで戻った。すると、レトロな意匠を活かした駅舎も雪の日に見るとなおのこと印象深く思えて、そのようすを写した。
■交通系ICカードの読み取り端末がすでに置かれていた
秩父鉄道はさきごろ交通系ICカード「PASMO」を導入し3月12日(土曜日)より使用を開始すると発表した(リンク先はPDFファイル)。改札口にはすでに、ICカード乗車券の読み取り端末が置かれていた。
この駅は本校執筆時の2月22日現在、有人駅ではあっても周辺の駅の駅員が交代で勤務しているようだ。それが3月12日からは主要駅をのぞいて無人化されることにともない、この駅も無人化されるはずだ。駅事務室に明かりが灯るようすも見られなくなるのだろう。
昭和の終わりから秩父鉄道沿線のことを思い出しては通うということを私はしているが、交通系ICカードの導入については、さまざまな感慨を覚える。たまに訪問するだけの無責任な通過者である私には、待望の交通系ICカードの導入であると手放しに喜ぶ気にも、駅の無人化をいちがいになげく気にもなれずに「ついにそういう日が来たんだな」と思う気持ちのほうが大きい。そして、いろいろな局面において、時代が大きく動くようすをいま目の当たりにしている気持ちになる。
■雪はますます強くなる
列車が来るまでのあいだに待合室に荷物を置いて、そんなことを考えながら駅前のようすや駅構内を傘をさしつつ撮っていた。夜になって雪が大粒になってきた。雪があたりを舞いながら降り積もる、それだけはどんな時代にもおそらくは変わらないだろうか。
■飯能まで戻ったら雨に変わっていた
湿度が高い雪だとは感じていたが、あまり積雪量が多いのは帰宅が心配になる。そこで、19時台の列車で引き上げることにして、プラットホームに入った。夏のころに写すと虫の軌跡が写る構内灯に、いまは雪があたりを舞う。【撮影・RAW現像・レタッチについて】
レンズの選択:筆者は最近スナップショットに85mmを用いることが多い。被写体の全体像をまんべんなく画面内に収めることよりも、より印象的に思われた部分のみ切り取ることで、画面の整理をしたいからだ。写し込む情報量は少ないほうがいい。今回は筆者にはやや画角が広めのAFマイクロニッコール60mm f/2.8DとAFニッコール35mm f/2Dを使った。夜間の撮影であり、85mmよりは焦点距離が短くても不要なものがめだちにくいことと、画面いっぱいに降雪するようすを写しこみたいからだ。また、撮影時にレンズ最前部をぬらさないように注意した。レンズがぬれることによって生じるフレアを避けたかった。やや長めの非純正レンズフードはつけているが、逆光にもっと強いレンズがほしい。
露出設定:マニュアル露出モードにして、やや露出アンダーめの「飛ばさずつぶさず」という露出に設定して、RAW+JPEGで撮影し、RAW現像とレタッチをした。手持ち撮影であり、手ぶれ補正機構を持たない装備なので、シャッター速度は1/60秒。F2.8・1/60秒で撮影可能なISO感度を選びながら撮影している。
絞り値:絞り値を大きくすると雪の粒がめだってしまい、画面がうるさくなりそうだ。そこで、F2.8の絞り値を選択した。AFニッコール35mm f/2Dは長いこと使っている好きなレンズだが、F2.8くらいまで絞りたい。
ホワイトバランス:オレンジ色のナトリウム光が光源の写真と駅舎の写真では4,750K、構内灯が光源のものは緑かぶりを生かすために4,000Kの数値入力。5,000Kよりも青みがかかる4,750Kにしたのは、黄みを抑えるため。いずれもRAW現像時にマゼンタ方向にわずかにプラス補正をかけている。
AF(オートフォーカス):AFモードは「コンティニュアスAFサーボ(AF-C)」で「AFエリアモード」は「ダイナミック9点」を選択したまま。動く被写体ではないが筆者はAF-Cを常用する。シャッターボタン半押しAFではなく、いわゆる「親指AF」にカメラを設定している。
RAW現像:ハイライトを抑えるためにハイライト部分はマイナス補正し、シャドーを完全にはつぶさないようにシャドー部分をプラス補正をした。そのうえで、画面全体の明るさはRAW現像ソフト上で露出量を再設定している。絵作り設定はAdobe Camera Rawの「カメラスタンダードv2」で「彩度」と「自然な彩度」はプラス10程度。雪の粒をめだたせたくはないので、明瞭度の追加や「かすみの除去」は不使用。傾きの補正、レンズのゆがみと色収差の補正、高感度ノイズリダクションの調整も行った。
レタッチの内容:画面四隅に周辺光量落ちを作っている。画面内に意図せず写り込んでしまったものをめだたせないように、レイヤーマスクを作成してその部分の彩度と明度を落とす処理を行ったカットもある。
【撮影データ】
NikonDf/AI AF Nikkor 35mm f/2D, AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D/RAW/Adobe Photoshop CC