2021年11月24日水曜日

【ニッコールレンズとコンタックスメタルフードの話】いろいろなニッコールレンズにコンタックスメタルフードを装着して悦に入る俺は「フード病」をこじらせたに決まってる 後日編 「コンタックスゼラチンフィルターホルダー」をキミは知っているか

AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8Dに装着した
コンタックスメタルフード4+コンタックスゼラチンフィルターホルダー。
サードパーティ製62mm-67mmステップアップリングと62mmフィルター枠も併用

■コンタックスメタルフードは永遠に不滅です
昨年、あるいは今年このブログに書いたコンタックスメタルフード(ヤシカおよび京セラ時代のRTSシリーズカメラ用金属製システムレンズフード)関連のエントリーを、どうやら予想以上の多くの方に読んでいただいているようで、筆者はありがたく思いうれしさも感じつつ、おどろき困惑している。

いまとなってはそう注目されていない安価なコンタックスメタルフードを、ここぞとばかりに、諸君らにその存在やよさがバレていないうちに、ごっそりちょうだいしようという筆者の腹黒いたくらみが……価格が高騰してしまうと、調達しづらくなるではないか。みんな、見んな!

というくだりは、もちろん冗談だ(目は笑っていない)。私ひとりがなにかをして価格が高騰するようなことはありえない。中古カメラ店から出てきてコートの襟を立ててひと目をうかがいながら、どこかの誰かに電話をかけてささやき声で「買いだ! 買い!」などと、こそこそと通話している人物がもしいたら、それは筆者……のわけはない。

というのは筆者の「コンタックスメタルフード熱」はいまやすっかり落ち着いているから。それはただたんに、自分にとって必要なものはすでに手元にあるから、かもしれない。ははは。

以前から書いているように、私はコレクションとして集めたいのではない。そういうのはみなさんにおまかせします。私自身は、手元のやや古いAIニッコールレンズとAI AFニッコールレンズの遮光効果を向上させてよりよく使い、かつ自分の好みの外観にするために、いまとなっては値段の安くなった銀塩時代のアクセサリーを活用しているつもりだ。大げさにいえば、古いローテクな道具でも活用次第で役立つものがあるのではないか、あればおもしろいなという実験のつもり。

京セラがコンタックス事業部を2005(平成17)年に解散して15年以上経っても、こうしてRTSシリーズのアクセサリーがりっぱに使えるというのは、おもしろいと思うのだ。記念モデルではなければそれなりの生産数があり、希少価値がそう高いわけではないところも実用できていい。金属製でねじ込み式であるために、汎用的であり壊しにくいところも素敵だ。

コンタックスメタルフードは滅びんよ。何度でもよみがえるさ。

■ニコンとキヤノンのゼラチンフィルターホルダーではいまひとつだった
そう思いながら昨年いろいろと手元に集めてしまったコンタックスメタルフードは、じつはもっとも長いNo.5と55/67、67/86、72/86、82/86のアダプターリングぐらいしか使わなくなっていた。

コンタックスメタルフードは前面にねじが切られていないので、延長させるにはほかのフードを後部につなぐ必要がある。ところが、⌀86mmで前後に同一口径のねじの切ってある20mm程度の長さの円筒形連結式レンズフードというものは、たいへん希少なのだ。海外製品でも短いものはなかなか見つけられなかった(B&Hにあるこれはもしかしたら、その希少な例外かもしれないが自信は持てない。ドイツの会社の製品のようだ)。コンタックスメタルフードの前面にねじが切ってあったらより活用しやすいのだが、ないものは仕方がない。

前後にねじが切られていて長さの調節が容易なレンズフードを探しているうちに、さらに安いニコンとキヤノンのゼラチンフィルターホルダーのほうが目的に合うことがわかり、それらをおもに使うことが増えた。より病気がひどくなったわけだ。さらにゼラチンフィルター用のスリット(ポケット)を活用して、自作フレアカット用マスクを用いるようになると、ゼラチンフィルターホルダーを使用する頻度のほうが高くなった。

ところが、常用するAI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8DおよびAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G (Special Edition)に関しては、手元のニコンとキヤノンのゼラチンフィルターホルダーのレンズフードでは、長さが微妙に合わせづらいことがわかった。

ビネットを加えるのが筆者の流儀だが、けられているのよね、これ

左上の空の部分を見るとほらあ

太陽は枝に隠すのがよろし

AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8Dのアタッチメントサイズは⌀62mm、いっぽうAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G (Special Edition)は⌀58mmだ。したがってニコンゼラチンフィルターホルダーは⌀52mmのAF-1は使うことができず、⌀72mmのAF-2に各種ステップアップリングを併用して使うことになる。

また、FDレンズ時代のキヤノンゼラチンフィルターホルダーは⌀72mmにする専用アダプターリングが必要だ。筆者は⌀52mmのアダプターリングしか持っていない。だが、⌀72mmのレンズフィルターや旧ミノルタ製62mm-72mmステップアップリングでゆるみなく使えるので、それらを用いながらステップアップリングを併用して装着する。


そこでキヤノンゼラチンフィルターホルダーにフード2枚を装着して使用していたら、ピント位置が無限遠に近くなると、画面四隅がわずかにけられてしまった。確認不足で試写時に見落としていたのだ。あらららら〜。よく確かめたつもりだったのに。

より正確には、試写後にステップアップリングとさらに不要な円形ガラスフィルターのガラスを撤去した「保護用フィルター枠」を介して使用したために、そのフィルター枠の分だけわずかにけられたようだ。恥を忍んで書きますが、こういうのはしつこく実写を重ねないと「微妙」でわかりづらいことがある。試写不足でやっちまった。柱として不覚だ! 柱じゃないけど。

このけられの確認は、レンズのピント位置(ヘリコイドの繰り出し量)によってけられないこともあるので、ほんとうに要注意だ。「最短撮影距離付近では使用可能だが、無限遠ではけられる」という長さもありえる。だから、けられの確認は最大絞り値(もしくは最小絞り、つまりF22やF32など)にして、使用したい撮影距離にレンズ指標をセットしてから、よく晴れた日の順光側の青空、もしくは白い壁をプラス2段くらい露出オーバーにして、ライブビューか電子ビューファインダーのあるカメラでしつこく撮り、カメラの背面モニターではなく常用するパソコンのモニターで入念に確認をしないと、よくわからない。光学ファインダーでは見えないことがあるので気をつけたい(←私がね)。

■コンタックスゼラチンフィルターホルダーと67/86リングの厚さはほぼ同じ
AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D、あるいはAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G (Special Edition)は私にとって常用レンズだ。とくに前者はかならず持ち出す。35mmフルサイズボディでも、DXフォーマットボディでも欠かせない。後者は前者と同時に持ち出すことはせず、近接撮影よりも、暗所での撮影のほうが多いであろうと予想される場合に持ち出す。

どちらにも、コンタックスメタルフード4+67/86リングがよく似合う。35mmフルサイズでも四隅がけられない。ただし、この組み合わせだけでは意地の悪い強い斜光線を浴びた場合には、フレアカットをしないともの足りない。だから、自作フレアカット用マスクを併用するために、ゼラチンフィルターホルダーをできれば使いたい。

そう思っていて、コンタックスゼラチンフィルターホルダーのことを思い出した。コンタックスメタルフードのシステム内にもゼラチンフィルターホルダーがある。前部は⌀86mmのねじが、後部は⌀67mmのねじが切られている。発売時のセットでは、55/67リングも付属するので、さらにアタッチメントサイズの小さいレンズにも使用しやすくなっている。いまこの55/67リングだけが高騰し始めているようなのは気になるのだが。

ただ、筆者はじつをいうとニコンとキヤノンのゼラチンフィルターホルダー以上に、コンタックスゼラチンフィルターホルダーとの遭遇機会が少なかった。身近にゼラチンフィルターを使うRTSユーザーが少なかっただけだろうが。だから、そういう品物の存在を忘れていた。生産数も多くないようだ。

手元の日本写真機工業会刊行『93年カメラ総合カタログ VOL.106』(P.37)によると「ゼラチンフィルターホルダーセット」の価格は税別8,600円とあるので、なるほど当時それだけの価格がしたならば、ユーザーの数は限られそうだし、当時学生だった私の周囲にユーザーが見当たらなくても当然だろう。当時の京セラ・コンタックスは「士業のカメラ」といわれ、アマチュアユーザーには比較的高所得の医師や弁護士などが多かった。ユーザーがみな「先生」だったのだ。

コンタックスゼラチンフィルターホルダーと自作フレアカットマスクを使い
太陽の位置に気をつけながら撮れば、フレアも防ぎやすい

青空を写しても四隅がけられていない

検索をかけてこのコンタックゼラチンフィルターホルダーは67/86リングと厚さがほぼ同じであることを知って興味が湧いた。そこで、傷が多くて非常に安価なものを探し出した。

■AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8Dにはコンタックスメタルフードをふたたび使うことに


そうして探し出したコンタックスゼラチンフィルターホルダーを67/86リングの代わりに用いてみたところ、私にはいろいろと具合がよかったというわけだ。上記の2本のレンズには「保護用フィルター枠」をつけていても装着して四隅がけられることがない。

そして、先日プラバンから切り出してタミヤスプレーで塗装し、片面に植毛紙を貼りつけた自作フレアカッターマスクも使用できる。見かけも私には気に入った。そして、AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8DおよびAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G (Special Edition)は常用するので、できればレンズフードをつけっぱなしでいたい。この組み合わせでいまはつけっぱなしにしておいて支障を感じない。

「ふたたび京セラコンタックスの理想を掲げるために! 私は帰ってきた!」などといいたくなるね。ははは。それなのに、RTS用交換レンズはあいかわらず一本も所有していないし、むしろヤシカおよび京セラ時代の「カール・ツァイス」レンズではなくて、現代のナカグロがなくZFマウントのある「カールツァイス」レンズ*のほうにより興味があるのだけどさ。OtusとかMilvusという名前のあれね。きっとものすごくいいのだろうから。使ってみたいなあ。

こうして、私はまたコンタックスメタルフードをあらためて用いるようになった。手元にある道具を再活用できてうれしい。フード病が治る兆しがあまり見込めないともいえるかな。レンズフードの鬼だよな、とも思う。「どんなに強い鬼狩りだって関係ない。人間の原動力は心だ、精神だ」とは、『鬼滅の刃 無限列車編』で「下弦の壱」の魘夢(えんむ)も言っていたよな。

よもや、よもやだ! 穴があったら入りたい!

*ヤシカおよび京セラ時代の「カール・ツァイス」レンズではなくて、現代のナカグロがなくZFマウントのある「カールツァイス」レンズ:ヤシカおよび京セラが提携していた時代のCarl Zeissレンズは、和文表記の際には「・」(ナカグロ)を入れて「カール・ツァイス」と記しました。その提携解消後に登場した製品、および現在の日本法人の和文表記は「カールツァイス」と記し、「・」はありません。

【撮影データ】
Nikon Df/AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D/RAW/Adobe Photoshop CC