真冬の秩父鉄道親鼻橋梁で終電の時刻を気にしながら星の軌跡と列車を撮った。 連続撮影したものをAdobe Photoshopで比較明合成(コンポジット)している。 こういう撮影では寸分たりともぶれてほしくない |
■安定した場所に三脚を設置して各部のゆるみを締めること
ぶれをなくす基本中の基本は、三脚の設置場所に気をつけて三脚自体のゆるみをなくすこと。
設置場所はできれば舗装されているような、乾いていて固い場所にしたい。
そう書くとあたりまえのように思われそうだが、ずぶずぶと沈む濡れた土のような場所に仕方なく三脚を設置することや、浅い川の砂利のなかに置くこともあるかもしれない。それでも、できるだけ固い場所に設置しよう。
そして、あわててセッティングすると意外とどこかのネジを締め忘れることはありえる。これにも注意したい。時間の余裕を持って撮影できるように準備をしておくことも、ぶれ対策に役立つ。
石突が交換できるモデルなどはこの部分のゆるみにも要注意 |
石突(いしづき)を交換できる三脚もある。湿った土などに設置するならば交換用のスパイクを使うのもいいだろう。ただし、このスパイクは移動中は外しておこう。交換式ではなくスパイク収納式の場合は収納しよう。他人にぶつけるとあぶないから。
そして、石突部分のねじをしっかり締めること。意外とこれは盲点だから気をつけたい。
忘れがちなのは「手ぶれ補正機構」だ。お使いの個別の機種の説明書を読んでほしいが、ごく一部の超望遠レンズなどの「三脚モード」のある手ぶれ補正機構以外は、三脚使用時には基本的には「オフ」だ。
三脚使用時は特別に「三脚モード」のあるごく一部の 製品を除いて、手ぶれ補正機構は「オフ」にすること |
細かい説明をするとますます長くなるので、理由を知りたい向きには、原理をくわしく説明してくださっている北村智史さんのブログ記事などをご覧いただきたい。熟読して暗記しろ。
ゆっくりとした動きの低周波のぶれには手ぶれ補正機構は対応できるが、三脚を揺らしたことで生じるぶれは高周波であり、その動きには対応できない手ぶれ補正機構が多いということのようだ。そして高周波のぶれにたいして手ぶれ補正機構が誤作動を起こすことがあるということらしい。
なお、三脚から機材を外すさいに「オフ」にした手ぶれ補正機構を「オン」に戻すことを、絶対に忘れないように。これを忘れないことが最大の注意事項かもしれない。筆者はよく忘れる。
■三脚の最大推奨質量以内の機材でもぶれを起こすことがある問題
前回書いたように三脚や雲台の「最大推奨質量」に見合った機材で使っていて、もちろん「手ぶれ補正機構」もオフにした。雲台や三脚可動部にがたつきもない。それでも、三脚を使っていて撮影時にぶれが生じることがある。
「きれいに撮れてるだろ。ウソみたいだろ。ぶれているんだぜ、それで」
拡大再生してかの有名な漫画・アニメのセリフのようなことをいいたくなるわけですよ。映画の広告のような口調で「全俺が、泣いた。」とか句読点多めで独り言をいうよね。
「きれいに撮れてるだろ。ウソみたいだろ。ぶれているんだぜ、それで」 |
ぶれていて「全俺が、泣いた。」と句読点多めにぼやいた |
長々書いてきたが、ここから以下が今回話したいことだった。話が長いくせに、ここまででかなり息切れしたぜよ。
このぶれには、いくつかの種類がある。まず、シャッター速度が被写体の動きに対応できていない「被写体ぶれ」。これはシャッター速度や、場合によってはISO感度もふくめて変更することで調整できる。ISO感度を上げてシャッター速度をより高速にするということね。だからこれについてはこれ以上は説明しない。
つぎに、機材が動いてしまうことで生じるぶれ。撮影時にシャッターボタンに触れることで生じるぶれと、風で機材が動いてしまうことで生じる。これは「機材を動かさないような対策」で対処できる。
そして、一時期話題になった「機構ぶれ」。これは、シャッター機構が作動する際に生じるカメラ内部のぶれのこと。画素数が増えた結果として目につきやすくなった。ファインダーや背面モニターで撮影中に確認できないやっかいさがある。
今回は後二者の対策について説明していこう。
■シャッターボタンは指の腹でそっと押す
シャッターを切るためには、シャッターボタンに触れる。手持ち撮影でもこの行為がぶれの原因になることがある。それは、指の先で不用意に力をかけて、シャッターボタンを勢いよく押しているからという可能性がある。
いまのカメラではシャッターボタンは二段階式になっているものがほとんどのはず。半押しで露出計やオートフォーカスを作動させ、全押しでレリーズを行う。そこで、半押しの段階からシャッターボタンには指の腹でそっと触れるようにしておくほうがいい。指先ではなく指の腹を使う。短いストロークでそっと押すのだ。
シャッターボタンに指の先端ではなく指の腹をそっと乗せる |
半押し時。指の腹でそっと押している |
レリーズするために全押ししたところ。指の動きはそう大きくはない |
つねに指の腹でシャッターボタンに触れておき、力をかけずに半押しとレリーズを行う。それを心がけると、シャッターボタンを押す動作でのぶれは減らすことができる。
三脚を使うならば、別売の有線もしくは無線リモコンを使うとぶれの防止になる。スマホアプリなどを使い、スマホやタブレットなどのスマートデバイスからレリーズする方法もある。長時間露出などをする場合には「シャッターボタンを押すためにカメラに触れる」ことがぶれの最大の原因でもある。カメラに触れないでシャッターを切るようにしたい。
レリーズ時にカメラに触れないようにするために スマホアプリを使いスマートデバイスからリモートでレリーズするのもあり。 写真はニコンワイヤレスモバイルアダプターWU-1a |
有線リモコンはカメラボディによって端子の形状がことなるので、純正品か、サードパーティ製品でも対応機種をよく確かめて。
■露出ディレーやセルフタイマー、ミラーアップも併用する
機構ぶれの対策でもあるが、一眼レフならばライブビュー撮影やミラーアップ撮影を使い、ミラーの上下動を排除することも、ぶれ対策につながる。
シャッターチャンスが特定の瞬間だけに限定されない撮影、具体的には静物撮影、ブツ撮り、長時間露光による風景撮影、水をぶらす撮影ならば、露出ディレー機能、セルフタイマー、インターバルタイマー機能を使うのもいい。レリーズボタンを押してしばらくしてからレリーズするように設定すれば、シャッターボタンを押したときに生じたぶれがあっても収まるからだ。しっかりした三脚ならば筆者の経験では3秒あれば三脚のぶれはかなり止まる。
ニコンのカメラの「露出ディレー」。筆者は3秒を使う。 よく使うので「マイメニュー」登録してある |
「セルフタイマー」で連続撮影をするのもあり。 これも「マイメニュー」登録してある |
比較明合成を使って花火撮影する場合はインターバルタイマーを使う |
筆者はタイムラプス動画を作るための静止画撮影や、比較明合成を行うコンポジット撮影の場合に、3秒の露出ディレー機能とインターバルタイマー機能を併用する。
ソニーα7IIのようにボディ内にインターバルタイマー機能を持たないカメラならば、セルフタイマー撮影機能を使う。
■先幕電子シャッターや電子シャッターを使うことも考えたい
一眼レフの一部機種とミラーレス機にある先幕電子シャッターや電子シャッターも、カメラ内部での機構ぶれを減らす対策になる。縦走りのシャッター機構が動作することもぶれの原因になる可能性があるからだ。
前回も書いたように トートバッグにペットボトルを入れた重し。 地面に接地させるのがすごく重要だ |
水道水が使える場所ならばこれがいちばん手軽じゃないかな |
ガムテープでもパーマセルテープ(シュアーテープ)でも カモ井テープでもいいから、 テープでストラップを雲台に巻きつけて固定しよう |
タイムラプス撮影中に機材に直射日光を当てないように 三脚を別途用意して傘で日陰を作った。 撮影機材に使う三脚では風でぶれてしまう |
Velbon「アンブレラクランプ」は強風では意図的に外れるように作られているはず。
■アルカスイスプレートは大きいものを
最近の流行はアルカスイスタイプの雲台プレートとカメラプレートだ。*帯*路な東アジアのメーカーがこぞってアルカスイスの旧規格をカメラと雲台の固定部に勝手に採用し、日本メーカーは法的なリスクを考えて及び腰だったのではないか。それが、いまの*帯*路製品の氾濫と日本メーカーの元気のなさの原因かもしれない。そんなふうに筆者は想像している。
それはともかくとして、とくにL型カメラプレートは縦位置と横位置の切り替えにカメラの高さを変えることなくできるところが使いやすく、さらにはカメラネジ一本でカメラやレンズを雲台に固定する方式に比べて接触面積が大きいぶん、少なくとも理論的にはぶれに強いはずだ。そしてできれば、雲台はネイティブでアルカスイス対応のものがいい。
「理論的には」と書いたのは、雲台側のプレート部分が小さすぎるものではカメラをしっかり固定しづらいはずだからだ。とくにカメラボディが可動式背面モニターを持つもので、それに対応した切り込みのもうけられているL型プレートには、小ぶりな雲台プレートでは支えられない。
思いっきり*帯*路なアルカスイスタイプ雲台プレート。 幅の広いものを使うほうが安定する |
望遠レンズや望遠ズームレンズは 長めのタオルなどで三脚に巻きつけてしまうといい。 夏場はこの機材専用タイルマフラーを持っておくほうがよさそう |
ガーゼマフラーのロングタイプは軽量だしかさばらない。
以上が筆者が注意しているぶれ対策だ。とてもとても長い記事になってしまった。
機材の質量に見合った三脚を使い、可動部分のゆるみに気をつけて、できるだけカメラに触れずにレリーズすること。三脚の重心を下げる工夫をすること、風への対策もすること。これにつきる。
ベテランであれば新味のないお話かもしれない。それでも、皆さんのなにかのヒントになれば幸いだ。
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