2018年9月8日土曜日

【2018年夏関西リハビリ鉄記事】懐かしい103系電車に会いに奈良線へ その2.「宇治川にてついに撮影成功」

まずはふつうに撮ってみて……ふつうだ→「ふつうって言うな!」

近畿地方の台風被害だけではなく、北海道では地震もあって。親しいひとたちの顔を思い浮かべると胸が痛む。みなさんの暮らしがはやく平穏無事に戻りますように。

【前回までのあらすじ】
奈良線を走るあずまびと(筆者のこと)には懐かしい103系電車を撮るために、阪和堺市駅から出かけようとして、なぜか日根野にたどり着くなど、紆余曲折しながら奈良に向かった筆者。奈良線の電車に乗り込んでバッチグー! のはずが、またもや居眠り。さらに、ようやく出会えた懐かしい電車に乗ってもまたもや眠りこける。

「眠り姫」ならかわいらしいのに「居眠り男」だと、だらしなく聞こえるのはなぜか。とにかく、話は京都駅で目覚めたところから始まる。

103系電車を置き換えている205系電車もさわやかでいい感じ

■中二病な筆者、リアル中二の記憶を思い出す
夏休み期間中の奈良線京都駅のプラットホームは、日本国内からだけではなく、海外からの観光客のみなさんで混み合っていた。カメラを持っているひとも多い。

海外から来たみなさんはいちようにTシャツと短パンにサンダル履きという、リゾートに来ているようなたいへんカジュアルな服装で「暑くてまいるなあ」「フシミイナリ・シュライン?」という顔をして、そそくさと電車に乗り込んで涼んでいる。いっぽう、国内からの観光客のみなさんは麦わら帽子にドレッシーなワンピースや、男性も襟のあるシャツを着てもう少しよそ行きの服装をしたひとがやや多く、やはり電車の中にいる。持っているカメラはミラーレスが多く、iPhone所有率も高そう。

かたや、一眼レフやコンパクトデジタルカメラ、ビデオカメラを手にいつまでもプラットホーム、それも103系電車の先頭車両の前にいるのは、我らがテツだ。海外からの観光客のみなさんのなかには、そんなテツのようすを見て「これはなにかスペシャルなトレインなのだろうか」と103系電車におなじようにカメラを向けるひとまでいる。どこかの外国のひとのカメラにそうして、地味な通勤型電車である103系電車の姿が記録されるのもまたいとをかし。

ええまあ、ある意味ではスペシャルなコミュータートレインなんですよ。20世紀の日本国有鉄道の時代に通勤通学輸送に大活躍した電車の代表みたいなものだし、もう同じかたちの車両はここ奈良線でしか走っていないからね。播但線と加古川線の車両はもうすこしいじられているから……あ、和田岬線用は色ちがいなくらいか。

ところが、テツなくせに先頭車両の前に行かずに、先行する「みやこ路快速」の車内で涼んでいるのは筆者だ。だって暑いしまだ眠いんだもの。

そんな感じで103系電車の各駅停車をどこかで撮るために、先行する快速列車にゆられて思い出したのは、いまを去ること幾星霜と遠い目を思わずするほどむかし、いまでも心のなかでは「中二病気質」的なやや被害妄想的な自意識過剰さを持つ筆者が「リアル中二」だったころのこと。修学旅行で宇治の平等院鳳凰堂を見に行ったさいに、宇治川の橋梁を渡る列車の姿を見たのだ。

乗っていたバスが宇治橋を渡り、ガイドが「みなさんこれが宇治橋ですよー」と解説しているときに、橋ではなくそばにある鉄道橋を2両編成の列車が通過していくのを見たことが忘れられない。なぜ覚えているかというと、そのころに鉄道雑誌で見たばかりのクリーム色にオレンジの帯の105系電車をそのときはじめて目にしたからだ。そして6月でも真夏のような暑さだというのに、その電車には昭和50年代末だというのに冷房装置がなかった。いまは桜井線(万葉まほろば線)と和歌山線でのみ用いられている105系は、1984(昭和59)年に常磐緩行線用103系1000番代から改造された当時は奈良線も走っていた。しかも非冷房で。

そうだ、あの橋に行ってみよう。JR東海のコマーシャル「そうだ、京都行こう」みたい。じっさいに京都にいるしな。

103系電車きはったあああああ!

■宇治川の流れは絶えずして
宇治駅で降りて宇治橋西詰まで歩き、ほとんどのひとたちは平等院へ向かって右折していくか、直進して京阪電車の駅のほうへ行くのに、私だけ左折して踏切にたどり着くと、後続の103系電車はすぐにやってきた。まずは一枚撮ってみて。うーん、背景がごちゃごちゃしてしまうので、これではだめだと反省した。望遠レンズで背景を引き寄せてしまうと、どうも私の好みにあわない。ふつうすぎるんだよな。

自分の写真ではもう少し、すっきりした感じにしたいんだ。

そこで、広角レンズに交換して、河原に降りた。水べりまで降りてしゃがんでみると、空を大きく写すことができるし、このほうがずっと好みにあった。そして、この場所なら木陰もあるし、ときには川の水に足をつけることもできていい。

Twitterをねめ回すように見ていると(たとえですからね!)ねらっている103系電車は、どうやら今日は2編成しか走っていない。宇治で待っていると、京都行き列車として来たら戻ってくるまでに1時間、城陽行きなら30分、奈良行きなら1時間強というところ。さきほど遭遇した編成以外にもう少し待てば来るはず。

そこで、この103系電車を置き換えているステンレス車体に青帯の205系電車や、おもに「みやこ路快速」に充てられている221系電車も撮りながら待つ。205系電車の青帯と青空の取り合わせもなかなかいい。私の地元の八高線・川越線では、関西に私がいるあいだにこの205系電車の仲間が引退してしまったようだし。

宇治橋を入れた写真も撮って場所を軽く説明したり

それにしても、学校で習った日本史のことをかなり忘れてしまったとはいえ、宇治には大昔からひとが住んでいて栄えているはず……。646年に宇治橋がかけられているので、そうとうな昔だ。生まれる1300年以上まえだなんて想像もつかないぞ。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」とは、かの『方丈記』の有名な書き出しであり、鴨長明がそこに書いた川は宇治川ではなく、川という一般的な存在であろうけれど。水面を見ているとそんなことを思い出す。鴨長明の庵のあったのは伏見だから、もう少し下流の宇治川かもしれないよね。

私がこうしてここにいるのも、ここを走る103系電車が奈良線からまもなく消えゆくのだって、宇治の歴史や宇治の町ができる前からある川の流れにくらべたら、うたかたみたいなものなのかも。入院して1ヶ月でようやくここまで来られてなんとか撮影できるようになった。思えばそれもあっという間で、これから先の人生に比べたら、そのあいだのできごともきっとうたかたみたいなもの。ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』のように、肺の中に睡蓮が咲いたりしていないし。とか、あ、いや。そっちではなくて……。

青空と緑を背景にシンプルにするのもいとをかし

■103系の撮影に成功! そして宇治でサイゼに
水を眺めていつものようにたそがれそうになっていると、土手の上の踏切警報機が鳴りはじめて、私の目を覚ました。陰キャだからさ、なにかとすぐにたそがれちゃうんだよ。

この場所のいいところは列車の接近がわかりやすいところと、JR駅から近いうえに対岸の目の前に京阪電車の駅があるので、アクセスがいいところ。とにかく、カメラを構えてみたら……ねらっていた103系電車キターッ!

そして、20分後にもう1編成も来ることがわかっているので、ねらい方を変えてもう一発。こちらもよしきた! というところ。



サイゼリヤ宇治里尻店の立地、最高かよ

修学旅行のような団体行動ではなく、個人では実質的にはじめて来た宇治でなかなかいいぞ、とホクホクしながらすぐそばにあるサイゼリヤで休憩することにした。この行動は「首都圏の自宅すぐ近くにあるじゃん」「宇治まで来てサイゼかよ!」とみんなに笑われたのだけれど、いいのいいの! 入院していた私はひさしぶりに入るのだし、宇治橋の目の前にあって観光客だらけではないところも便利なんだぜ。デートや観光に来たのではなくて撮影が目的の私にはむしろ「最高かよ」(←いうことがいろいろとやや古くてすみません)。

【もう一回ぶん続きます】
【撮影データ】
Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH. LUMIX G 42.5mm / F1.7 ASPH. / POWER O.I.S./Adobe Photoshop CC 2018