2020年2月11日火曜日

【カメラ機材の話】Nikon Dfの試し撮りの日々

マグニファイングアイピース DK-17M(旧製品)と接眼目当て DK-19を装着

■日々これ試し撮り
2月も半ばを過ぎて、さらに今年は暖冬なだけありなおさら、春の訪れの気配がはっきりと感じられるようになった……などと書くとまた大雪が降るかもしれないけどさ。近頃はいろいろとやるべき作業をまた山積みにしているあいまの散歩に持ち出す際に、いろいろとNikon Dfで試写をして、感触を確かめている。

というのは、2020年のいまになってみると、2015年に上毛電気鉄道をDfで撮影するために使わせてもらっていたころとは、受ける印象がことなるからだ。5年のあいだにデジタルカメラの進歩がさらに進み、自分がいつのまにか「いまのカメラ」に慣れてしまったからなのだろう。そんなことは頭では理解していたつもりだったのだが。

■マグニファイングアイピースをつけたり
まず、デザイン上はDfボディにとても似合うマニュアルフォーカスニッコールレンズを使うのに、光学ファインダーでは私の目には、ピント合わせが大変残念ながらしやすいとはいえない(まわりくどく書いた)。しかも、私が使いたいと思って手元にあるのは、いささかくせのあるレンズが多いから。そのうち、AI Nikkor 35mm f/1.4SとAI Nikkor 85mm F1.4Sはフィルムカメラで使っていたころからしばしばピントを外していた記憶がある。だからこそ、というべきか。とくにこの2本をきちんと使ってみたいのだ。

Dfにはフォーカスエイド機能はもちろんあるので、それに頼りつつも、デフォルトのフォーカシングスクリーンとファインダー倍率では、「絞り開放から画面端までびしびしピントが合うわけではない(←くどい)」むかしのマニュアルフォーカスニッコールの大口径レンズでピント合わせをするのに「バチコンとハマる音がした!」(『ジェニーハイのテーマ』)という感じがしない。私の目が悪いからだ。

まあ、それにアイポイントの長さや接眼部の形状はことなっても、Dfは基本的にはD600/D610と同じファインダーだからね。D600/D610は「マニュアルフォーカスがとくにしやすいファインダー」というわけではなかった。Dfについても登場時からそういわれていたものね。DfはかたちはFE/FMシリーズに似ていて、イメージセンサーと画像処理エンジンはD4と同じでも、カメラとしての操作の感触は基本となったD600/D610に似ているように思う。けっして感触がよろしくないとは思わないけれど、D一桁シリーズほどの安定感があるわけではない。

そこで、ずっとむかしにD2Xで一時期使っていた「マグニファイングアイピース DK-17M」(旧製品)を道具箱から探してきて装着した。二コ爺歴が長いとこうやって「買わなくても家にある」ことがあるのはちょっとした利点かも。「接眼目当て DK-19」も見つけたので、あわせて装着した。DK-17Mは1.2倍の倍率をかけるので多少はスクリーンのヤマが見やすくなる。ただし、画面四隅が見づらくなるので、そのうち外してしまうかもしれない。D2Xで使っていたときも、裸眼で見ていてもけっきょくは画面四隅が見づらくなってうまく構図しづらくなるので外したからだ。眼鏡使用者にはおすすめできない。

【2023年5月追記】:マグニファイングアイピースと接眼目当てはやはり数ヶ月で使うのをやめてしまいました。ピント合わせはしやすくなるのですが、ファインダー四隅が見づらくなり、構図がうまく自分にはできないからです。

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D

■ファインダースクリーンも変えてもらった
もっとも、むかしむかしD7000のときにも同じことを書いたように、「見やすいとはいえないファインダーの表示倍率を高くしても、接眼部が出っ張るだけで見やすくなるわけではない」。そこで、台湾のFocusing Screen.comから、Df用に加工されたNikon F6用スクリーンを入手した。斜めスプリットのファインダースクリーンL型だ。

私はフィルムカメラのF4のときから斜めスプリットのスクリーンを愛用している。FやF2にもF4用スクリーンの斜めスプリットを入れていた。ぼけの美しさはF3用がいちばんいいが、F3用スクリーンでは私はピントを外しがちだ。そこで、フレネルの溝がめだつといわれていたF4用スクリーンを意図的に選んでいた。D2XとD7200も、当時交換スクリーンを販売していたアメリカのセラーから斜めスプリットのスクリーンを入手して用いている。

ただし、Dfのスクリーンは固定式でユーザーでの交換を想定した作りにはなっていない。Focusing Screen.comにも解説ページがあるし、YouTubeで交換の仕方を説明している動画もあるので、交換するひとはそれらを参考にして自己責任で試みてほしい。筆者はユーザー自身によるスクリーン交換を推奨しませんし、失敗した際にも責任を負いません。あしからずご了承くださいませ。

筆者はハズキルーペ(きゃっ!)……ではなくて、100円均一の店で買った拡大鏡も使って交換しようかと試みたものの、よく見えないので断念し、カメラの修理ができる手先が器用な友人にむりを言ってお願いしてしまった。頼もしい友人がいてありがたい。なにしろ、自分で試みてオリジナルのスクリーンにいくつか傷をつけてしまったからだ。D7200でもスクリーンを固定する金具をうまくはめ込むことができず、やはり自分では戻せなかった。デジタル部の修理ではないので、フィルムカメラ修理店などでも機材と部品を持ち込んでお願いすれば、有料で引き受けてくれるところはあるかもしれない。

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D

■ライブビューも併用するほうが賢い
なぜファインダーにここまで手をかけたかというと、前述の通りにAI Nikkor 35mm f/1.4SとAI Nikkor 85mm F1.4Sを使いたいから。でも、それだけではなく、手元にあるCPUニッコールレンズ(DタイプAFニッコールレンズ)の一部では、AFレンズであるにもかかわらずファインダー撮影時にピントを外すことがあるからだ。AF微調節ももちろん行っているよ。

おそらくもうこれは仕様だから仕方がないのだけれど、Dfのオートフォーカスモジュールは「マルチCAM4800オートフォーカスセンサーモジュール」(ー1〜+19EV)のためなのかもしれないと思っている。なにしろ、以前使っていて「位相差AFの精度がどうもいまひとつ」と思っていたD7000と同世代なのだ。こればかりは仕様だからユーザーレベルではどうしようもない。日没後などはもう位相差AFを使うことはすぱっとあきらめている。

問題は日中でも撮っては確かめて……としないと、レンズによっては「あれ?」ということがあるからなのだけど。たとえば、古い古い旧製品のAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dでマクロ域ではないのに油断しているとピントを外すのだ。アドバンストマルチCAM3500 IIを積んでいるD7200ではそんなことはないもの。だから、私の個体ではDfとの相性がよろしくないのかもね。

このカメラはだから、そういうもろもろを許容しながら「ゆっくり一枚一枚撮るカメラ」なのだろう。そういうのが好きなひとにしか向いていないのではないか。2020年のいまとなってはなおさらそうだ。

もっとも、2015年頃にGタイプニッコールレンズと組み合わせていたときには、位相差AFのことはあまり気にならなかった。ただし、そのころでもAFがものすごくいいとも思わなかったとはいえ、D7000ほどの甘さは感じなかった気がするけどなあ。でもたしかに、日没後の上毛電気鉄道大胡電車庫では位相差AFでピントは合わなかったっけ。

そこで可能な限りライブビューを使うべし、と決めた。拡大してピント合わせをすればいい。画面四隅までAF測距点もある。三脚を持ち歩いてきちっと撮る場合はライブビュー撮影が確実だ。撮像面でピント合わせをするのだから、原理的にはサブミラーから光を導いて位相差AF用センサーで合わせるファインダーAFよりも正確だ。

ただし、Dfはファインダー撮影では電池消耗が少ないカメラだが、ライブビュー撮影をすると電池はかなり消耗するのは要注意。電池サイズが小さいDfでライブビュー撮影を多用するならば、予備電池は必ず持ち歩こう。このあたりは、ミラーレス機を使うのと同じつもりでいるほうがいい。筆者は合計4本の電池を常時持ち歩いているよ。

AI Nikkor 85mm F1.4S

AI Nikkor 35mm f/1.4S

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D

■4,760Kと色相−1で試用中
色みについてもあれこれと迷いがある。Dfのあとの世代の画像処理エンジンEXPEED 4を用いたD7200に慣れているので、その視点で見るとEXPEED 3の作り出す絵は黄みが強く見える。しかも使っているレンズが古いからなおさら黄みを強く感じさせる。そう思うと、いまのニコンの絵は色みがだいぶニュートラルになったと思う。古いデジタルカメラを使うと最新機器の進歩に感動させられるとはおもしろい。

もっとも、筆者はRAW+JPEGで撮影してAdobe CameraRawで現像してしまうので、もとのカメラの設定をどうしてあってもCameraRaw上ではWBをのぞいて撮影時の設定がキャンセルされてしまう(2020年2月12日追記:最新版のCameraRawでは環境設定で設定すると、カラー設定を「カメラ設定」のままで開くことも可能になった)。とはいえ、撮影時にできるだけ設定を決めて作り込むのが好きだ。撮影時に設定を決めずすべてをRAW現像時に決めるのは、たんに決定の先送りでしかない。カット数が多い場合には生産性がよろしくないと思うのだ。あくまでも、私個人的にはね。RAWデータは保険のようなものではないか。

そこで、黄みをどうすれば減らせるかといろいろと試していて、ほかのカメラでは5,000Kに設定しているホワイトバランスをやや青めの4,760Kに。ピクチャーコントロール・スタンダードの色相を1ステップだけマイナスにしてマゼンタ方向に振った。このへんは、意図や好みによる。晴天時の日中だけの設定であり、万能な設定ではないので、お試し中というところ。

ほかにも……筆者はここ数年でAPS-Cサイズとマイクロフォーサーズに慣れていったら、「35mmフルサイズでの被写界深度の感覚」を見失ったことをいま味わっている。あれ、こんなにぼけちゃうのか! とおどろかされるのですよ。だから、35mmフルサイズでそれぞれのレンズでの適切な絞り値を見つける作業をしている。だからまだ、本格的に何かを撮るまえにいろいろと試用してばかりというわけだ。

わざわざ古い機材を使うというのは、こういうことが必要だ。最新のD850ボディやZ7ボディにGシリーズやZシリーズレンズにすればいずれも不要な作業だもの。とくに、ショートフランジバックで最新の硝材やコーティングを用いているZシリーズレンズはほんとうにすごくいい。

そして、どんな機材を使うのであっても、写真家ならば本格的に撮影するには自分の機材の特性をまず知ることからはじめないといけないね。ふふ。そう思えばやることがたくさんありますな。

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D

【撮影データ】
Nikon Df/AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, AI Nikkor 35mm f/1.4S, AI Nikkor 85mm F1.4S /RAW/Adobe Photoshop CC 2020