■あれはたしか2013年5月のこと
5月も終わりごろの曇り空の日のこと。おそらく高崎線沿線に用事があったその帰り道に秩父鉄道に立ち寄った……などと書くと気まぐれに立ち寄ったように見える。その日のことは正直にいうと写真を見るまではあまりよくおぼえていなかった。ハードディスクにあった写真は秩父鉄道の北武区間の交換駅から始まる。時刻は17時半頃だ。日が長い季節でまだ明るい。
そのころは秩父鉄道1000系電車をできるだけ多く撮っておきたかったと思っていたはずで、高崎線沿線に所用で出かけたときに、D7000とマニュアルフォーカスのAI Nikkor 28mm f/2.8SとAI Nikkor 50mm F1.8Sをかばんに忍ばせていたようだ。ビジネスバッグには余裕で収まる組み合わせだ。どうしてそう判断できるかというと、その2本しかこの日の画像のEXIFデータに現れないから。
■オレンジバーミリオンに乗り込んだ
熊谷で秩父鉄道のホームに入り留置線や直後にやってくる列車を見て行き先を決めたにちがいない。そうして北武区間ですぐに1003編成オレンジバーミリオンIIを見かけて、もう日が沈む時刻も近く、天気もよくないので「乗り」に徹することに決めたのだろう。
早めの帰宅ラッシュの時間ではあろうけれど写真を見るとそれほどひとが写っていない。そして電車はがんがん加速して荒川沿いを走るようになる。車窓の様子などを写している。スマホを見なかっただけりっぱだ。でもまあ、居眠りするか考えごとでもするほかにやることがなかったのかもしれない。
■デハ1103の窓を開けて
5月中は夕方になると気温も下がるので冷房のない中間のデハ1103号車の窓を空けているだけでじゅうぶん涼しかったようだ。窓が空いているようすがほかには写真にも写っていない。
寄居と秩父、御花畑で乗降があったけれど、影森をすぎると車内には下校帰りの高校生が数人いるだけになり、それも武州中川と武州日野でほとんど降りてしまった。自分の乗っていた中間のデハ1103にほかの乗客がいなくなった。
■静かな19時すぎの駅
三峰口まで1時間45分程度乗り通した。数人の乗客はみな迎えの車に乗り込んで帰宅したので駅には私しか客はいない。夜19時とは思えないほどの静けさだった。この1003編成は三峰口入庫だったようで、次の上り列車である7001編成に乗って私も長居せずに帰ってしまった。静かすぎて長居するのもなんとなくはばかられたのかもしれない。
【撮影データ】
Nikon D7000/AI Nikkor 28mm f/2.8S, AI Nikkor 50mm F1.8S/RAW/Adobe Photoshop CC 2020