2020年11月20日金曜日

【ソビエトレンズ】第三次レンズフード決戦! Jupiter-9とJupiter-11の内面反射対策を敢行し悉く解決す!



■なぜか大本営発表ふうにレンズフードの話をする
ソ聯製望遠レンズ「木星九號」および「木星十一號」には電子式寫眞機で用ゐる際に、強力な斜光線のある状況下では内面反射を起こし、できあがつた寫眞の暗部にしまりが全然なくなるといふ問題が生じがちである。しかし本日榮光ある我が軍は特別行動隊を結成し、この内面反射問題を一掃せり。

爾後内面反射問題を対手とせず……あまり意味のない言葉遊びで読みづらいからもうやめます。あと、「木星九號」だと某国のロケットみたいだし、「もく星号」もまずいな。

さらに、「特別行動隊」という名前は我ながらおっかないね。「アインザッツグルッペン」とかソ連内務省の「OMON(特別任務民警支隊)」みたいで。ははははは。なるほど、シベリア送りだ。

ええと、私の持っている1950年代製のソビエト製ライカスクリューマウントレンズのうち、とくにJupiter-9 85mm F2.0とJupiter-11 135mm F4.0は、デジタルカメラで使う際に、強い斜光線があると鏡筒内部で内面反射を起こしてしまうという話をこのところしている。古いレンズだからね。ほかのレンズも斜光線には強いとはいいがたいけど、この2本はとくになんとかしたい。

そこでまず、SMC Takumar望遠レンズ用の、長めのレンズフードを探し出して装着したというのが前回までのお話だ。フレアカッターとしてはこれでかなり成果があった。しかし、焦点距離が長くて鏡筒も長いJupiter-11にはより長いレンズフードがあってもいいくらいだ。鏡筒内部には各部に溝がきちんと彫られているが、塗料も劣化しているのかそれだけでは反射防止効果がなさそうだ。

内部に切り出した植毛紙を貼った

■植毛紙を内部に貼った
そこで、自宅にあった植毛紙(ウールペーパー)を鏡筒内部の乱反射を起こしそうな部分に貼った。以前から試そうと思いつつ行わなかったのは、非常に貼りづらい場所だからだ。その部分に合わせて切り出すのが難しい。さらによく見えないし、指も届きづらくてきれいに貼りづらい。そう思ってしなかった。

怠惰((サボタージュ)は諸悪の根源だ。反革命・サボタージュ取締全ロシア非常委員会(ヴェーチェーカー)という組織がのちのソ連国家保安委員会(KGB)になったんだよね。

でもよく考えたら、貼りつける部分の形状を1枚で合わせる必要はない。植毛紙をいくつも小さく切り出して貼りつけていけばいい。

そのことを思いついたきっかけは、アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で、コロニー落としに使われるために鹵獲されたサイド2の「8バンチコロニー アイランド・イフィッシュ」に、ジオン軍が住民が中にいるまま外部からコロニー表面をコーキングしているシーンを思い出したからという……非人道的な連想がきっかけなのだけど。

この小さく切り出した植毛紙を貼りつけていく欠点は、ツギハギだらけで見栄えがよくはないというだけだ。貼る部位をつねにひとに見せるわけでもないし、自分で使うだけで売り物でもない。だから見栄えが悪くてもかまわない。そう思いいたったので、無水エタノールでできるかぎり脱脂をしてから、小さく切った植毛紙をピンセットでせっせと貼りつけた。

これだけでかなり効果があった。「完全に解決した」わけではないけどね。どうしていままで思いつかなかったのかなあ。老眼鏡……ああいやその、読書用眼鏡をかけないと近くが見づらいからかも。認めたくないものだな……。

きれいじゃないだろう。貼ってるんだぜ、これで

■反射防止塗料を塗るほうが見栄えはいいかも
植毛紙を用いたのは、裏に接着剤のあるシートが自宅にあったから。反射防止塗料はないので、買ってこないといけない。

それともうひとつ、反射防止塗料は被膜が弱く、下地処理をきちんと行う必要がある。筆塗りするにも、スプレー塗装をするにも道具も持っていない。さらに、私の持っているJupiter-11のほうは分解ができない。

植毛紙も紙自体の厚みが邪魔をする可能性も考えたし、劣化したら毛の部分の剥離、接着剤の剥離はおきるだろう。ただし日常的に触れるわけではない。だから使うたびに注意深く確認して、その場合はまた貼り直すことにする。

修理や調整は私には自分ではできないので、不可逆な改造を自分では行いたくはない。植毛紙ならば剥離することも可能だ。

なお、こうした植毛紙による反射防止対策を自分で行えるのは望遠レンズだけだ。反射防止材を貼るスペースのないものにはこの方法は応用できない。レンズフードとハレ切り、そして構図を工夫するほかないだろう。

それにしても、いつもレンズフードの長さが足りないと思い、「もう少し長いフードはないかなあ」と思っているうちに、フード病をひどくさせている。「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」ということか。前面にもネジの切ってある連結式のフードの種類がもう少しあるといいのに。「同じ口径で連結できるフード」が国産用品メーカー製品にないのが残念だ。

【注意】植毛紙を貼ったのはヘリコイドの動きを邪魔しない部分だけです。読者のみなさんが行う場合にも、ヘリコイドの動きをよく確認してから行ってください。

■3本のレンズだけは適合フードを決めた
さらに自分の持っているレンズとレンズフードのけられとハレ切りの効果を、わざわざ斜光線を探し出してフードの着脱をしながら各絞りで撮影するという方法で確認してみると、Jupiter-9とJupiter-11、そして反射防止対策は行っていないOrion-15 28mm F6.0の3本だけはフードの組み合わせも見つけ出すことができた。

SMC Takumar 135mm F3.5用を装着した例。
105mm F2.8用でもけっこういける。
L-Mアダプターがついたままだ。すみません

●Jupiter-9 85mm F2.0
先日のエントリーにもあるようにSMC Takumar 105mm F2.8用の「Takumar 1:2.8 105mm 1:4 100mm」と刻印のあるレンズフードを使用。ただし、さらに長いSMC Takumar 135mm F3.5用(「Takumar 1:3.5 135mm 1:5.6 200mm」という刻印のあるもの)でもけられないので、そのほうがより効果がありそうだ。

これでもケラれない。
ただしこの口径の太さではハレ切りできてもいない。
こちらもL-Mアダプターがついたままですみません

ためしに、コンタックスメタルフードNo.5+72/86アダプターリング+先端に⌀72mmのネジが切ってある⌀49mmのRUSSAR MR-2につけている超広角レンズ用フードを組み合わせてつけてみてもけられない。それはいいけれど、ハレ切りもできないようだ。なにしろ大げさすぎるのでこれを常用したくはない。そして、口径が大きすぎるレンズフードではハレ切りできないという証拠かもしれない。少しだけ口径を大きくすることはありでも、長さと口径の大きさにいろいろなバランスがありそうだ。

SMC Takumar 135mm F3.5用フードを
40.5mm-49mmのステップアップリングで

●Jupiter-11 135mm F4.0
上記の「Takumar 1:3.5 135mm 1:5.6 200mm」という刻印のあるSMC Takumar 135mm F3.5用フードを40.5mm-49mmのステップアップリングを介して装着した。これも千円しなかったから手に入れまして。

ただし、これだけでは内面反射が防ぎきれないので、さてどうしようかなあ、と考えたのが内部に植毛紙を貼ることだった。

なおこのレンズはアダプター式の一眼レフ用(Juiter-11A)とKiev-10用のJupiter-11 Avtomatが、解像感が高いということで有名だった。そういわれていたのに関心をいままではあまり示さなかった。いまさら、ライカスクリューマウント用でも解像感の高さを知っておどろく。色みもアンバーかぶりがない。あまり使わないでいたので、知らないことがたくさんある。

これはいつ買ったどこ製のフードだか思い出せない。
いまでもよく見かける「広角レンズ用」だと思う

●Orion-15 28mm F6.0
どこのメーカーのものか思い出せないけれど、よく見かける⌀40.5mmの広角レンズ用フードをつけてみたところ、けられないことがわかったので即採用だ。このフードはいつ買ったのかも思い出せない。ほんの少しはハレ切りの効果もあった。

ただし、いまのところ出番は少ない。悲しいけどうちのボディがα7IIなのよね。というのはα7IIに装着すると画面四隅がかなり暗く落ちてしまうので、あまり積極的に使う気にならないという理由もある。電子ビューファインダーで見ても画面が暗くなりすぎて使いやすくない。周辺減光を意図的に作るのが好きな私でも、ちょっと落ちすぎるほど。レンズ自体は好きなのだけどなあ。

Jupiter-11で撮ってみて
よく写るなあとうれしくなった


そのほかのレンズについては、持っているフードではハレ切りができず、たんに保護用の役割しかしないことがわかったので、まだ判断保留中だ。上の写真に写っている中央のスリット入りのものも、遮光する効果がほとんど感じられない。だから、そのほかのレンズでの有効に思えた組み合わせはわかりしだいここで記事にするつもり。まだ試写も重ねたい。したがって、ここでお見せした組み合わせは2020年11月現在の途中経過だ。こんな感じでもなにかの参考になれば幸いだ。

【追記】ついでに、レンジファインダーカメラボディではいまは使用しないことにして、ボディ側のレンジファインダー連動コロと接触するヘリコイド後部の部分にも黒いパーマセルテープを貼った。もともと黒く塗装されているものが長年の使用で色が落ちて銀色に輝いているからだ。ただし、これはマウントアダプターでミラーレスカメラで用いるひとにしかおすすめできない。わずかな厚みが加わるだけでもレンジファインダーの動作が微妙に変わってしまうからだ。なお、パーマセルテープを用いたのは接着も剥離も容易という理由だ。

余談だが、黒塗装のユピーチェル工場製Jupiter-3はこの部分がどういうわけかわずかに短く、KMZやLZOS、ザゴールスクおよびカザン製のほかのソビエト製レンズとはZorki-3などのファインダーの倍率が高いカメラでレンジファインダーの動作が合わず、無限遠の表示がファインダー上でできなかったので、パーマセルテープを貼って長さを足して私は使っていた。数本試してもなぜか同様の症状があった。コロと連動する部分でも、数年間は貼り替えずに使うことはできた。ただコロは汚れるからね。