■京王競馬場線に10年ぶりに行った
近ごろは西武多摩湖線、西武園線、狭山線という村山貯水池(多摩湖)と山口貯水池(狭山湖)周辺に敷かれている支線にばかり通っている。本線では走らなくなった車両が運用入りしていること、そうした少し古めの車両が単線を往復して走る姿が好ましく思えるからだ。もちろん、自宅から近い好ましいところだからという理由もある。
根本的に、列車が都市部を長編成で疾走する姿よりも、都市周辺部をのんびり走る列車の姿のほうが私は好きだ。秩父鉄道、上信電鉄、上毛電気鉄道、あるいはJR桜井線(万葉まほろば線)と和歌山線、奈良線のような。そういう列車の写真ばかり私は写しているものね。そこで、あらためて好きな鉄道風景について客観的に考えたいと思い、「短編成の列車が走る都市郊外の支線」とカテゴライズしてみようと考えた。記憶と知識の棚卸しをして「未訪問のところやずっと行っていないところ」を思い出そうとしたわけだ。自分の写真を振り返りながら、いままで撮っていないような写真をどうすれば撮れるだろうかと考えた。
そう考えていて、京王競馬場線のことを思い出した。いや、正直にいうとSUUMOのWebのコマーシャル動画に府中競馬場前駅と7000系電車の姿が映っていたのを見て思い出したのだ。考えたら、競馬場線には6000系電車が最後の活躍をしていた2010年夏と、引退が報じられた2011年冬に訪問して以来ずっと足を向けていなかった。
現在は平日と土休日朝と夜の線内折返し運用についているワンマン運転対応の7000系電車2両編成じたいは、高幡不動の車両基地から競馬場線に夕方送り込まれる回送列車を京王本線で何度か撮ったことがある。これを撮りに行ったときも、とあるミュージシャンのミュージックビデオに出てきたのをYouTubeで目にして思い出したからだ。
そこで週末のすでに日没近い時間になって京王競馬場線をめざして家を出た。それは、あれがああだからという理由で自粛したから……という理由だけではない。ひとが多いところに行くのも遠出ももちろん自粛しておりますが。土休日は夕方ではないと2両編成の7000系電車が走らないからだ。
■府中競馬正門前駅は住宅地のなかにある
競馬に興味のないために文字通りに「東京競馬場の正面にある」ことを忘れがちな私には、この駅はいつ来ても住宅地のなかにとつぜん現れる駅という印象を与えておもしろい。もしかしたら、開業当初はもっと住宅も少なかったのかもしれない。ただし、東府中駅からの営業キロは0.9キロメートルで、府中駅にも府中本町駅にも近いという立地のために、周囲は住宅地でも沿線住民のみなさんはそちらを利用する方も多いだろう。競馬場線は始発列車は遅く最終列車も早い。府中駅ならば優等列車も停車する。
■土休日の7000系電車2連は東府中発18時55分の列車から
■神社の境内にある踏切がいい
府中競馬正門前駅近くには、武蔵国府八幡宮の参道を横切る踏切がある。神社の境内には木が植えられているために、この周辺だけはほんのわずかに武蔵野の雰囲気を残す。ひさしぶりにこの踏切を見ていてどこかで見たことがあるような……と考えていて、近鉄南大阪線藤井寺〜土師ノ里にある澤田八幡神社境内を横切る踏切が好きで何度も通っていたことを思い出した。こういうことがないと私が見る機会がなさそうなJRA(日本中央競馬会)Webサイトを見ていると東京競馬場は無観客試合とあった。それでも競馬場線の電車は土休日の日中も8両編成なのだろうか、もしかしたら……あわよくば……などとちらりと考えていた。結果からいうとそのあたりの運用はいつもどおりのようで、土休日の日中には9000系電車の8両編成が走っていた。
前述の神社の境内を横切る踏切や、ゆっくりと走るようすを見ていると競馬場線の雰囲気はあらためて気に入ったので、しばらく通うことにした。最初に訪ねたときには中学生でこの雰囲気のよさは理解しきれず、2011年のときは真夏に小さい子どもを連れてきたので、周囲をじっくりと観察することもできなかった。だから、今回はロケハンのようなものだ。次は7000系電車が走るときに来ようと決めた。ひとも少ないしね。
なお、2021年2月現在では土休日ダイヤで2両編成の7000系電車が走り始めるのは、東府中発18時55分発の列車からだ。これは時刻表や東府中駅にある使用するプラットホームの表示を見ればわかる。2両編成の7000系電車は1番のりばから出る。