今年春の航空自衛隊入間基地飛行点検隊所属のYS-11FCの退役からずいぶんたった。私はそれ以来、滑走路沿いでカメラを向ける頻度がずいぶん低くなってしまった。私は航空機が好きというよりも「YS-11FCが好き」だったからだ。
■スーパーYSが飛ぶようすを見るたびに
さらに、それ以外に好きな航空機であるYS-11のエンジン換装形であるYS-11EAとEBが飛ぶ頻度も、そう多くないように思われたという理由もある。それでも、ときおりエンジン音が聞こえてどこかへ向かって離陸するところ、あるいはどこかから戻ってきて周回飛行をする姿を見ると、カッコいいな、撮りたいなと思ってはいた。
そこで、7月上旬の夜間訓練飛行があり、夕方になっても北風が吹いていた日にひさしぶりに滑走路沿いまで散歩して待ってみると、遠くからエンジンがかかる音が聞こえて、YS-11EAが姿を現した。
■航空機も「スナップショット的に」撮りたい
ひさしぶりに滑走路脇に立ち、あたりの草の香りを嗅ぎ、遠くから風に乗ってくるエンジン音に耳をすまして望遠レンズをつけたカメラの設定を確認して、ピントを合わせてシャッターを切るというのは、スポーツを楽しむような感覚もある。いろいろな「撮らない理由」をつけていないで、カメラはつねに握っているほうがなにかとおもしろいよなあ、などとあたりまえのことを考えた。
そして、目の前でタキシングをして離陸し、どこかへ飛び立っていくYS-11EAの姿はかっこいい。数ヶ月のあいだカメラを向けないでいるべきではなかったかも。ただ、平日であっても滑走路ぞいの定番位置の撮影者があれがああなってから非常に増えたので、人出の多い場所をとくにあれがああな時期には避けていたから、という理由もある。
まだ7月で日照時間が長い時期ではあっても、曇天では暗い。できれば日没するまえにYS-11EAが戻ってきてくれるとありがたいなあ、と考えていたところ、日没まえに周回飛行を始めてくれた。
周回飛行を撮りながらも考えた。列車の撮影と同様に、スナップショット的にうまく撮ることはできないかなあ、と。スナップショット的な航空機写真とはどういうものか、と説明しづらいな。私にはそれは「超望遠レンズを用いて順光で航空機の全体像をきちっとねらった写真(いわゆるスポッター写真)」ではない写真という程度の意味なのだが。そういうきちんとした写真は得意なみなさんにおまかせしたい。私自身は機体よりも情緒を写したいのだ。
■冬の空のもとでまたいろいろねらいたい
などと、「自分だけの写真を撮りたい」などと一見すると高尚なことを考えつつ、自分の腕前がまだその域に達していない。所有しているレンズと「自分の絵心の引き出し」の少なさにより、撮影ポイントの数がどうしても限られてしまうというのが、私の航空機撮影の弱点だと思っている。機材の不足は知恵でなんとかするというのが私のポリシーではあるけれど、言っているわりには技術レベルがまだまだなんだよな。だから、空模様によって絵柄に変化をつけられる季節に撮るのが好きだ。冬の寒さのほうが夏の暑さよりも私には好ましいし。
本稿を書いていた10月26日にも、また滑走路沿いを歩いた。YS-11EAは私がいるあいだには飛ばなかった。ただ、空模様がドラマチックで夏よりもずっとよかった。日照時間が短く夜間訓練飛行は撮影しづらくなっても、航空機撮影に向くシーズンもむしろこれからの季節かもしれないね。