■黒塗装になった秩鉄デキ201号を見たかった
先日のエントリーで「広瀬川原車両基地まで、SLパレオエクスプレスの入庫シーンを撮るために」行ったと書いた。その「入庫シーン」のなかでも私が重視しているのは入れ替えに用いられるデキ201号を撮ること。2020年1月に五輪列車牽引に向けて黒い塗装に変更されて以来、その姿を見ることが私にはデキていなかった、いやだから、できていなかった。
秩父鉄道デキ200形電気機関車はみなさんもご存知のように、空転を防止して粘着力を向上させた独特の構造の台車を持つことが特徴で3両が製造されたが、その効果はあったものの複雑な構造ゆえに保守に苦労があることなどから、結局はほかの機関車のほうが重用され、のちに2両は三岐鉄道に売却された。三岐鉄道に売却された車両は先に廃車解体されて、いまでは秩父鉄道に残されたデキ201号1両が残されるのみ。運用もほぼ決まっており、鉱石貨物列車の先頭に立つことはほぼない。シーズン中の休日に運転されるSLパレオエクスプレスの、広瀬川原車両基地と熊谷のあいだを往復する出入庫回送列車の牽引に用いられることがおもだ。ときおり、イベントなどで臨時列車の先頭に立つことはあっても、その機会はそう多くはない。
2020年の塗装の変更のことは知っていた。だが、いろいろとあれがああだった。基礎疾患を持つ私は人出の多くなるイベントを避けていたので、塗装変更後のデキ201を私は自分の目で見たことがなかった。いろいろとあれへの認識がことなる方も数多く参加されるであろうことが予想できる場所への参加は、ご遠慮させてもらっていたのだ。
2012年9月に撮影した緑色だったころのデキ201 12系客車に合わせた色だったはずだから 12系客車のほうが先に塗装変更がされたのだっけ |
それまでの12系客車に合わせた赤みがかった茶色に金色の裾帯という姿を、私は好ましく思っていた。だが、はじめて見る黒塗装とデッキの黄色い警戒塗装はかつての東武鉄道の電気機関車を彷彿させて、これはこれでシブくてカッコよく思える。鉱石貨物列車にも秩父鉄道の12系客車にもよく似合う。緑色の塗装の時代にELパレオエクスプレスの牽引機になっていた姿を撮ったことがあるが、この色でも似合うはず。
■朝の出入庫ではデキ201が先頭に立つ
前述のように、SLパレオエクスプレスの運転日に広瀬川原車両基地と熊谷のあいだの送り込み回送の牽引にデキ201は用いられる。熊谷には転車台がないからね。
そうして、SLパレオエクスプレス5001列車が午前中に出発してしまうと、デキ201は熊谷の留置線に行き昼寝を始める。高崎線の列車からは見えるものの、駅南口の駐車場からは見づらい場所がその所定位置だ。
2020年1月までの茶色塗装のデキ201。 高崎線車内より撮影した熊谷駅留置中のようす |
夕方にSLパレオエクスプレス5002列車が熊谷に到着し、乗客を降ろすと留置線で昼寝をしていたデキ201は、「はいよ、おつかれちゃーん」とひとりごちながら、まず大きな伸びとあくびをしてからそのそのと動き出し(妄想)12系客車の下り三峰口方に繋がれて、SLパレオエクスプレスの入庫列車を牽引して広瀬川原車両基地へ戻ってくる。
日が短い時期だと入庫は日没どきなので、二灯の前照灯を灯すようすがじつに……私にはその……萌え……そういうところに私にとっての「鉄道シーンにおける萌え」があるみたいね。
広瀬川原車両基地では、まず所定位置まで進んで上り熊谷方に繋がれていたC58363を切り離す。その後ふたたび前進して、12系客車をつないだままいったん大麻生方へ。転線してから次に12系客車を所定位置まで押し込んで切り離してから、デキ201はふたたび大麻生方へ単機で向かって転線し、熊谷方まで構内を走る。
■雑然としている場所で撮るには
熊谷方で再び転線してから、デキ201はゆっくりと構内を走って所定位置に向かう。そうして停車したらパンタグラフを下ろしてその日の仕事はおしまいだ。その作業が終わると、こんどはC58363が熊谷方にある転車台に向かって方向転換をする作業が行われる。
C58363とこのデキ201の入庫のようすはなんども見に行っていたので、作業の一連の流れは鉄道業務に関して素人の私でもわかった。先日ひさしぶりに見ていても、数年前と作業のようすは変わっていなかった。だが、それをうまく写真にできるかどうかはまたべつでしてね。ははは。
車両基地構内は架線柱や構内灯が林立し、ほかの留置車両などもいるので、そのあいまをちょこちょことぬって走るデキ201とC58363を撮るのは、私には習熟が必要だ。立ち位置やレリーズのタイミングを、画面四隅にまで注意をはらいながら計算する必要がある。また、薄暮の時間に撮るには、黒い機関車でもあるので露出の設定をどうするか(AEで撮るならば露出補正をどのくらい効かせるか)、などという試行錯誤も。昼間撮るのもカッコいいけれど、夜の機関車は雰囲気がいいから好きなのだ。
手ぶれ補正機構のある高画質なズームレンズと高感度耐性の高いボディなら楽なのだろうな。だが、私の使いたい自前の機材は手ぶれ補正機構がないので。だから自分の知恵と工夫でなんとかするほかない。そして撮影の難易度が高いほうが闘志がわくだろ!
まあ、そんなことカッコいいことをいうくせに、まだまだ腕前があれなんですよ。そして、以前は何度も通って覚えていたのに、数年ぶりに撮ってみると、以前見つけ出した「自分にとって好ましい立ち位置」をすっかり忘れていたし。いやあ、8年前のほうがうまいわ。残念ながら正直に認めざるを得ない。画面四隅まで冷静に観察できていなくて、レリーズのタイミングもよろしくない。
ともあれ、黒いデキ201自体は予想以上にシブくてカッコいいことはわかった。あとは、それをうまく撮るのは私自身の腕の問題だ。まだだ、まだ終わらんよ。カメラやレンズの性能が、戦力の決定的差ではないことを見せつけてやるには、しばらくはなんどか通ってみるほかなさそうだ。私はまたなにか見えない敵と戦っているね。
■夜の帳は降りたものの
デキ201の入れ替えが終わり、C58363が転車台に向かうころには空がすっかり暗くなってしまった。C38363を撮るのはそこでもうあきらめたのだけど……カラスの飛び交うようすを撮っているうちに、下り方向へ向かう列車に乗り遅れた。暗くなってしまったけれどせっかくなので、下り方向でもう少し撮ってみようと思っているのだ。
NikonDf/AI Nikkor 85mm F2S/RAW/Adobe Photoshop CC