さる2023年1月24日(火)より、西武池袋線を走る2000系電車2069編成が、「西武鉄道創立110周年記念トレイン」として営業運転入りしている。2023年1月19日づけ西武鉄道ニュースリリースによると、「当社の前身である武蔵野鉄道を代表する車両『デハ5560形』をモデルカラーとして塗色変更した」のだそうだ。
阪急や能勢電のマルーンには似ていないね |
■武蔵野鉄道デハ5560形とは
武蔵野鉄道は1912(明治45)年5月に設立され、1915(大正4)年に池袋〜飯能を開業させた、現在の西武池袋線の前身となる鉄道だ。当初は蒸気機関車が客車と貨車を牽引していたが、1922(大正11)年に池袋〜所沢を、1925(大正14)年には飯能まで全線電化した。さらに、1929(昭和4)年に吾野まで開業させた。
デハ5560形はこの吾野への開業を見込んで、1928(昭和3)年に川崎造船所(のちの川崎重工業→現在の川崎車両)に発注された電車だ。鉄道ファン用語である「川造形電車」というと屋根が深く窓の上下が小さい、厳しい感じの電車を想像する。だが、デハ5560形は観光客輸送を目的として2扉クロスシートを備え、側面窓が幅1,100ミリと大きくとられ、窓四隅は優雅な曲線を描いたデザインにされていたそうだ。「関東一のロマンスカー」であったと保育社カラーブックス506『日本の私鉄2 西武』にもある。
まだつややかだ |
■意外と黒っぽい
「なるほどなるほど」とプレスリリースを読み、Twitterにも目撃情報がアップされていたのでそれを見たうえで、西武池袋線に乗った週末の夕方にアプリを見ていたら、少し待てばこの「西武鉄道創立110周年記念トレイン」に遭遇できることがわかったので、途中駅で降りて待った。
そこへやってきた「西武鉄道創立110周年記念トレイン」は日没の薄暮の時間に見たせいなのか、思っていたよりもずっと黒っぽいというのが第一印象だった。阪急電鉄と同じマルーン塗装で、正面に銀色の飾帯がある能勢電鉄1500系電車の先頭車化改造車に似ているのかも……と予想していたが、実写を見ると阪急・能勢電のような赤みがないために、少なくとも私には似ては見えない。
しかも、塗装変更直後でまだつやがあるためか、黒っぽさも手伝ってじつに重厚で渋い感じ。似合ってもいると思う。似たデザインの9000系電車がいろいろな塗装でいることから、黄色以外の塗装でも似合うことは想像できた。
オリジナルの武蔵野鉄道デハ5560形はもちろん写真でしか知らない。けれど、戦前の「川造形」電車はどっしりとした印象だったそうだから……同じころに川崎造船所で作られた上毛電気鉄道デハ101号からがんばって想像してみるものの、こういう黒っぽいぶどう色だったのなら、デハ5560形も相当どっしりとした重たげな印象の電車だったのではないか。
太平洋戦争より前の鉄道車両も自動車も、軍用車両を除けば黒かぶどう色がおもであったはずだ。なおかつ木造で無塗装の家並みが広がっていたのだろうから、少なくとも戦前の鉄道風景はいまとはことなっていたのだろう。モノトーンというか、地味に見えたのかもしれない。塗料の進化の歴史などをひもとくと想像できるかも。
8両編成なんだよね |
■どうすればカッコよく撮れるか研究しよう
薄暮の時間にねらったのは意図的ではなく、たまたまだ。だが、まだ太陽が低い時期でもあるので日中だと影が中途半端にかかると濃くてうるさい感じがしただろうから、薄暮の時間に撮ったことは正解だったろう。もともと薄暮の時間が好きだからという理由もある。
この色でかっこよく撮るには、研究が必要かもしれない。8ビットJPEGで「なんとなくAE」で撮るとものすごく露出オーバーになるだろう。JPEG一発撮りはスキルがないと無理なのではないか。露出補正と階調の補正が必要だからね。
薄暮の時間に撮れたのは運がよかったのかも |
茶色い秩父鉄道デキ105号や、C58363をはじめとする真っ黒な蒸気機関車を真夏の正午ごろに撮りづらいというのと同じだ。シャドー部分がつぶれて見えにくくなるから。そして、停車中の列車の形式写真として撮るのと、走行中の列車を風景の一部として撮るのでは露出や階調の調整は変えるべきだ。
こういう黒っぽいものを順光で撮って、かつコントラストを高い絵作りをするのは、いちばんおすすめできない。
効果的に見える背景のある場所や、光線状態を考えることも必要かもしれない。春になってあちこち芽吹いてきてからのほうが撮りやすいかもしれないし。ちょっと研究してみますか。
【撮影データ】
Nikon Df/AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED/RAW/Adobe Photoshop CC