用務でめずらしく東武野田線沿線にでかけた。TOBU URBAN PARK Lineか。でも、長いから野田線と書くからね。
野田線に乗るのは10年くらいぶりだ。10年ほど前に沿線在住の友人宅を訪ねたときに乗った。それ以前には記事にした8000系8111編成を撮影したとき。そしてどちらのときもたまたま、大宮から七里までしか乗っていない。椎名誠の小説のタイトルのパロディで「哀愁の町」などと書いた(椎名誠の小説の舞台は小岩だが)、沿線のいかにも国道16号線沿いの郊外の町並みは気に入っている。そして大宮は毎月何度か通るので列車の姿は目にしている。
それなのに、私はもう半世紀生きていて首都圏在住の鉄道ファンであるにも関わらず、野田線のほとんどの区間に乗ったことがなかった。でも、そういうのはもう恥じる気はしないよ。仕方がない。私は趣味の守備範囲を広くできないタイプなのだもの。特定の狭い分野だけ深く追い求めたい。
ただし、なにかを書くのにまったく調べもしないようなことはしない。三点リーダー(…)を読点で「、、、」とは書かない。なぜなら、自分はすでにずいぶんまえから若者ではないから。それに「文頭なので」も「ら抜き言葉」も使わない。たとえば「見れた」ではなくて「見られた」あるいは「見ることができた」だぜ。
■都心に戻ろうとしたのだ
さて、今回はTokyo University of ScienceのNoda CampusのあるCanal Station周辺に用事があったので、柏から大宮方面へ乗った。欧文で書いた意味はあまりないね。10年ぶりに乗ってみて驚いたのは……(ここ注目な。三点リーダー「…」は2つ重ねて「……」と使うのだよ、ワトソンくん)8000系電車は意外とまだ残されてはいても、主力はもはや60000系電車だということ。
移動するためにこのあとで乗った列車はすべて60000系だった。対向列車で8000系も10000系も見たのに。
■8111編成と離合することがわかったのだ
Canal Stationが最寄り駅の用務先で用事を済ませてから、都心に戻ろうとした。柏から常磐線各駅停車でもいいが、むしろ東武伊勢崎線……TOBU SKY TREE Line(東武晴天塔線)でしたっけ……のほうが便利そうだ。
そこで、サトーココノカドーのある(と想定されている)春日部をめざした。
雨あがりの朝で空が真っ青だ。気温も高くてコートを着ていると汗ばむほど。いい天気だと思いながら、なにげなく……ほんとうになにげなく、野田線の本日の運用を調べてみた。すると8111編成が大宮から船橋に向かって下ってくることがわかった。
自分の乗っている列車とは春日部あたりで離合しそうだ。
つまり、春日部の手前で待てば8111編成を見ることが確実にできることがわかった。天気もよく、カメラも持っていて、列車を2本遅らせる程度の時間の余裕はある。
そこで、野田線で何か所かある鉄橋のうち有名な場所に行ってみたというわけだ。
■すぐに都心に戻って仕事をしたのだ
天気がよいからか平日でも沿線でカメラを構えているひとたちがいた。ビジネススーツで短靴の私がいちばん何者かわからない感じだったかも。
先着されている方からいろいろと教わって、ポジションとアングルを決めて10分ほど待った。すると、大宮方面からインターナショナルオレンジとロイヤルベージュのツートンカラーをまとった8111編成が姿を現した。ほんとうに走っているんだ、という気持ちになった。
全般検査から出場して間もなく、ていねいにあつかわれているのか8111編成はまばゆいほどぴかぴかだった。LUMIX GX7 Mark IIの電子ビューファインダー越しに見るその姿はじつにまぶしかった。
私にとって東武8000系電車はセイジクリームの姿がなつかしく、それ以前のこのツートンカラーは書籍の中でだけ見たことのある存在だった。子どものころに親の書棚に野田線沿線についての郷土史などについて書かれた昭和40年代発行の古い本を見つけ、そのなかにいまよりも網点の粗い印刷でも非常に彩度の高いオレンジ色とベージュの塗装の電車を見て、非常に違和感を覚えたのが最初の「出会い」だ。
救命胴衣や自衛隊の飛行艇US-1にあるようなあざやかなオレンジ色と、濃いめのベージュという取り合わせはいま見てもスマートという感じはしない。正直にいうと垢抜けないとは思う。だが、昭和30年代から40年代にはどう見えたのだろう。ものすごく奇抜に見えたのではないか。そういう想像をしてみるとおもしろい。
撮影後にすぐに駅に戻り、やってきた大宮行き列車に乗りながらそんなことを考えた。春日部で中央林間行き列車に乗り換えて次の訪問先へ向かった。ひさしぶりに趣味の写真を撮って足取りが少し軽くなった。いそがしいけれど、乗り越えてみせるぞ、なんて気持ちにもなった。
【撮影データ】
iPhone 7 PLUS, Panasonic LUMIX GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH./RAW/Adobe Photoshop CC 2024