拝島駅に到着 |
【おことわり】中央快速線と八高線の直通列車は2022(令和4)年3月のダイヤ改正で廃止されました。記事内容は2020(令和2)年7月の記事初出時のものです。ご注意ください。
■「ふだんは走らない路線を経由する」列車にぐっとくる
中央快速線と八高線には朝晩に直通列車がある。平日朝は高麗川発東京行きが2本、夕方に東京発高麗川行きと箱根ケ崎行きが走る。箱根ケ崎の駅名と瑞穂町が用いる地名の表記は箱根「ケ」崎みたいね。キ「ヤ」ノンや富士フ「イ」ルムみたいなものか。休日は朝の高麗川発東京行きと夕方の東京発高麗川行きが1本ずつ設けられている。東京と立川のあいだは10両編成で中央快速線を走るのはほかの列車と変わらない。ところが、下り列車に関しては立川と青梅線西立川のあいだは「通常の路線を走らないこと」におもしろさを感じるひとにだけ、この列車はちょっぴり楽しくなる。それは青梅短絡線と呼ばれる中央線と南武線を結ぶ、通常の青梅線の立川発の下り列車が走らない路線を通るから。この青梅短絡線は青梅電気鉄道ではなく南武鉄道が建設したという。かつて青梅線を走っていた石灰石輸送の貨物列車は、列車の運行頻度の高い中央線を立川駅構内において平面で通過しないですむように、この短絡線を経由していた。
石灰石輸送が列車で行われなくなったいまでも、こうした中央線から青梅線を直通する下り列車や南武線と青梅線を直通する列車に用いられている。「米タン」と一部でよばれている安善から米軍横田基地へのジェット燃料輸送列車や豊田車両センターからの出庫列車にも用いられている。
なお、念のためにいちおう説明しておくけれど「米タン」の読みは「べいたん」だ。おそらくは「米軍燃料輸送タンク列車」の略だろうと思われるからだ。そういう政治闘争もむかしはあったらしいよ。だからけっして「こめたん」ではないはず。
もしかしたら、萌えキャラかなにかみたいに「べいたそ」「こめたそ」などと呼んでみるのもいいかもしれないぜ。拝島駅の駅頭や青梅線の沿線でカメラを構えている同業の方に「『こめたそ』すか?」などとたずねてみるといいかもしれない。相手が「ちょ、おま」などと吹き出しながら訂正してくれるやさしいひとだといいね。
「拝島駅で米タンを『こめたそ』と呼んでいるやつがいた。マジウケるプークスクス」などと、思いついたことをなんでもTwitterに書いちゃうツイ廃さんが相手だと拡散されかねないから、かならずしもおすすめはしかねるけどね。
小学生のころに、この短絡線を通過する下りの石灰石輸送列車を見て興奮したことがある。いま思えば奥多摩行きの返空列車だ。立川の南武線ホームに停車していたEF15牽引の貨物列車が下り方向に向かって走りはじめ、私が乗っていた下り中央快速線の列車とわずかに並走した。まもなく貨物列車は勾配を登って、中央線の線路上に設けられたオーバーパスで自分の乗る列車の頭上を走っていった。完全逆光で汚れた客扉のガラス越しにそのEF15に、持っていた110サイズのカメラを向けてシャッターを無我夢中で切った。すでにテツな小学生だったのに、青梅短絡線のことを知らなかったので「南武線からの青梅線への貨物列車の入線方法」がわかって感激したから。そのネガを同時プリントに出したらぶれぼけだらけでも、「写っていた」ことに感激したものだけど、あのものすごいぶれぼけだらけのEF15の写真はどこに行ったかな。
どういうことかというと、分割する編成のうち後発する後ろの6両編成のほうをわずかに後進させて編成を分割するということ。先に発車する高麗川行きの前の4両編成が動くのではない。何度か乗っていたくせに分割するところをきちんと見ていなくて、おそらくスマホいじりでもしていた私はそのことを知らなかった。電気連結器を備えるE233系電車はジャンパ栓の切り離し作業はしないので、線路上に降りて作業をする係員がいるわけではない。
そんな楽しい記憶があるので、中央快速線と青梅線、五日市線がE233系電車に置き換えられても、この青梅短絡線にちょっとした思い出を感じさせるのか、いまでもここを通過する列車にときどき乗っている。以前、記事にしたこともある。自宅に帰るには大回りだしよけいな時間がかなりかかるのに。そのへんはもうあれだ。ヲタだから。
■拝島で分割するところを見ていて……あれ
大げさな言い回しをすると「昨今の情勢を鑑みて」ですね……ほら、あれがなんでしょう。「列車に乗って遠くに行きたい」気分を多少なりとも紛らわせるために、自宅近辺ばかりをうろうろしている。そんなある夜にこの列車に拝島で遭遇したので、編成を分割するところを見ていた。
まず、この列車は拝島で五日市線のホームのある1番線に入る。八高線ホームはあいだに青梅線をはさんだ4番線と5番線だ。まずこのあたりからヲタ的には「通常の列車とはことなる」おもしろさがある。列車の到着直前に駅員と係員氏が1番線の4両目と5両目のあたりに姿を現す。
列車は1番線に停車していちどすべてのドアを開ける。そのあいだに係員氏が武蔵五日市行きになる後ろ6両編成の武蔵五日市方の運転室に入る。そして、この後ろ6両のドアを一度閉じる。このあたりで、ヲタではなくても鉄道になんとなく興味のある方でも「もしや」と思われるかもしれない。
右の前4両が高麗川行きで、左の後ろ6両が武蔵五日市行き |
どういうことかというと、分割する編成のうち後発する後ろの6両編成のほうをわずかに後進させて編成を分割するということ。先に発車する高麗川行きの前の4両編成が動くのではない。何度か乗っていたくせに分割するところをきちんと見ていなくて、おそらくスマホいじりでもしていた私はそのことを知らなかった。電気連結器を備えるE233系電車はジャンパ栓の切り離し作業はしないので、線路上に降りて作業をする係員がいるわけではない。
分割作業が完了すると、駅員氏が「開(かい)ひ」と点呼と指示を行い、一度ドアを閉じていた武蔵五日市行きのドアが再び開く。高麗川行き編成に車掌が、武蔵五日市行き編成に運転士が乗り込んで出発準備をし、それらがすむと高麗川行きがまず出発する。そして、武蔵五日市行きはそれから数分待ってから出発する。
ほう、先発する編成のほうを動かすのではないのか……ということをおそまきながら知って、そのようすをうまく写真にできないかなと考えて拝島を後日再訪し、青梅線ホームからそのようすを写したのがこの一連の写真だ。
私はブログ記事を書くにもなにか参照できるものはないかと必ず探し、仕事の原稿を書くときと同じようにできるだけ裏とりをする。仕事をするうえで身につけたルールも守るように心がけて「文頭なので」と「ら抜き言葉」も使わないし、「こと」「とき」「もの」は開く。用字用語の統一も気にしてゆらぎのないように気をつけ、「使用させていただく機会をいただく」などという重複が多い敬語表現も行わないようにして、公開後もしつこく校正と加筆訂正をする。よけいな文字列が見えるな。
そのために少しは裏取りをしたくてあれこれ検索をかけてみると、この編成分割の話は※フ※知※袋にもあった。あそこにもたまにはまともなものもあ(以下略)。土休日に走る新宿発の奥多摩・武蔵五日市行きの『ホリデー快速おくたま』もこれと同様なのだろう。
ええと、私の身近なところでほかに分割・併合する列車というと、成田エクスプレスと熱海での特急『踊り子』の分割併合だろうか。それ以外は西武鉄道の秩父鉄道直通列車くらしかいまや見当たらない気がする。新幹線は私にはあまり身近さが感じられないのであげていない。
ただし、西武鉄道の場合は横瀬でも下り三峰口行きと長瀞行きの編成分割のときには、どちらの編成も小移動させていないようだ。無意識のうちにそれに慣れているので、私にはJRのやり方が「なるほど、そうなのか」と思われておもしろかったのだろうか。もちろん鉄道会社や車両、連結器の形状などもことなるので編成の分割のさせ方がことなるのは、おかしいことではない。
書きながら検索をかけてみると、熱海での特急『踊り子』も後ろ側の編成を修善寺行きにしてこれと同じように後発させ、後ろに小移動させて分割作業を行っているそうだ。修善寺行き『踊り子』を伊豆箱根鉄道以外できちんと観察したことがなくて、そんなことを考えたこともなかったよ。ガチ勢のみなさんには笑われそうだ。まあ、いいのさ。JRの列車はこうやって編成を分割するのかあ! おもしろいなあ、というささいな喜びをいまさら得たので記事にしたしだい。
【使用機材】
Nikon Df/AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G(Special Edition)/RAW/Adobe Photoshop CC 2020