2021年4月11日日曜日

【上信電鉄撮影記事2016-2017】上信200形電車の思い出と写真のページネーションのこと


■上信電鉄にまた乗りに行きたくて
先週末にひさしぶりに上信電鉄の電車にたくさん乗ったのは、とても有意義だった。とくに精神衛生上の意義があった。もっとも、遠くまでローカル列車で揺られたいという気持ちはそれ以降にもつねに抑えがたくあるから、ちょっとしたガス抜きになったというくらいだろうか。先日の訪問の際には曇り空で小雨が降っていたので、明るく晴れた日にまた訪問して沿線の山々の淡い新緑の木々を見たい。列車に乗りたいし、好ましい場所があればそれは絵にしたい。

これは鉄道車両を本気で撮りたいというのとは少々ことなる。行けばもちろん撮るだろうけれど……。どちらかというと、列車のある好ましい風景を眺めたいし、それをつけることができれば写したい、という感じ。自分にとっては、上信電鉄沿線には好ましい情景を見つけることができるから好きなのだ。いずれにせよ、何度出かけてもすぐにまた訪問したくなってしまう。

ただし、春先の気温の大きな変化にはいつもまいらされる。うっかり薄着のまま外出してしまいひどい風邪を引くことを大人になってもこの季節に繰り返している。風邪をこじらせて数日間入院したことも。だから、日々濃くなっていく新緑を見ていると、それを写真にしないことは惜しい気がして焦燥感を覚えはするものの、時節柄なおのこと注意深く行動しないといけないだろう。いまは呼吸器疾患に罹患するのはいつもよりも強く避けたい。

■200形電車が恋しい
さて、2021年4月現在の上信電鉄の主力車両はどうみても700形電車だ。行くたびに数編成が運用入りしているのを見る。それを500形、さらに自社発注車両である1000形、6000形、7000形が補完しているというところだろうか。せっかくJRから購入した車両であるからか、習熟もかねてだろうか、重点的に用いられているように見える。700形は1M1T(クモハ-クハ)で動力車も1両で済むから、おそらく消費電力は抵抗制御車であっても動力車が2両(クモハ-クモハ)の1000形、6000形、500形より少ないはずだ。いちばん消費電力が少なそうなのはVVVFインバーター制御で1M1T編成の7000形だろうね。

700形は150形と200形を代替するために導入された。したがって、ぶどう色のデハ204、緑ストライプのデハ205、冷房改造されてデハ251と組んでいたクハ303、ぶどう色のクハ304は運用離脱して、高崎検車区と上州福島駅の側線に留置されたままだ。上州福島のクハ304はとくに、見るたびに塗装が劣化していくのがわかる。

いっぽうデハ251はデハ205の代わりに2020年に事業用に整備されたようだが、私は工事臨時列車を見に行くことはできていない。デハ252とクハ1301が動いているところは2019年秋に数回見たきりだ。だからどちらも高崎検車区に留置されている姿しか見ていない。単行での旅客運転がなされるならばぜひ目にしたい。

200形電車はほかの電車の冷房化が進められてからは、冷房を用いない冬期に走るのみだった。だから、冬の訪問がいつも楽しみだった。2016年2017年年末年始に遭遇できたときにはうれしかった。


■架空の「旅行記取材」のつもりで常時カメラを持っている
上信電鉄沿線を訪問するときだけに限るわけではないけれど、都市郊外を走る地方私鉄やJRの支線を訪問するときは、私はいつも「架空の旅行記」を書くつもりで往路から家に帰宅するまでに、集中力がどうしても途切れた場合を除いて、ずっと何かを写している。さらに「どういうふうにページ構成をするか」もできるだけ考えながら撮る。

じっさいにそれを本にするとは限らないが……たまにそうやって撮ったものを編集して電子書籍で売っている……あ、すみません。このくだりはステマではなくてれっきとした広告です。これらの写真を収めたKindle電子書籍『ぼろフォト解決シリーズ041 プロの撮影思考とテクニックを徹底解説する Nikon D7200で上信電鉄を撮る!』もぜひご一読くださいませ!

そう、私はいつも旅行記の取材のつもりで撮影をするのだ。ねらう被写体も可能ならばいろいろな撮影距離やアングルで複数以上撮影したい。それを見せるときに並べて変化をつけるためだ。同じ場所で同一アングルで撮った写真を並べても見飽きるし、数枚でストーリー展開をしたいからだ。つまり、組写真になるように意識して撮影しているということだ。

だから、行きの列車から見た空模様なり、路地の野良ねこ、変色した看板、いい感じの食べ物、帰り道の夜道などのごくありふれたものでもなんでも、絵になると思えば欠かさずに撮る。より正確には絵になりそうだと思って目をつけたものは、絵になるようにつとめて必ず撮る。列車を撮りに行くのでも列車以外のもののほうをむしろ多く撮っていることもある。仕事で人物を撮影する際にも、人物以外にもあれこれ写しておく。フィルムカメラの時代にはそういうことはしづらかったから。当時の反省でもある。

これは、これらを組み合わせたほうがページネーションをしやすくなるかもしれないというだけではない。被写体を注意深く観察し、試行錯誤しながら撮影する訓練でもある。どんなものでも写せるようでありたい。だから、なにを撮るにも手を抜かずに露出や光線状態、構図、適切なホワイトバランスと絵作りに関する設定をかなりしつこく注意する。ファインダーを覗かなくても露出もだいたい合わせておく。光線状態が好ましくないならば写さないこともあるかな……。

とにかく、カメラを持つときはいつも虎視眈々と被写体を注視している。ぼんやりと「写真散歩」をしてただ眺めているのではない。いつでもカメラを向けてシャッターを切れるように準備し、どういう画面構成ならば絵にうまくできるかを注意深く観察しているのだ。

そして画面内には余分なものはできるだけ配置しない画面構成を心がける。「それは画面のなかにある必然性はあるのか」と考えるからだ。意味がない画面の傾きも避ける。だから、不注意でよぶんなものが画面に入っていると自分に腹を立てる。

だって、なんとなくカメラを持っていると「なんとなく撮った」写真にしかならないもの。なんとなくカメラを向けて「うまく」「絵になるように」撮ることは私にはできないな。ただしなんとなく撮った「ように見せる」絵作りをしてはいるけどね。



■200形のシンプルな感じが好きだった、のかも
ここに掲載した4枚は、鉄道ファンのみなさんには列車の編成がはっきり写っていないと好まれないチョイスだろう。だが被写体への距離感に差を設けて、さらにストーリー展開というか起承転結を考えて「旅行記に添える写真を4点見開きで掲載するなら」というつもりで選んだ。「冬の上信電鉄沿線のんびり訪問記」という感じにしたいので、列車を前面に出すことのないシンプルな絵柄のものを選んだわけだ。これはもしかしたら、編集とは編集者の意図によりどうにでもなるということかもしれないな。

縦位置の写真は見開きにはできないので片ページ断ち落とし、対向ページに文字テキスト1段450文字くらいだろうか。いつもそういう「仮想の記事」を趣味でも考えているのは……職業病だ。ただし、4枚目の写真は仮に紙の本で見開きにすると列車のヘッドライトがノド……見開きの綴じの部分にかかってしまうので、列車の前頭部分がもう少し左にあるカットを選ぶべきだ。

そうはいいつつも出自がヲタなので、列車を主役に写さないときでもカッコよく写したいし、好みの列車を画面に配置したいという、非常にめんどくさい欲求はつねにある。

上信電鉄200形はコーラルレッドでもぶどう色になってからでも、塗装と造形が大変シンプルであるところが好ましい。少し前の上信電鉄の電車は派手な広告ラッピングが施された車両も多かったからなおさらだ。さらに、西武所沢車輌工場製の2次車の側面デザインやインテリアは西武鉄道601・701・801系電車でなじみがあるものと同じだったし、MT46が原設計の主電動機がかなでる走行音も「昭和の西武新宿線」を思い出させて好きだった。

できれば、まだまだ写したかったなと思う。とはいえ冬のあいだに何度か乗ることも撮ることもできたのだし、走らないものはなんともならない。だから、いまでも残されている250形、1000形、6000形はもっとうまく絵にしたい。動画も撮ってみたいんだよな。そう思うと線路際に元気いっぱいにでかけないといけないな。

(写真はいずれも2016年から2017年冬に撮影。再掲載です)
【撮影データ】
NikonD7200/AI Nikkor 20mm f/2.8S, AI AF Nikkor 24mm f/2.8D, AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW/Adobe Photoshop CC