7月の終わりは17時近くなってもまだ明るい。熊谷から羽生方向に電車に乗って降りた駅では、下校途中の高校生諸君やサラリーマンのみなさんが改札口で駅員氏とあいさつしながら家路につく。まだ明るいのに、近くのスナックからは調子外れのカラオケの声が聞こえる。都市近郊の町のどこにでもあるような夕方の情景だろうか。近くの喫茶店のウインドーに「フライ」という文字があってひかれる。
■1010編成がカーブを曲がって現れた
私はホームに入って電車を待っていた。すると踏切の警報機が鳴り始めて、遠くから警笛が聞こえる。そこへ秩鉄標準色の1010編成がやって来た。西日を浴びて白い車体がまぶしい。
■いまごろになってこの塗装も好ましく思えるように
1010編成は全般検査入りしてきれいに再塗装されたものの、一時期は機器の不調もあったようだと伝えられた。最近はよく動いているところを見かける。昔はこの秩鉄オリジナルカラーよりも登場時の塗装を好ましく思っていたのに、いまとこうして見ると穏やかでなかなかいい色合いに思える。印象なんていうものは移ろいやすい自分勝手なものだ。そんなことを考えながらやってきた列車に乗り込んだ。■輝く線路を眺めているだけでもいい
さて、1010編成に乗り込んで下り方向を目指す。しばらく乗り心地を堪能することにした。行田市内から熊谷市内を抜け、深谷市内を通り秩父へ向かって1010編成はひた走る。75km/hで快調に飛ばすようすを車内からときおりカメラに収める。何があるわけでもない。あえていえば、輝く線路が見えるだけ。でも、そんな景色が好きだ。
【撮影データ】
Nikon D2X/AI Nikkor ED 180mm F2.8S/RAW/Adobe Photoshop CC