2015年6月11日木曜日

【JRE185系PETIT撮影記事】「スワローあかぎ」にて


■185系電車に乗りたくなった
高崎線の特急列車は昨年(2014年)春のダイヤ改正で、使用車両が基本的には651系に置き換わったことは、ここにお越しになる方で鉄道趣味仲間の方にはご存知のとおり。わずかに、新宿発着の『スワローあかぎ』号には185系が充当され続けている。少し遅めの時間に都内に出る私は、しばしば朝の新宿行き2号や、夜の前橋行き13号を目にし、そのつど「なつかしい国鉄型車両のブロワ音」に耳をそばだて、乗ってみたいなあと思っていた。

毎日、高崎線で定期運用されていたころは、「しょせんは『新特急』」「なんとなく微妙」などと思っていたくせに。だが、斜めストライプ塗装が復刻しつつあることや、高崎線に限らず首都圏から国鉄型車両がみるみると数を減らしているのであれば、身勝手なもので気にはなる。

そこで、上毛電気鉄道のデハ101を撮影に行くために前橋で前泊することにして、新宿発の『スワローあかぎ』13号に乗ることにした。日中いた場所を考えると上野発の列車のほうが便利ではあっても、185系電車は新宿まで行かないと来ない。その前夜、目白を通過する185系電車をたまたま見たことも「お、乗るか!」という気持ちを私に思い起こさせた。



■夜の前橋駅前で食事ができない問題
東京駅に近いJR駅で指定券をあらかじめ買い、新宿へ向かう。駅構内の売店にはめぼしいものは見当たらない。けれど前橋着は23時過ぎだから、食事をしておかないわけにもいかず。前橋駅前には夜に食事をできる場所は限られているし、23時着では居酒屋にも入れないだろう。そこで、わずかに残っていた幕の内弁当と缶ビールを買い求めて列車に乗り込んだ。

私は子どものころは、幕の内弁当が好きではなかった。各地の名産弁当があるならば、そちらを選びたいと思っていたからだ。弁当の漬物が好きという子どももそう多くはないよね。それが、酒のあてとして考えると適度におかずがある。缶ビールと幕の内弁当なんて、もうおじさんの極みだなあ。ま、おじさんだもんな。

■平日夜の空席の多さに旅情を感じる


新宿発の『スワローあかぎ』は、空席が多くてがらがらだった。さすがに古びてきた内装といい、心踊る旅路の始まりという感じではない。消毒液のにおいも混じっていて、ああ、これぞ国鉄の特急だなあ……というようなわずかなわびしさがある。あの匂いは気のせいか私鉄の特急列車ではあまり感じない。それは、私が物心ついたときにすでに国鉄在来線特急の全盛期が終わっていて、私が見ていたのがもっぱらそういう、わびしい特急列車ばかりだったからなのかもしれず。それとも、当夜は雨の夜だったからか。


でも、そのほうが旅情があるのかも。旅情とはもしかしたらそういうわびさびをいうのかも。おじさんのお仕事の撮影旅行なのだし。


■「斜めストライプが高崎線を走るのはおかしい」とかいわない
私がはじめて高崎線で乗った185系電車は200番台の『新幹線リレー号』だった。当時、東北・上越新幹線は大宮始発だったので上野から大宮まで新幹線利用客向けの快速列車が運用されていた。新幹線の上野延伸と埼京線の開業までそれは続いた。

それ以降、『新幹線リレー号』に用いられていた185系電車200番台車は高崎線系統の特急列車にながく用いられていた。200番台車は耐寒耐雪仕様を備え、横軽間の通過もできるようにされていて、先頭車の前面の通風孔にふたがされている。そして、斜めストライプ塗装ではなく緑のライン塗装だった。だから、斜めストライプ塗装の185系電車は東海道線系統で用いられていた基本番台のみで『踊り子』号の印象が強い。

いまやその区分は関係なくなり、高崎線系統でも斜めストライプ塗装の185系基本番台車がこうして走っている。この日に乗ったのもそれだ。「高崎線特急は200番台だろ」などと心のなかでくすりと笑いながらビールの酔いに身を任せた。ひさしぶりに乗った185系電車はモーター駆動音が大きくブレーキの衝動の大きさが懐かしくもある。乗り心地のよさは新しい電車やE231系電車のグリーン車のほうが上だなあ。古い電車の楽しみはその乗り心地の悪さを体感するところにもあるよね。

【撮影データ】
Nikon Df/AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G (Special Edition)/RAW/Adobe Photoshop CC(彩度を落として現像)