■EF50mm F1.8 STM、イイね!
昨年から今年にかけて使う機会があったいくつかのカメラのなかで、とても好ましく思ったもののひとつはキヤノンEOS 6D Mark IIとEF50mm F1.8 STMの組み合わせだ。35mmフルサイズセンサーを搭載したEOS 6D Mark IIはフルサイズ機としてはコンパクトだ。けれど、いまの高性能なズームレンズと組み合わせると、どうしても大柄になる。
そこで、EF50mm F1.8 IIを組み合わせてみると、そのたたずまいが好ましく思えた。おでこの曲線との組み合わせかなあ。
「高級感がものすごくある」というわけではない。ボディもレンズもいわばエントリーモデルだから。けれど安っぽくは見えないし、むしろ大げさになりすぎず、じつにシンプルなところがいいのだもの。この組み合わせなら気軽に持ち歩きたい。じっさいに、持ち歩いていて楽しかった。それにほら、Domkeのあのストラップをつけると、目立たずにいい感じになるのではないかな。
最近の私はこの「大げさに見えてしまわないように」というところをとても気にするのだ。機材でオラオラといばるようなことは、カッコ悪いもの。もちろん、たいていのみなさんは、けっしてそんなことはしないとは思うのだが。
このEF50mm F1.8 STMの光学系は、キヤノンEFレンズユーザーのみなさんならご存知のロングセラーレンスEF50mm F1.8 IIと同じだ。
ただし、現代ふうにデジタルカメラに最適化されたコーティングが施されている。AF駆動用のモーターがSTM(ステッピングモーター)になり、マウント部分も金属部品に変更されている。さらに、最短撮影距離が0.35mに変更された。絞り羽根は7枚だ。
さて、前身となったEF50mm F1.8 IIは1990年12月に発売されて以来、約25年間も売られていた。2015年に後継となるEF50mm F1.8 STMが発売されたときのプレスリリースには「(2015年)現在も全世界で月産7万本を誇る」とあったから、いったいどれだけの数が作られたのかわからない。
EF50mm F1.8 IIは初代EF50mm F1.8のローコスト化モデルだった。光学系はそのままで距離表示をなくし、AF駆動がDCモーター化され、マウント部分にはプラスチック素材が用いられていた。絞り羽根は5枚。
さて、前身となったEF50mm F1.8 IIは1990年12月に発売されて以来、約25年間も売られていた。2015年に後継となるEF50mm F1.8 STMが発売されたときのプレスリリースには「(2015年)現在も全世界で月産7万本を誇る」とあったから、いったいどれだけの数が作られたのかわからない。
EF50mm F1.8 IIは初代EF50mm F1.8のローコスト化モデルだった。光学系はそのままで距離表示をなくし、AF駆動がDCモーター化され、マウント部分にはプラスチック素材が用いられていた。絞り羽根は5枚。
このレンズが売れたのは、コンパクトなサイズで明快な描写であることはもちろん、約130gと軽量だったことと、希望小売価格が税別1万2,000円と手に入れやすい価格だったからだろう。
EOSで写真を始めた写真学生や、EOSユーザーのカメラマンたちのあいだでは「いざというときのためにカメラバッグに入れておくとなにかと役立つ」と言われていたのだそうだ。
「そうだ」と伝聞形で書いているのは、有名なレンズであったにもかかわらず、ずっとニコンユーザーだった私は使ったことがなかったから。
「そうだ」と伝聞形で書いているのは、有名なレンズであったにもかかわらず、ずっとニコンユーザーだった私は使ったことがなかったから。
評判はもちろん知っていたし、ときどき脳内で思い描く「もしEOSユーザーになるとしたら、あのレンズをまずは手に入れたい」という夢想(妄想)にはいつも選んでいた。あ、もしかして変なことを書いているかなあ、私。「あのメーカーのボディにするなら、レンズはアレとアレがいい」という妄想ごっこはみなさんはしないのかな。
■気に入ったのは見た目だけではない
EF50mm F1.8 STMの気に入ったところはその外観だけではない。まず、F1.8と比較的明るい開放絞りのおかげで、ファインダー像も明るい。
■気に入ったのは見た目だけではない
EF50mm F1.8 STMの気に入ったところはその外観だけではない。まず、F1.8と比較的明るい開放絞りのおかげで、ファインダー像も明るい。
そして、素直なぼけと明快な描写が楽しかった。F2.0くらいまではややにじむようなところもあり、それがF2.8程度から絞り始めると引き締まっていくところも、少し前に設計されたレンズという雰囲気だ。EF50mm F2.5 コンパクトマクロのような、びしびしとした力強さとはことなる。だが、私はこういった球面収差を残しているレンズが好きなのだ。
使ったボディが35mmフルサイズのEOS 6D Mark IIだったからか、Digic 7のたくみな絵作りのおかげもあるのか、カリカリしすぎないところが気に入った。手ぶれ補正機構(IS)はないので、気合いと根性だけではなく、シャッター速度とISO感度の調節で乗り切ろう。
■F1.2LやF1.4にもまさるところ
EFレンズの標準レンズには、EF50mm F1.4やEF50mm F1.2Lもある。名レンズといわれているその両者を使ったこともじつはないくせに、EF50mm F1.8 STMが自分にとって心引かれるのは、コンパクトさや希望小売価格1万9,500円(キヤノンオンラインショップ価格は、本稿執筆時では税別1万6,575円)というお値段、さらにはやや古めかしいやわらかい描写にある。
■F1.2LやF1.4にもまさるところ
EFレンズの標準レンズには、EF50mm F1.4やEF50mm F1.2Lもある。名レンズといわれているその両者を使ったこともじつはないくせに、EF50mm F1.8 STMが自分にとって心引かれるのは、コンパクトさや希望小売価格1万9,500円(キヤノンオンラインショップ価格は、本稿執筆時では税別1万6,575円)というお値段、さらにはやや古めかしいやわらかい描写にある。
なんといっても、気に入った最大の理由は最短撮影距離が一眼レフ用50mm標準レンズとしては短い0.35mになったところだ。EF50mm F2.5 コンパクトマクロの0.23m(単体での最大撮影倍率0.5倍)ほどではないけれど、かなり近接できる。単体で0.35mまで近接できる35mm版の現代の50mmレンズはほかにはないはずだ。
マイクロフォーサーズを使い始めてから、一眼レフ用レンズの最短撮影距離の長さが私には気にかかるようになってしまった。私物の機材では60mmのマイクロニッコールばかりを使うのは、最短撮影距離が短いから。マクロ撮影をしなくても「近寄りすぎ」を意識しないですむ。近接しすぎてピントが合わないというのは、撮っていておもしろくない。
また、APS-Cサイズ機で使うと80mm相当で0.35mまで近接できて、これもまたいい。
通常の一眼レフ用50mmレンズの最短撮影距離は0.45mが一般的だ。だから、EF50mm F1.8 IIならばそれよりも10cmも近接できるというのは、意外と重宝する。
通常の一眼レフ用50mmレンズの最短撮影距離は0.45mが一般的だ。だから、EF50mm F1.8 IIならばそれよりも10cmも近接できるというのは、意外と重宝する。
もちろん、近接時の性能をとくに向上させたわけではないと思うので、球面収差によりやわらかい描写になるだろう。それもまたいいんだなあ。文献複写のような厳密なマクロ撮影をするわけではないから。
もちろん、ZEISS Otus 1.4/55のような、にじみもない高解像の最新機材は魅力的だ。けれど、EF50mm F1.8 STMのような決して目立たない道具を工夫してうまく被写体の雰囲気を撮るというのは楽しい。自分の腕と頭を試される気がするから。値段の高い高性能モデルできちんと撮れるのなんてあたりまえだもの。
もちろん、ZEISS Otus 1.4/55のような、にじみもない高解像の最新機材は魅力的だ。けれど、EF50mm F1.8 STMのような決して目立たない道具を工夫してうまく被写体の雰囲気を撮るというのは楽しい。自分の腕と頭を試される気がするから。値段の高い高性能モデルできちんと撮れるのなんてあたりまえだもの。
いつもお世話になっているTakaさんは写真の腕前もものすごい方だけど、こうもおっしゃっていたっけ。いわく、安い機材でいい写真を撮る工夫に腕が鳴るじゃないですか、とも。かっこいいよね。
私自身も、いつまでもスコープドックに乗り続けたキリコ・キュービィーみたいに融通がきかないかも。私はP.S.じゃないくせにね。いつの時代のアニメの話をしているのだ。
ウドのコーヒーは苦い。むせる。
【撮影データ】
キヤノンEOS 6D Mark II/EF 50mm F1.8 STM/RAW/Adobe Photoshop CC 2018
【撮影データ】
キヤノンEOS 6D Mark II/EF 50mm F1.8 STM/RAW/Adobe Photoshop CC 2018