2020年3月4日水曜日

【撮影機材の話】「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」でFireWire接続のNikon SUPER COOLSCAN 4000EDを使う話

「Apple Thunderbolt - FireWire」アダプタを買った

■FireWireもしくはIEEE1394なんてみんな知らないだろ
かしむかし、あるところにIEEE1394(アイトリプルイー・いちさんきゅうよん)あるいはFireWire(ファイヤーワイヤー)とよばれるパソコンと外部機器をつなぐ接続規格がありました。大容量のデータを高速に転送できることから、ビデオカメラやハードディスク、スキャナーと林檎計算機を接続する用途に用いられていました。それ以前に使われていたSCSI(スカジー)という規格よりも接続が容易で小型であるところが便利でしたが、みなさんもおなじみのUSBを採用する機器のほうが主流になり、いつのまにか林檎計算機からも姿を消してしまいました。採用機器の特許料支払いの問題などのせいともいわれていますが、くわしいことはわかりません。


……ふつうの読み物にするには、きっとそうして「前史」から語らないとみなさんに通じそうもないなあ、というのが今回のエントリーだ。ざっくりいうと以下のようになる。

1. FireWire接続のフィルムスキャナーを現行のMacに使いたい
2. 「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」を買った
3. FireWire400-800アダプターと「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」をつないだ
4. ドライバソフトはVueScanにした

これ以降でもう少し細かくお話していこう。なお、Windowsを筆者はずっと所有していないので、現行のWindows環境でどうすればいいか、どういう環境であればFireWireインターフェースしかないフィルムスキャナーを動かすことができるのかは筆者には試すことができないしわからないということは、先に申し上げておく。

■FireWireのない現行のMacでフィルムスキャナーを使いたくなった
前回のエントリーでも書いたように、筆者はニコンのフィルムスキャナーSUPER COOLSCAN 4000 ED(以下、LS-4000EDと略)を温存している。2001年発売でもうずいぶん前に製造もサポートも中止になったので、「温存」という言い方をしている。ドライバソフトのアップデートももうなされない。デジタルカメラの画素数が増えて階調性能も向上したいまとなっては、たとえばWebで見せる用途に数枚をたまにデジタル化するのであれば、デジタルカメラとマクロレンズで複写するほうが手っ取り早いだろう。ただし、あの方法は枚数が多いとちょっとめんどうだ。A4プリントにするために……などと考えると気合いを入れないといけない。

LS-4000EDを温存しているのはずっと撮りためてきた35mmフィルムがあるから。そして、2020年のいまとなっては筆者が求めるフィルムスキャナーが新品では存在しない。どういうことかというと、ピント合わせ機能(オートフォーカス)がない機種ばかりだから。フィルムは決して平面とは限らないので、ピント合わせができる機種が望ましい。そして、フィルムには残念ながら傷やホコリなどのゴミがある。スキャナーのレンズ性能がよく入力解像度を上げると、フィルムの傷やゴミも同時にめだってしまう。デジタルカメラで複写する方法でも、フィルムにある細かい傷やゴミはAdobe Photoshopなどで消していく必要はある。

LS-4000EDの読み取り画素数は3,946✕5,782画素で、4000dpiで最大約2,280万画素の画素数でデジタル化できる。14bit処理ができ、光源がLEDであるためにウォームアップの時間が短い。レンズにはEDガラスも使用されている。もちろんオートフォーカスがあり、ピント合わせも可能だ。オートフィルムローダー(自動送り機能)と赤外線を利用した傷やゴミの検知と修正機能(Digital ICE 3)があるところがとても便利。1カットずつ切ってマウントに入れたポジフィルムにはオートフィルムローダーは使えないが、6コマ程度にカットしたフィルムならばオートフィルムローダーにそのまま差し入れて読み取らせることができ、E-6プロセスのポジとC41プロセスのネガであればソフトウェア上で傷やゴミをわりとうまく自動的に消してくれるので、たいへん生産性が高い。筆者がLS-4000EDを温存しているのはそういう理由だ。もはや手放せない。

なお、LS-4000EDの後継機種のSUPER COOLSCAN 5000ED(LS-5000ED)はインターフェースがUSB2.0になり、2ラインのCCDを搭載してスキャン時間がさらに高速になった。16bitでスキャンでき、Digital ICEも改良されてコダクロームにも使用可能だ。ブローニーフィルムに対応したSUPER COOLSCAN 9000 ED(LS-9000ED)がほしかったけれど、手が出せる値段ではなかった。

LS-4000EDの端子はIEEE1394(FireWire400)のみ

LS-4000EDの話に戻ると、このスキャナーの接続端子はIEEE1394だ。いまの林檎計算機世界での一般的な言い方をすると、FiweWire400とよばれるものだ。現行の林檎計算機にはこの端子は備えられていない。正確に言うと、10年ほど前の林檎計算機ではFiweFire400の後継規格であるFireWire800というインターフェースはあった。2012年の製品まではこのFireWire800でFireWire機器が接続できたので、筆者はFireWire800 - 400アダプターを使って、Mac mini(Mid 2010)に接続して使っていた。残念ながらこのFireWire800もいまの林檎計算機には備えられていない。

FireWire800のMac mini(Mid 2010)

FireWire 800-400アダプターを使っていた

メインマシンを新しいMac……いや、林檎計算機にしたあとも、フィルムスキャナー専用機としてMac mini(Mid 2010)ごと温存していた。ところが、先日これに用いていたモニター(ディプスレイ)を壊してしまった。後述する理由があるのでそのうち新しいモニターを手に入れるつもりではあるが、いまの「FireWireのまったくない」林檎計算機でもLS-4000EDを使用可能ならば、対応しておきたい。手元にある古い林檎計算機自体もいずれ故障する可能性があるから。

サポートが終了してしまった古い工業用のソフトやCADのソフトを使うためにPC-98シリーズやWindows 95をとっておくひと、アルプス電気のMD-5000シリーズプリンターを使うためにドライバソフトが対応している古いパソコンを大切に使うひとと似たようなものだろうか。

■「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」を買った

「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」


ThunderboltとUSBしかないMacBook Air(Mid 2012)

そこでひさしぶりにいろいろと検索した結果、「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」というものが世の中に存在し、それを使ってFireWire800からThunderbolt端子のある林檎計算機に接続できるらしいことがわかった。

インターフェースにかっちょいい名前をつけるのはいいけれど、数年おきに規格を変えるのはほんとうにやめてほしいな。このThunderboltだってもう2020年3月現在の最新の林檎計算機にはなく、Thunderbolt 3という名前のUSB-C端子なのだもの。「Thunderbolt 3(USB-C)- Thunderbolt 2アダプタ」というものもあるけどさ。

アップルへのぐちはさておき、定価で税別2,800円もする「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」をとりあえず買ってきた。新しいモニターを買うよりは安い。大手量販店のポイントを駆使してしかたなしに手に入れた。

■FireWire400-800アダプターと「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」をつないだ

FireWire400ケーブル+同400-800アダプター+「Apple Thunderbolt - FireWire アダプタ」

LS-4000EDにつながって

Thunderboltとつながる

システム的に認識されているよ

いろいろごにょごにょと長文をしたためてみなさんには申し訳なかったけれど、FireWire400ケーブル+FireWire400-800アダプター+「Apple Thunderbolt - FireWireアダプタ」というかたちにしてメインマシンのMac mini(Late 2014)に接続したら、きちんと認識された。なんらかのソフトをインストールする必要もなく。これはとてもありがたい。

なお、現行のThunderbolt 3(USB-C)インターフェースの林檎計算機に接続するには、さらに前述の「Thunderbolt 3(USB-C)- Thunderbolt 2アダプタ」を必要とする。筆者はThunderbolt 3の林檎計算機を所有していないので、その環境で試すことはできないが、おそらくは認識するはず。ネット検索するとそういう環境で使われている方もいるようなので。

ハードウェア的に接続ができても、LS-4000EDを動かすにはソフトウェアが必要だ。LS-4000EDを動かすニコン純正ソフトウェアNikon Scan 4はMac OS X v10.6 Snow Leopardまででしか動かすことができない。筆者が古いMac mini(Mid 2010)を温存してきたのは、そういう理由からだった。だから筆者はLS-4000ED専用機にしたMac mini(Mid 2010)のOSをSnow Leopardからアップデートさせずにおき、ネットワークとインターネットから切り離していた。Nikon Scan 4が便利なのだもの。むろん、アンチウイルスソフトは入れている。モニターを入手したらこちらも再整備したい。HDDをSSDに入れ替えるのもいいかもしれない。

いっぽう、あらたにLS-4000EDを接続させたメインマシンのMac mini(Late 2014)のOSはmac OS 14.6 Mojaveだ。常用する32bitソフトウェアがまだある関係でmacOS Catalinaにはアップデートしていない。それでも、Nikon Scan 4は動かせないしインストールさえできない。おまけに、なんでアップルはMac OSからmac OSのmを小文字にしたのさ(八つ当たり)。

そこで、mac OS 14.6 Mojave環境のMac mini(Late 2014)では、スキャナー用の汎用ソフトウェアとして名高いVueScanを使うことにした。筆者はかなりむかしのOS9.2.2の時代に登録をして料金も払っていた。そのまま最新のOSに対応したバージョンにアップデートして使い続けることができているのはとてもありがたい。

NikonScan4が使えないならVueScanを使えばいいじゃない

アダプターだらけのFireWireでもシステム的に認識しているように、VueScanを立ち上げてもLS-4000EDはきちんと認識され、Digital ICEの各機能である赤外線傷取りや退色補正、粒状補正も作動する。マルチサンプルスキャンも可能だ。

10年ほど前に撮ったポジをスキャン……うわっ、私の写真へたすぎ!

ためしに、このブログで以前書いた2009年6月に秩父鉄道の1000系電車1002編成「リバイバルカラーデハ100形タイプ」のデビュー時に撮ったポジをスキャンした。約20年ぶりにポジフィルムで列車を手持ち撮影した、ものすごくへたくそな写真だ。傾いているしレリーズタイミングは早すぎるし。そもそもカメラをもう少し右に向けて、列車の正面を画面真ん中にしないように気をつけないといけない。ほんとうにへたくそで泣ける。

スキャン後にAdobePhotoshopで少しは見られるように仕上げたのが以下。よく見たら上のスクリーンキャプチャーしたものの1カット手前だ。どちらにしろへたくそなのだけどさ(ため息)。

ごまかしはごまかしでしかないんだけどさ

いまのところ私はまだVueScanを「使いこなす」段階にはいたらない。曇りの日にデーライトフィルムで色補正用のCCフィルターも使わずに撮ったうえに、高彩度ポジフィルムなのでスキャンしやすいとはいえない。デジタル化を前提としてポジフィルムを選ぶのであれば、高彩度で高コントラストなフィルムはスキャンしづらいのだ。それでも、ひさしぶりにあらためてもうひとつのスキャナー用汎用ドライバソフトとして有名なSilverFastのデモ版を試してみたところ、筆者にはSilverFastのほうが使いやすいとは思ったものの、残念ながら二の足を踏むほどの値段がする。そこで、VueScanをこれからは使おうと思っている。というよりも、使わざるを得ない。いろいろと試してきちんと使いこなせるようになりたい。

おおむかしのPhotoshopプラグインでNikon Scanを使うことができた時代がちょっとなつかしい。とはいえ、いまのほうがマシンの処理能力が高いから、スタンドアローンソフトであっても、複数のソフトを立ち上げつついろいろな作業ができるし、2001年発売のスキャナーが2020年でも使えるのだから、むしろありがたいと思うべきか。林檎計算機環境でいまだにFireWire接続のフィルムスキャナーを使うひとはそういないと思われるが、上記は2020年時点での備忘録として書いた。ニッチ過ぎてみなさんにはあまりお役には立たないかもしれない。

※以前、パソコン誌などでは「スキャナ」「アダプタ」などの音引きのない表記が行われていた。Microsoftが2008年に音引きを用いることにして以降、誌面でも音引きを用いるようになり、各社ともに「スキャナー」「アダプター」と音引きを入れるようになった。ところが、アップルの「Thunderbolt 3(USB-C)- Thunderbolt 2アダプタ」などの製品名にはいぜんとして音引きがない。製品名を改変したくないので、本稿ではアップルの製品名で音引きのないものは「アダプタ」と音引きを入れず、さらにカッコ書きをした。「ドライバソフト」「スタンドアローンソフト」のあたりは迷ったのだが。筆者の用字用語の統一ミスではございません……そのはず……あ、また誤記を見つけ……。