2021年5月13日木曜日

【西武狭山線撮影記事】狭山線を走る赤電塗装の2本の新101系電車を追う


■「狭山線を走る赤電」が具現化した
私が西武狭山線を走る列車を撮っているのはせいぜいここ15年のうちわずかな期間でしかない。だから、それ以前に姿を消していた赤とベージュのツートンカラーの旧型電車(いわゆる赤電)が狭山線を走る姿は写真にできなかった。幼いころに乗ったことがあるだけだ。

けれど、狭山線沿線を歩くたびに、1980年代(昭和50年代)には姿を消した赤電塗装の電車が狭山線を走る姿を目にしたいと思っていた。住宅地のなかに敷かれた単線を走るようすが似合うと思っていたからだ。だから、2021年3月のダイヤ改正で多摩湖線用の新101系電車が小手指車両基地に転属して、赤電塗装の259編成も狭山線運用に用いられるようになって、とてもうれしく思っていた。多摩湖線でさんざん写したけれど、それはそれだ。

■2021年5月に狭山線の赤電塗装が2編成に増えた
狭山線用に転属した新101系電車のうち、赤電塗装をまとっていたのは当初は259編成だけだった。だから、小手指車両基地に1編成しかない赤電塗装の編成が狭山線を走る確率はそう高くはなく、247編成および253編成と赤電塗装が2編成いる多摩川線に行くほうが遭遇しやすかった。そして、自分の予定と259編成が狭山線を走る日が合わないままでいたので、なかなか撮影できないでいた。昨今はあれがああだし。おまけに使いたいカメラやレンズを故障させて修理に出していたし。けっこう落ち込むんだぜ。

ところが、驚くべきことに4月中旬に253編成が多摩川線から小手指車両基地に転属してきた。つまり、2021年5月現在では小手指車両基地所属で狭山線に用いられる赤電塗装の電車は253編成と259編成の2本になった。赤電塗装の電車が狭山線を走る機会が増えたというわけだ。

そうなると「赤電塗装の新101系電車が2編成同時に狭山線を走る日」もそのうちやってくるのではないか。そう思って待ち構えていたある日の夕方に、ついにそれが実現した。

■夕方に上下列車の交換を待った
新101系電車が2編成とも運用入りするのは、アプリでときどきチェックして観察したところによると、どうやら平日の午前中や野球・イベントを開催しない日の夕方のようだ。だから、メットライフドームのイベントスケジュールと西武ライオンズの試合日程を見ながら、ドームでイベントが行われず、かつ西武ライオンズの試合がアウェイの日に運用を観察していた。本来は野球の試合が行われる日を確認するためのウェブサイトだろう。

そうして野球がアウェイでドームでイベントもないとある二日間のあいだに、夕方に赤電塗装の253編成と259編成が狭山線で運用入りするのを見た。起て飢えたる者よ、今ぞ日は近し。醒めよ我が同胞(はらから)、暁は来ぬ。なぜ古風な革命歌を引用するのかは気にしないでほしい。だって電車が赤いから……かな。思想に共鳴しているわけでは決してない。ともかく、そこで機材を背負って自転車で狭山線へ向かった。

以前から赤電塗装の2編成の列車をどこで撮ろうかと考えていた。撮りたい場所はいくつもあるが、まずは上下の交換のようすを見たくて下山口で待った。狭山線は単線だ。中間駅が下山口しかないので、早朝と深夜をのぞいてここで必ず上下列車は交換する。


まず、下り方の近接警報機が点灯し始めて、しばらくすると踏切が鳴り始める。すると上りの西所沢行き列車が姿を現して駅に入線する。停車して客扱いを始めているあいだに下りの西武球場前行きがやってくるというパターンが多い。どうやら、下り列車は西所沢で池袋線からの乗り換え客を待つために、やや遅延することが多いようだ。

そこで、踏切が開いていて警報機が鳴るまでのわずかなタイミングで撮り、警報機が鳴り始めたらすぐに遮断機の外に出てあらためてカメラを構え、そこから下り列車の出発を待った。

こうやって、いつかは狭山線でも目にしたいと願っていた赤電塗装の電車が上下交換をするようすをじっさいに目の前にすると、ファインダーを見ながら興奮する。これが見たかったのだ。

興奮しつつも、冷静に列車の動きと自分の周囲で踏切が開くのを待つ歩行者のみなさんの動きや自動車に注意をじゅうぶんに払い、歩行者にぶつかることや横断を邪魔することのないように、そして手ぶれと画面の傾きにはかなり注意している。ここで撮るにはそういう注意点がたくさんある。



■日没前に空が暗くなりきらないうちに撮りたい
この場所では以前も何度か撮った。平日の夕方に新101系電車が2編成用いられるようになるのは、18時過ぎのようだ。それ以降も走るが、ダイヤ改正後に撮ったときには日没直後の空に明るさの残る時間に撮りたいと思ったので、私はしばらく季節の推移を待っていた。だから、5月に入って日も長くなったのはありがたい。

とはいえ本稿執筆時の日没の時刻は18時半ごろであり、15分程度の運行間隔だから、完全に暗くなる前に撮ることができるタイミングはまだ限られている。そう思うと自転車は移動しやすく駐車しやすいので、いろいろと便利かもしれない。


その少ないチャンスのなかで、上下の列車がうまく画面内に収まる瞬間というのは、運行状況や遅延状況にもに左右される……しかも、赤電が2編成とも走るのは毎日ではない。そういう難条件にあると闘志もわくかも。

さらには走行区間が短く住宅地のあいだを走るから、どうしてもほかのみなさんの既発表の写真に似てしまいやすいという問題もある。いろいろなねらい方もあらためて考えてみたい。なにしろ、ここを走ってほしいと自分が願っていた列車がほんとうに走るようになったのだから。やってみる価値はありますぜ!(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』)


【撮影データ】
Nikon Df/AI AF Nikkor 35mm f/2D, AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED/RAW/Adobe Photoshop CC