2018年10月2日火曜日

【2018年夏関西リハビリ鉄記事】うるわしの青き衣の者「青の交響曲(シンフォニー)」を撮る 近鉄南大阪線沿線滞在記 その3



■青き衣の者ふいに現れて
鉄南大阪線沿線に在住していたこの夏、私が気に入って追いかけていたのは「ウサギ号」「ウサたん」こと6020系電車6051編成「復刻ラビットカー塗装」(C51)だった。けれどじつはもうひとつ気に入っていた列車がある。それがこの観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」こと16200系電車だった。

2016年9月から運行しているというけれど、「関西圏鉄道超エントリーユーザー」であり、南大阪線がはじめて乗った近鉄電車だったものの、南大阪線のことをまったく知らなかった「おまえ本当にテツなのか」とそしられても文句をいえないほど無知な「カメラのおっちゃん」は、この列車の存在さえ知らなかった。

正確にいうと、南大阪線沿線にしばらく滞在すると在阪の友人に伝えたところ、テツではないその友人に存在を教えられてはいた。けれど、最新の優等列車にたいして趣味的な興味を持てない私は、教えられたこの列車のことも「ふーん」と聞き流していた。


それが、はじめて外出を許されて南大阪線に乗った日のこと。河内松原のプラットホームで列車を待っていると、遠くからなにやら青い色の列車が近接して来て、目の前を通過した。それがこの「青の交響曲」だった。

「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」
というくらい、この列車の不意の登場は私には衝撃的だった。

■細身でしゅっとしてはる
近鉄の列車といえば、特急はオレンジとネイビーブルーという思い込みがあったので、目の前を通過する光沢の強い濃紺の列車にはかなり驚かされたのだ。もっとも、オレンジとネイビーブルーの旧塗装の特急列車は、南大阪線ではもうわずかにしか見られないのだが。

そして、もうひとつ気に入ったのはこの列車は特急用として新造されたのではなく、南大阪線ではごくありふれた通勤型電車だった6200系電車を改造して作られたということ。南大阪線の6000系列電車は細身の車体が「しゅっとしてはる」ように思えて 、私にはまるで細身のスーツを着た人物のように見えて好印象がある。

けれど、外見上ひとつだけ、惜しいと思われてならないのが、後づけされた正面の行き先表示方向幕の存在だ。「青い交響曲」はこの方向幕が撤去され、外見がずっと私好みになっているところが気に入ったのだ(変な理由だなあ)。いやでも、正面のおでこのあたりのカーブによけいなものがなくていいでしょ。

もとの車体を載せ替えるのではなく、扉を埋めて窓配置を大きく変えてというふうに外見上はかなり手を入れられている。もともとの6000系列電車は4扉のありふれた、どちらかというと地味な通勤型電車だったのに、手を入れるとここまでカッコよくなるというところもおもしろい。

たとえていうと、漫画によくある「メガネをかけて三つ編みで地味だったヒロイン」がメガネを外して三つ編みの髪を解き、標準丈のセーラー服を着替えるとまったく印象が異なって見えるとか、そんな感じ? こういうのは男性にもある。メガネを外すとものすごいイケメンだった、なんて。筆者の知っている男性にも何人も「メガネを外すと人畜無害っぽさがなくなって男っぽくカッコよく見える」人物がいる。惜しいと思うんだけどなあ。

ここできゅうに筆者はかの『冬のソナタ』でユジン(ヒロイン)が、初恋の人であるチュンサンの生き写しのようなミニョンに出会ったときに言ったセリフ「ミニョンさん、メガネ外してくださいっ」というのを思い出した。

いやいや、「青の交響曲」なのだから、「ありふれた曲もアレンジを変えたら印象が変わった」とシンプルにいえばいいのだ。



■じつに楽しげな観光特急
そこで、筆者は南大阪線の沿線に行くたびにこの列車をできるだけ撮影しようと試みた。JR桜井線の奈良方面に出かける際には、「青の交響曲」の阿倍野橋の出発時刻に合わせていたほどだ。とはいえ、南大阪線内でしか撮れなかった。吉野線には乗ってもいないから。ほんとうは、乗ってみようと思っていたのだ。いま思えば、奈良方面に行くなら橿原神宮まででも乗ればよかったし、吉野口から和歌山線に乗り換えたってよかった。

というのも、この列車は「観光特急」と名乗るだけあり、通常の近鉄特急よりもずっと凝った内装が自慢だから。さらに、飲食も可能でゆったりと乗って楽しむための列車なのだ。阿倍野橋で停車しているところを目撃したこともあるけれど、車外のスピーカーから音楽が流れているところも楽しげだ。

■だれか親しいひとといっしょに乗ってみたい
私が在阪している時期にたまたま出張で明日香村に出かけたパートナー氏が、この列車を目撃したのだそうで、私に感激してメッセージを送ってきたことがある。そこにも「音楽が流れていて楽しそうな列車だ」とあった。そう、私も同感で乗ろうと思っていたのだけどなあ。





乗ろう乗ろうと思って、踏み切れなかったのはじつは理由がある。ほんのささやかな理由だ。それは、ひとりで乗るのは惜しい気がしたから。同性でも異性でもいいけれど、好きな人や楽しい仲間と乗ったほうが、ずっとおもしろそうだと思ったからだ。まあ、こんど沿線に行くときにはひとりでも、橿原神宮前までのチョイ乗りでもいいから、乗ってみるつもり。

【撮影データ】
Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH., LUMIX G 42.5mm / F1.7 ASPH. / POWER O.I.S./Adobe Photoshop CC 2018