2019年10月27日日曜日

【上毛電気鉄道撮影記事】令和の秋をデハ101が駆ける

いつもと同じ写真だけど、好きだからいいの

■昭和3年生まれが駆ける
和元年になっても走行可能状態が維持されて、イベント時に元気な姿を見せる昭和の鉄道車両はほんとうに数を減らしつつある。そして、かの琴電に見るように動態を維持する保存は永続的なわけではない。上信電鉄のデキのように不慮の事故で不動になってしまう可能性も。

だからこそ、上毛電気鉄道大胡(おおご)検車区のイベントが例年通りに10月27日(日)に開催されるとのを報を聞き、ひさしぶりに上毛電気鉄道(以下、上毛電鉄または上電と略)沿線に足を運んだ。

先月さかんに記事にした上信電鉄同様に、上電にも昨年の年始に行って以来、ずっと訪問できないままでいた。前橋や桐生は高崎よりも私には遠いから、上信に行けないならば上電へはもっと行きづらい。そして、それ以降は体調不良で昨年は遠出できなくなった。だから、今回は自分の体調がかなり復調してきたことを知るためにも、上電の訪問をして試してみたい、という個人的な思い入れもあった。体力だけではなく、あたまを使っていろいろ工夫ができるか、なんていうのもふくめてだ。

だから、あれこれとカメラのセッティングをした目の前をデハ101号車が駆けていくのを見てじつにうれしくなった。ちゃんと撮れたあああああ! 俺ちゃんと撮影できるじゃああん! って思ってね。

■天気予報って正確なんだ!
さて、この日の前橋・桐生地方の天気予報は午前中は曇りで午後から曇りのち晴れといったところ。「晴れるはずだが、それがいつからかわからない」という予報を見て「そのうち晴れてくれよ」と思いながら、まず朝8時ころに西桐生に向かうと空は明るい曇り。

白っぽい空が広がる曇り空はほんとうに扱いに困る。西桐生から上電の訪問を始めたということは、行かれた方ならおわかりのように渡良瀬川の橋梁で私は撮りたかったから。天気がよければ西桐生行き列車は下流側から、そして中央前橋行きは上流側から。そう思って渡良瀬川の河川敷に行った。ところが西桐生行きの第一便(大胡9:51発を西桐生10:27着)をねらいたいのに、空は白い。白い空を画面に大きく入れて鉄橋で撮るのは私は嫌だ。

何度も書いているけれど、白い空は画面内の脇役であるくせに、たいへん目を引いてしまい主役を邪魔するから。白い空を画面内に入れる必然性がないならば、私は白い空を写さない。

そこで、早々に河川敷を引き上げてしまった。もうひとつ河原での撮影を止めた理由は、先日来の大雨で水量が多くて予想以上に水が濁っていることと、河川敷のアシなどの草が泥をかぶってなぎ倒されているので、災害の記録写真のようになってしまうから。そういう写真を撮りたいわけではないんだよなあ。

けっきょく、第一便の大胡発西桐生行きと第二便の西桐生発中央前橋行き(西桐生10:55発中央前橋11:52着)は撮らなかった……というとカッコつけ過ぎだ。撮ったことは撮ったけれど、まったく不本意だったのでお見せできないのですよ。いや、けっこう落ち込んだ。

ところが、第3便(中央前橋12:00発西桐生12:57着)の走るころになって空が晴れてきた。天気予報をここで思い出すと「午後から晴れ」。マジかああああ!

ハロウィンだから吸血鬼メイクの子たちがいたのか

デハ101通過直前に雲がかかって、ああ、南無三


■過去の自分の写真の真似になるとはいえ
この桃ノ木川の橋梁を越える築堤は上電でも貴重な背景がシンプルに写せる場所だ。築堤に咲くナノハナや手前の稲田、あるいは背景の山並みを活かして撮るみなさんが多いようだけれど、私はこの場所をむしろ列車を空に抜く撮影方法のために使う。この撮り方はもうすでに数年前から何度もやっているので、このところはむしろほかの撮影方法を工夫しようと思って「封印」していた。ここで撮るのはだから、過去の自分の写真の真似になってしまうのだ。いつも同じ写真ばかり撮るのは気が進まない。それでも、空が青いならやはりそれを活かしたくて、ひさしぶりにやってきた。

途中で薄雲が空を覆い始めてヒヤヒヤもしたけれど、デハ101が通過するときには雲が切れた。晴れたんだよ! 雲が切れて太陽が顔を出して空も青く晴れた。すげえええ! 中学生の女の子に晴れをお願いしたり、なんて私はしていないのに。

そういえば、ここで撮るときはそんなふうに「薄雲にヒヤヒヤしたけれど、なんとかなった」ことが多い。とくに、このアングルでは空が青くないと間抜けに見えるので、なおのこと陰られると泣けるからね。あ、レリーズタイミングがベストのやつはブログやSNS以外に使うので、すみません。

「ツインテールの中学生の晴れ女」にお願いしたみたいな晴れ!

■はじめての場所にも挑戦
思い描いていた絵柄をきちんと撮ることができて、喪失しかけていた自信も取り戻した。そこで、西桐生発の第4便(西桐生13:25発中央前橋14:22着)は女渕城址公園とか粕川もいいなあ、なんて思っていたら……歩くのが鈍くて移動するための下り列車に間に合わなかったのですよ。

そこで、大胡入庫の最終便をねらうべく、人体の臓器の名前がふたつも駅名にふくまれるめずらしい名前の駅近くの公園で下見をしてから、いつもいつも気になっていた順光の線路の反対側に行ってみると、なるほど……! 85mmで撮影しているけれど、135mmくらいのもう少し望遠レンズがあればいい感じなのではないか。

それにしても夏のような雲だ。じっさい、日向の気温はそこそこ高い。真夏のような写真になるなあ、と思っていたら……みるみるうちに曇ってしまいまして。

夏空みたいだけど、10月も終わりだよ

すごい雲だなあ! と見とれていたら

デハ101がやってきたときには空は真っ白でぽつぽつと大粒の雨が降る体たらく。曇ると茶色い車体が濃い緑に沈んで、ちっとも目立たないじゃないのさ。

曇った。デハ101も冴えませんな

■最終便はいつもの場所で
大胡行きの最終便(中央前橋14:30発大胡14:48着)はいつもいつも同じ場所で撮っている。これも、公園のなかでもちょっぴり違う角度にした。このときは晴れているけれど、すでに大粒の雨が降っていて、列車の通過後にはあたりは暗くなって本格的な雨模様だった。それにしても、なんだかはちゃめちゃな天気だこと。やはり、だれかが中学生の晴れ女に晴れるようにお願いしたのではないかな。

とはいえ、この撮り方じたいも、自分の過去の写真の真似なんだ。今回の撮影は自分にとって「リハビリ鉄の仕上がりの確認」みたいな気持ちがあるから、自分に甘いけれどとりあえずはよしとする。あらたな撮り方をもっと工夫していくのは、むしろこれからだ。気力と体力をあふれさせないと!

逆光側に回ったら晴れ! でも大粒の雨も降ってるよ

上電はそれにしてもいいね。はじめて歩いてみた桐生の中心街も雰囲気がよかった。何度も来ているけれど、また来よう。しかも11月24日までは、土日祝に訪問するならば通常の「赤城南麓1日フリーきっぷ」(1,300円)よりも安い「第26回鉄道の日&群馬県民の日記念・ワンデーフリーパス」(1,000円)もあるから、いろいろ訪問しやすい。デハ101が走らなくてもおすすめしたい。

などと考えながら帰路について気づいた。あ……鉄道むすめ北原ゆうき関連グッズをまた買わなかった……って。上電ブースがあった先日の上信電鉄のイベントでも忘れているから、きっと私には手に入らないものなのかもしれないな、これは(半分ヤケ)。

追記:デハ101には「上州の武士」という渾名があるけれど、ほんとうは「上州の武士」のまちがいなのではないかしら、と思いついた。野武士というのは、字面から誰かが意味を知らないで名づけただけでは。というのは、「いなかの武士」とか「地方豪族」いう意味ではなくて、「潜伏浪人」とか「テロリスト」という意味なのではないかな。

だから、いかめしい顔つきはむしろ「古武士」だと思うよ。なにしろ、昭和3年(1928年)に製造された電車なのだ。81歳とは、人間でもそうとうな高齢だもの。

【撮影データ】
ソニーα7II/Jupiter-12 35mm F2.8, MC Jupiter-9 85mm F2/RAW/Adobe Photoshop CC 2019