■正面左右の窓だけやや大きめに見える
秩父鉄道デキ500形電気機関車のうち、デキ506号と507号は1980年に製造されたデキ500形の最終増備形であり、小さなつらら切りを持ち、正面窓が大きく、尾灯がデッキの手すり部分にではなく車体に備えられているのが特徴だ。そして、デキ507号は太平洋セメントの私有機とされている。
このデキ507号は今年5月に検査を出場した際に、正面の窓のうち運転席と助手席の窓のパッキン(Hゴム)が黒色のものに交換された。中央の乗務員室扉の窓のHゴムは灰色のままだ。そのせいか、左右の窓がやや大きめに見える感じがする。
なんというかですね、その。デカ目メイクをして「おめめぱっちり」をめざした感じに見えるのですよ、私には。すっぴんは意外とプレーンでシンプルなお顔なのだけど。なんとなく、ね。
そんなおめめぱっちりさんのデキ507号が武州原谷貨物駅にやってくるようすを、私は待ち構えた。三ヶ尻からデキ507号牽引の返空の鉱石貨物列車が到着すると、構内で機関車を見ていた小学生たちが手を振り、運転士氏が応えているのを見かけた。
列車はすぐさま石灰石の積み込み作業を行う。そのあいだに日が暮れてあたりはどんどん暗くなっていった。スイッチャーのDD512号が貨車を引き継いで、石灰石の積み込み線に押し込む。ときおり、エンジンが唸る音が聞こえる。
30分ほどで積み込み作業は終わる。そうして石灰石を積んだ貨車をDD512号が引き出してきて、転線して推進運転でこちらに向かってくる。そしていちどDD512号は列車から離れる。所定位置にいたデキ507号が上り方に繋がれる。さらにDD512がふたたび繋がれる。
鉱石貨物列車はそうしてデキ507号とDD512号の両者が推進運転で、下り方の所定位置まで行く。その途中、詰め所のまえにさしかかるとDD512号が突放する。積車の鉱石貨物列車を転線させるには下り方に向けてわずかに勾配があるために、DD512がこうして補助するそうだ。
このえいやっ! とスイッチャーが列車全体を押す突放シーンも、いまではそうそう見られるものではないだろう。そして、これを目にするたびにいつも私は、「スイッチャーがポイっとしている」ように思うし、「ポイしないで」と会見で話していた「グラビアアイドルの黒船」の方を連想してしまうのだ。俺氏妄想乙。
このシーンを撮りたくて、私はこうしてなんどか武州原谷で待っている。そのたびに、機関車とスイッチャーのどちらに動きを合わせて流し撮りをしようか、と迷う。機関車のほうにあわせているが、たまにはDD512号やD304号に合わせてみるのもいいかも。
さて、スイッチャーにポイされていったん下り方に向かった鉱石貨物列車は転線して、上り方に向けて動き出した。あたりが暗くなってきたので、列車が進むと構内灯の投げかける明かりに照らされる瞬間がある。私が日没後にここに来るのが好きなのは、その瞬間がとてもフォトジェニックに思えるから。おめめぱっちりのデキ507号も、じつに凛々しく見えるもの。