2021年12月6日月曜日

【デジタルカメラアクセサリーの話】「工作派以外は手を出すな!」などと思いながらNikon Df用サードパーティ製グリップつきアルカスイスタイプL型プレートを使えるように加工した話


■『映像研には手を出すな!』のおもしろさに夢中
最近になって、アマゾンプライムビデオで『映像研には手を出すな!』を観て、そのおもしろさに夢中になっている。もっと早く知っておきたかったと後悔することしきりだ。

「女子高校生三人組が主人公」「高校が舞台」となると、観るまえは京都アニメーション制作作品的な、もっと「ゆるふわ」したものを連想していた。ところが、この作品はまったくゆるふわしていない。それどころか、機械仕掛けとうんちくだらけなところがとてもおもしろく思えた。もちろん、主人公たちの成長譚としても楽しく鑑賞できる。


原作者によると、登場するメカのインスピレーションは『ドラえもん』から得たのだそうだ。だが、アニメ版を見ていると、それだけではなく、さまざまなSFや宮崎駿作品などの過去の作品へのオマージュにあふれているように感じられる。「宮崎走り」の解説や航空機にとつぜん現れる「宮崎穴」、劇中で主人公たちが製作する戦隊モノアニメの細部設定やイメージボード、「ワンダバ」というなつかしいBGM、『オネアミスの翼』を思い出さずにはいられないロケットの打ち上げシーンを熱く語る場面、タチコマそっくりな多脚戦車……それらを知らなくても楽しむことはもちろんできるけれど、過去の名作アニメを見ているひとならば、なお楽しめそうだ。

廃墟が好きなひと、あるいはモノレールが好きなひとも楽しく鑑賞できそう。かつて存在した小田急向ヶ丘遊園モノレール線のようなロッキード式らしいモノレールと、姫路市交通局モノレール線の大将軍駅のような駅が出てくる。

そして原作者だけからではなく、アニメ版を見ているとアニメ製作者たちのアニメーションへの誇りと愛情を感じさせるところがいい。

さらに、ものを作るにあたって、作者にしかわからない細部へのこだわりと、納期や予算、クライアントの要望にたいしてどう折り合いをつけるか、という葛藤もしばしば描いているところが興味深い。漫画やアニメに携わるみなさんだけではなく「もの作りをするひと」すべてに共感を得られそうなセリフがたくさん出てくるのではないか。

■海外製Nikon Df用L型プレートを買ってみたら
そんな折に、手元にあったNikon Df用のL型プレートのことをどういうわけか思い出した。きっと『映像研には手を出すな!』に刺激されて自分も手を動かしてなにかを作りたくなったにちがいない。このL型プレートは数年前にとある東アジアの越境ECを通じて購入したもので、グリップとアルカスイスタイプ(もしくはアルカスイススタイル)雲台へのL型プレートを兼ねたものだ。

精度の高さで定評のあるアメリカ製のReally Right Stuff(リアリーライトスタッフ、RRSと略)製品などには、Nikon Df用のアルカスイスタイプのL型プレートは存在しても、グリップを兼ねたものはない。両者を兼ねているこれはとある東アジアの某国の製品で、価格もRRS製L型プレートと比べるとずっとずっと安価だった。


ところが、私の手元に来たものは肝心のグリップ部分がカメラボディと形状が合わず、グリップ部分を外さない限りカメラボディに装着できないものだった。グリップとして使いたかったのに。RRS製品ではないから仕方がないとはいえ、まったくもってリアリーライトスタッフ(「ほんとうにきちんと合うもの」)ではないのだ。クソがよ。


赤い丸の部分がボディに干渉する

■ただで転んでなるものか
「やられた」とは思ったものの、当時はいまよりもずっと元気がなくて、販売していた越境ECに返品や返金を申し出ることは可能だったにもかかわらず、放置して手元に置いておいた。

正直にいうと、返品する手間をかけることさえうんざりしたからだ。売ってくれた相手にこれ以上関わることさえ腹が立って嫌だった。クレームを入れることは権利の正当な申立であっても、精神的なエネルギーをかなり要する。そこまでのエネルギーを使う気になれなかった。

だから「こういうものをだまって売りつけるひとたちが、できるだけ早く淘汰されて、悲惨で苦痛に満ちた人生の最期を苦しみながら迎えますように」と、さまざまな神仏に向かって毎月4と9と13の日の丑の刻に13回祈るくらいにとどめておいて、あとは2年ほどL型プレートの「エイジング」を行っていた。

許さないよ! 許すわけがないよ!

それをいまこそ「なんとかしてみたい」という気持ちにかられた。「リアリーライトスタッフ」(「ほんとうにきちんと合うもの」)にしたい、ただで転んでなるものか、とさえ思った。許しは一生しないが負の感情を抱き続けるのも疲弊するだけだ。

『WXIII 機動警察パトレイバー』(映画版)に出てくるベテランの久住刑事のセリフを借りる。物流倉庫内で廃棄物13号に襲われて逃げるシーンのセリフだ。

「やってやろうじゃねえか!」

そこで「やってやった」し「なんとか」した。ようは、グリップのボディに干渉する部分を削ってしまえばいいのだ。材質はアルミだからそう固くはない。

グリップ部分は分解できる。そこで、まずはグリップを分解し、ボディにあてがいつつ鉛筆で削る量をけがいてから、棒ヤスリと小型ハンドグラインダー(商標でいうと「リューター」。「ルーター」と記される場合もある)で合わない部分を削った。

削っている最中の写真を撮り忘れたのと、あてがいながら作業をしたので正確な寸法をここに書くことができない。さらにいえば、この工作自体が腕に覚えのある方にしかおすすめできないから、細かく書きたくないという気持ちもある。

最後は耐水ペーパーで傷を整えた。

削って塗装が剥げた部分にはプライマーを下地に吹き、タミヤカラーのマットブラックを吹き、乾燥させてからオーブントースターで15分ほど焼いて簡易焼つけ塗装を行った。ひんぱんに手を触れる部分ではないから、おそらく大丈夫だろう。剥げてしまってもかまわないといえばかまわない。

塗装が剥げた部分はタッチアップした

赤い丸の部分を上記の写真と見比べてほしい。
購入直後に比べて削って凹ませてある

グリップの内側の肉(写真に見えない部分)
も小型ハンドグラインダーで削った

■「神は細部に宿る」のだぞ
そうして塗装が乾燥してから、ネットで拝見した例をまねて、手元にあったグッタペルカ(カメラ用の合成ゴム製貼り皮)を切り出してグリップ部分に貼った。加工部分を隠すためと、滑り止めだ。

このグリップのもうひとつのこまったところは、そのままだと指が滑って決してホールドしやすいとはいえない点だ。貼り皮を追加するとそれを解消できる。

そうしてグリップ部分をベースプレートに元通りにネジ止めして組み上げて完成させてみると、なかなか悪くはないように見える。もっと技術のある方からすると仕上げが荒っぽいとは思うが、筆者にしてみれば冒頭のアニメから引用すると「細工は流々仕上げを御覧じろ」だ。

こうやって見ると悪くないような気がするからやばい

「工作を楽しむことができた」と思える
楽観的なひとにならおすすめできる……かなあ

でも、使用前にこういう加工をしないと装着さえできない製品というものは、どんなに価格が安くても私はひとにまったくおすすめできない。だから、どこのどういう製品であるのかは記載しないし、リンクも貼らない。これははっきりいって「工作派以外は手を出すな!」という製品だ。

もしかしたら「腕に覚えがある」方で「加工の材料としては便利」で「工作を楽しむことができる」などと、ものすごく楽観的に考えられる方ならば、楽しめるかもしれない。

新品で買ったときから使えない製品なんて、ソ連崩壊直後のロシア製やウクライナ製カメラやレンズでも体験したことはないよ。壊れやすかったり、仕上げが雑な製品こそあったけれど。

以下は推測だが、おそらくこのグリップは在庫処分品なのではないか。カメラが出るたびにカタログスペックだけから設計しているのだろう。そしていちいちカメラを購入して完成品を装着することもしていないと思う。

そういう設計に誤りがあり、グリップ部分がカメラと合わない製品を生産して販売したものの、各種越境ECでネガティブ評価やクレームが発生して、製造者と販売者はそれを改良した。型番に"N"がついているものが、ボディに適正に合うようにグリップが改良されている製品のようだ。その"N"のついた改良バージョンを売り切ったあとに残った、初期の不適切な古いバージョンを「在庫処分」として売っているのだろうと思う。

なぜこう思うかというと、"N"の型番がある製品をNikon Dfに手をかけずに装着している方をネット上でお見かけするから。

そういう不良品を在庫処分として売るならば、正直に「わけあり品」とでもせめて記せばいいのに。もしそうだったら腹を立てたり落胆はしないのだ。だまってしれっと売るあたりのずうずうしさに、ため息が出る。

「神は細部に宿る」とは考えないのだろうなあ。細部……いや、装着できないのだから「細部」ところではないけれど……そこまで気が回らないというか、大雑把だ。

ああそうか、産地は現代になって「宗教は阿片」と長らくされてきた地域だから「神は死んだ」ってやつか。

地域や国に関係なくこういうのは個々人の倫理観と良心の問題だから、あの地域のひとたちがみなこういうあれな連中とは思いたくはないな。優秀なひと、優しいひともものすごくたくさんいることも知っているよ。

そんなことを思うと、いらっと思い出し怒りにとわられそうになる。信義ってものは贵樣ら自身には超ないのかよ、だなんて。

そこで、作業を終えてから『映像研には手を出すな!』をふたたび観た。作中にあるセリフで俺氏のあらぶる魂を浄化したぜ。劇中からふたたびセリフを引用すると「私は私を救わなければならないんだ!」

もっとも、こうやってDfボディにL型プレートを装着しても、いまはふつうの1/4ねじでカメラを固定する梅本製作所の自由雲台の高精度さがものすごく気に入っている。いったんきちんと固定したら微動たりともしないので、構図を決めたあとのわずかなガタツキによるいままで感じていたストレスがだいぶ軽減されている。だから、三脚を使うときにはこのL型プレートを外して、もともと使っているニコン純正(ニコンオリジナルグッズ「NOG」シリーズ)の「Df用グリップ DF-GR1」にすると思う。

私が持っているアルカスイスタイプ雲台は、マンフロット498RC2のヘッド部分をサードパーティ製パーツに交換した「私製改造品」だけで、雲台としての精度の高さは正直にいうと梅本製作所の自由雲台のほうがずっといいから。だから、しばらくはようす見だ。

2023年8月追記:仕方なく改造したこのL形プレートがいまや手放せません。おかしいね。涙が止まりませんよ。

【おことわり】
上記の文中で行った加工は、すべての方におすすめできるものではありません。筆者は上記の加工だけではなく、国内ネットオークションでもときおり見かけるようになったこの製品自体を、読者のみなさんにはまったくもって推奨いたしません。筆者自身としては、こういういい加減な製品が世の中に跳梁跋扈して市場の一角を占めることを手助けしたくはないのです。さらに、こういういい加減な製品であることを知らずに買った方をがっかりさせて、私が逆恨みされるのも嫌です。

そのために、どこのなんという名前のメーカーや販売者であるとか、製品名、入手先は具体的に記述いたしません。私自身には責任を持っておすすめすることがまったくできないからです。こういういい加減なものを売る連中は一刻も早く消えてほしい。だからアフィリエイトリンクも貼りません。

それでも、上記を承知のうえで入手されて、同様の加工をされる方がいらっしゃるならば、これ以上は引き止めることはしません。ただし、くれぐれもご自分の責任において行ってくださいますよう、重ねてお願い申し上げます。加工によって万が一被る損害について筆者は責任を負いかねますので、あしからずご承知くださいませ。