2021年12月27日月曜日

【八高線撮影記事】惜別の特製編成番号札を下げてメリークリスマス! 209系3100番代「ハエ72編成」が走る

八王子・高麗川方1号車クハ208-3102

川越方4号車クハ209-3102

■いつ運用離脱してもおかしくはないと危惧していた
八高線・川越線に用いられている川越車両センター(電略記号:宮ハエ)所属の209系電車3100番代車を昨年より、思い出して機会があればそのつど撮影していた。その209系3100番代はハエ71編成と同72編成の二編成あるうち、11月上旬にハエ71編成が休車として運用離脱した。同編成は川越車両センター構内で休車札を掲出し始め、それ以来運用入りしていない。残るハエ72編成のみが運用入りしていた。

そのハエ72編成も12月に入ると4日(土曜日)を最後に二週間ほど動くことがなかった。そのあいだの12月10日(金曜日)づけでJR東日本大宮支社から209系3100番代は「2021年度中に運行を終了する予定」と公表されたから、このまま動くことがなくてもまったくおかしくはないとさえ、個人的には思っていた。それが、12月17日(金曜日)にふたたび運用入りして19日(日曜日)の午前中まで走っていた。

これはもしかしたら、少し早めのクリスマスプレセントみたいなものなのではないかなあ、と思いつつ、撮影できることがあればその機会をありがたく享受していた。以前のエントリーにも書いたように、209系3100番代は「いつ運用離脱してもおかしくはない」「走っていることが奇跡」とさえ私は思っているからね。老朽化による故障が多いそうだから。

■21日夕方に特製編成札が下げられた
ところが、21日(火曜日)にハエ72編成はまた走り始めた。さらに、夕方からは両端の運転室内に下げられている編成番号札に被せるかたちで、特製の札が下げられたという。機材のメンテナンスのために都内に出た帰りにTwitterでそのことを知り、八高線沿線で待ってみると……たしかにハエ72編成が現れて、特製編成番号札が下げられている。まじか!

ただ、日没後のほうが編成番号札はよく見えるように写るだろうか、と思っていたら、この209系3100番代の前面窓は曲面ガラスを用いているために、その角度に気をつけないと駅構内の照明が反射してなかなかうまく写せない。ガラスの着色されている部分に下げられていることもある。ぬかったぜ。

「もう十分撮ったから、ハエ72を追いかけるのはいいかな」などと思っていた。それがたった二枚の小さな札が増えただけで「もう少し撮るか」などと思うようになるのだから、私自身もしょせんは「じつにちょろいヲタ」なのだとあきれる。いやまあ、もう少し撮ってみたい絵柄があったのに、運用とタイミングが合わなかったのだもの、といいわけをする。説得力はないね。



■もしかしたらクリスマスプレゼントだったのかも
そういうわけで、ここ数回のエントリーで書いた飯能市内の各所であらためて運用をにらんで待ち構えた。側面から撮ってシルエットにすることと流し撮りばかり行っていたから、たまには正面が写るようにと考えて選んだ。さらにいえば、飯能市内のこれらの場所では人出が少ないだろうと思ったから。

まず目指した森のなかの踏切では列車の通過が正午すぎになり、日陰になってしまった。この日はダイヤ乱れで列車が遅延したためでもある。そこでこの列車の折返しは日が当たる高架橋からねらうことにした。午後は完全に順光になる。ただし、400mm以上の焦点距離ではないとケーブルと架線柱の処理がむずかしい場所だ。



やってきた列車の正面には午後の強い西日が当たった。運転士氏と添乗員氏がまぶしさに同時に目をしかめるのがファインダー越しでもわかった。例の編成番号札もよく見えた。

高架橋から振り返って飯能の町を行く列車も撮った。脚立が好きではないので、高架橋の防音壁に背をつけて、息を止めて縁石にかかとを乗せて背伸びしながらの撮影だ。この日は穏やかな晴れで風が少なくて、湿度がわずかに高くて空がかすんでいた。つまり、富士山が見えなかった。そこで、富士山のある部分を画面に入れず、列車と架線、遠くの高台の家並みが逆光で輝くことを意図して450mm相当でねらった。

「翼よ、あれが飯能の灯だ!」などとかっこいいことをいいたくなった。うそ。

ほぼ同じ場所からでもカメラの向きを変えただけで、前後のようすがこれだけことなるのがここのおもしろさだと思うのだ。

さらにいえば、八高線・川越線は都市郊外の住宅地を抜けて、多少は残された田畑や雑木林の見ながら走り、いくつもの川を渡り丘陵を越える。そのためか走行距離がそう長くはないのに、沿線風景が多彩な変化に富むところが魅力的なのだとさえ思う。工夫すれば八高線・川越線は私にもいろいろな写真にできるのではないかというのが、今年のあらたな発見だ。209系3100番代を口実に沿線を訪ねてみて、八高線・川越線自体の撮影がすっかりおもしろくなってしまったのは、この沿線風景の多彩さにある。


この日はこのあと、高麗丘陵端の高架橋から飯能の町をまっすぐに南下して40分ほど歩き、西武池袋線と交差する高架橋へ来たところで、ちょうど日没した。画面奥に見えるのが加治丘陵だ。飯能市の高麗丘陵の始まる北端から加治丘陵の始まる南端までの扇状地の部分を縦断して歩いたことになる。東飯能の両端に勾配があって、ひょっとしてこれもまた「坂道シリーズ」なのでは(いや、ちがう)。僕は嫌だ、なんちゃって。いうことがいちいち古いよな。

■1月4日より一部区間でワンマン運転開始か
八高線・川越線にお詳しいフォロワーの方によれば、過去の例ではその編成の運用離脱直前にこうした特製編成番号札が掲出される例が多かったという。じっさいに、21日に走り始めたハエ72編成は、22日には走らず、23日から25日かけてこの編成番号札を下げて運用入りした。そして、26日以降は本稿執筆時の27日を含めて動いていない。

輸送サービス労組八王子運輸区分会(リンク先はTwitterアカウント)が報じるところによれば、労組側にJR東日本より「1月4日(火曜日)から拝島〜高麗川と高麗川〜川越でワンマン運転を実施する予定」と伝えられたという。この一部区間でのワンマン運転は3月からの全線でのワンマン運転化への習熟のために行われるのだろう。

これが事実、あるいは確定事項だとすると、ワンマン運転対応改造がなされていない209系3100番代は、それ以前に運用離脱するだろうと推測できる。

そう考えると、クリスマスにかけてハエ72編成が特製編成番号札を下げて走ったのは、「中のひと」たちからのクリスマスプレゼントだったのではないかと思えてならない。これは半分冗談だけど、半分はまじめにそう思う。

22日にE231系3000番代ハエ42編成が宇都宮線で詳細不明の試運転を行ったために、その前後の準備などのために予備車であるハエ72編成が充当されたというのが、おそらくは正当な答えなのだろう。それでも「みんなをおもしろがらせよう」と「中のひとたち」が考えたのではないかと、楽観的に考えるほうがなにかと楽しい。

これより先の年末年始にハエ72編成がどうなるのかは、私にもわからない。もし走る姿を見かけることができれば、私ももちろんうれしい。だが、年内に予期せぬ活躍を見ることができたのはよかった。思えば2021年の年始にも私はハエ72編成の撮影をしていたのだから、今年はこの電車の運行に楽しませてもらった。

この特製編成番号札の掲出や各種運用は、Twitterに目撃情報や運行予想をアップしてくださるツイッタラーのみなさんのおかげで知ることができた。撮影地探しに参考にさせてもらっている方にも、駅でようやくお会いできてとてもうれしかった。

ハエ71・72編成をはじめとするいろいろな列車の撮影がみなさんのおかげでできたことには、ほんとうに感謝をしています。いろいろと厳しい一年でしたが、芸能人をはじめ、さまざまな職業の方が「こういうご時世だからこそみんなを楽しませよう」という行動をなされるのを目にするたびに頭が下がります。私自身も、思えば「カメラや写真があると人生がもっと楽しくなるかも」という、なにかしらのヒントをみなさんに伝えることが自分の仕事なのだ、と改めて思わされました。今年も一年間のあいだ、拙文におつきあいいただきありがとうございました。

来る2022年がみなさんにも、もちろん私にも、おだやかでより実りある一年になりますように。

【撮影データ】
NikonDf, NikonD7200/AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D, AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED,  AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW/Adobe Photoshop CC