秩父鉄道の三輪(みのわ)線を行く鉱石貨物列車に、運よくデキ100形が充当されないかなあと願いながら正丸峠を越えた日の話の続きだ。三輪鉱山行きの2本目の列車の列車の先頭にデキ103号が立つのを見て、私は思わずガッツポーズをした。エイドリアーン!
その後、5本分の鉱石貨物列車の出入りを同じ場所で待った。ちなみに、その日はデキ504(もとピンクで下り方がガチャ目)-デキ103-デキ501(下り方がガチャ目)-デキ302(黄色)-デキ506(赤)という「ド派手」な取り合わせだったぜ。
7006列車までの5本の鉱石貨物列車の出入りを同じ場所でしつこく撮ったところで、三輪線の主(ぬし、もしくはあるじ)の方が「今日は鉱山には列車はもう来(き)ねえよ」と埼玉北部方言で教えてくれた。そこでその助言にお礼を言って、武甲山の麓の駅から上り列車に乗り込んだ。
その列車から武州原谷貨物駅を通過する際にヤードを見ると、デキ102号がいた。
■デキ102号の予期せぬ登場に身構えていたら
乗客がいる普通列車に乗っていたのでそしらぬ顔をしつつも、私の血圧は急上昇した。ぬわにぃいいいいい! 次の三ヶ尻行き7106列車の先頭にデキ102が立つだとおおお! という感じの声を脳内では上げた。どうやら朝見かけたデキ504号は7104列車を牽引して武川で交代して、その相手がデキ102号になったようだ。いやしかし、全部で3両しかいないデキ100形の2両を目にすることになるとは。デキすぎた話だと思ってデキデキ、ではなくてドキドキした。
そういうわけで、雪の日にも降りた勾配の下の駅で降り、あのときには雪の降りかたが激しくて使わなかった300mmをD7200ボディに装着して、450mm相当にしてカメラをセットした。そして手元の時刻表を見ると、どうやら鉱石貨物列車同士で上下交換をするようだ。そこで、35mmフルサイズのDfボディには180mmをセットして、上下ともに写すことができるようにして待ち構えた。
そこへまずは、返空の武州原谷行き7205列車が副本線にやってきて停止位置に停まった。その姿にも心臓が飛び出そうなほど驚いて「くぁwせdrftgyふじこlp」という声を上げそうになったのだが、まずは勾配を降りてくるデキ102号に集中することにした。
■まずはデキ102を確実に
いいか、あわてるなよ。よーく引きつけてから撃て! と私はまるで狙撃兵か何かのような心境だ。ここで「ファイエル!」という言い方をすると、卿(けい)らの好きな帝国軍だな。
三脚を立てているとはいえ、450mm相当では注意しないとぶらすこともありえる。そして、バッファメモリー容量がそう多くはないD7200をRAW+JPEG撮影をするには、連写をしすぎていちばんいいシャッターチャンスを逃すこともありえる。最近SDXCメモリーカードを交換したとはいえ、そう高速なカードでもない。だから慎重になんどかレリーズをした。
■交換相手の先頭はデキ105号
積車の鉱石貨物列車の先頭に立つデキ102号はゆっくりと慎重に勾配を降りてきた。運転士氏が思い切りブレーキハンドルを回しているのがファインダー越しに見えた。そうして7106列車のデキ102号がどんどんと近づくまでAF追従させつつレリーズを繰り返した。そして列車がぎしぎしぎし……という感じで近づいてきて、フレームアウトしてから、上り方を振り向いて180mmをつけたDfを構えた。タタンタタンタタンタタンと目の前を上り列車が通過していく。
最後尾のヲキフが目の前を過ぎると、対向列車の姿をファインダー越しに目にすることができた。その対向列車の先頭には、鉱石貨物列車を牽引する姿を撮りたいと望んでいながらなかなか私が遭遇できなかった、茶色塗装になったデキ105号がいた。
【撮影・RAW現像・レタッチについて】
レンズの選択:曇りがちだし勾配を降りてくる列車をねらうのと、やや離れた駅にいる列車の姿をねらうために、望遠レンズを選んだ。D7200には300mm F4を装着して450mm相当にし、Dfは180mmをつけた。
露出設定:曇り空だからね。「飛ばさずつぶさず」という露出に設定してRAW+JPEGで撮影し、RAW現像とレタッチをする。
絞り値:絞り開放からせいぜい二絞り程度にとどめる。300mm F4のレンズはF5.6からF8程度、180mm F2.8でもF5.6程度までしか絞らない。
ホワイトバランス:ホワイトバランスは5,000Kの数値入力だ。
AF(オートフォーカス):いつものようにAFモードは「コンティニュアスAFサーボ(AF-C)」で「AFエリアモード」は「ダイナミック9点」を選択し、AF追従撮影を行なった。親指AFによるフォーカスロック(AFロック)も併用している。
RAW現像:ハイライトを抑えるためにハイライト部分はマイナス補正し、シャドーを見せるためにシャドー部分をプラス補正をした。画面全体の明るさはRAW現像ソフト上で露出量の再設定をして決める。絵作り設定はAdobe Camera Rawの「カメラスタンダードv2」で、彩度は+10程度だ。ヒストグラム表示と警告表示も見て確かめつつ、RAW現像の最後に慎重に足す。
レタッチの内容:画面四隅に周辺光量落ちを作っている。画面内に意図せず写り込んでしまったものをめだたせないように、レイヤーマスクを作成してその部分の彩度と明度を落とす処理を行った。
【撮影データ】
Nikon Df, D7200/AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED, AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW