■秩父鉄道1000系電車1009編成のラストラン
2011年2月19日土曜日。天気は晴れ。今日は秩父鉄道1000系国鉄リバイバルカラー関西本線タイプ1009編成(通称「うぐいす」あるいは「ガチャピン」)の最終運行日だった。私はふだんは訪れない有名な撮影地で下り記念列車を撮った。
この場所は、現職の政治家ながらも国鉄型蒸機マニアでもある以前の国土交通大臣が撮影したことでたいへん有名になった、荒川の矢那瀬と呼ばれる付近近くの直線区間だ。国道140号線のオーバーパスの手前だ。かんぽの宿のある駅から徒歩20分程度だろうか。電車利用では私はいままではたまにしか訪れなかった場所でもある。
でも今日はここで撮るために、公共交通機関利用派の私がめずらしくクルマで秩父へ来た。日中停めることができる役場の大きな駐車場に自分の車を停めて、11時50分ごろに通過する電車を撮るために9時半には現着しておりました。
■子連れ鉄での列車撮影は最小限でいい
まるでものすごく気合を入れていたみたいに見えるね。すみません、ちょっとばかり嘘をついた。クルマで秩父鉄道沿線には来たけれど、この場所へはいつもお世話になっているTakaさんに連れて来てもらった。公共交通機関派の私が今日はクルマで沿線に来たのは......じつはチビっ子と子連れ鉄をしていたから。
というのは、私が数日前にこの1009編成の撮影に出かけることを宣言したら「えー。ひとりでいくなんてずるい。さよならうんてんのときはいっしょにいきたい」とこそチビっ子はのたまひけれ。そのくせ子どもは朝はなかなか起きられない。機材を抱えての抱っこダッシュや抱っこしながらの片手撮りをするには、公共交通機関だけ利用するにはもう大きくなって重くてつらいのだ。
しかもじつは私、イベント列車などの特別列車を撮るのは苦手だ。緊張しちゃうから、というヘタレだ。それに、秩父鉄道100系電車の国電リバイバルカラーの離脱となれば、沿線にはけっこうな人出が見込まれる。おまけに、子連れだと迅速な行動はできない。
そこで、さよなら列車である臨時急行影森行きの往路のみを撮影し、復路は途中駅から乗車することにした。運がよければ乗車駅から上り列車を駅撮りできれば万々歳ということにしよう。
子連れ鉄では撮影目標は最小限にしておくほうがいい。いま思いついて作ったことばでいえば異性との「デート鉄」も同じだろう。こういう場合は鉄道車両はあくまでも引き立て役であり、だいじなのは子ども、あるいは、デート鉄ならば異性のお相手が主役で、彼または彼女といっしょに楽しく過ごすことが主目的だからね。相手を放っておいて退屈させてしまうのはよろしくはない。
話を戻すと、この臨時急行列車は特別料金は不要だ。撮るだけではなく最後の走りも味わいたい。チビっ子は乗るほうが好きだし。
■とかいいながら凡ミスだらけ
そんなわけで、往路はTakaさんといっしょに波久礼駅先の第4種踏切付近の直線区間でしばし粘った。有名な場所になっただけあり、すでに先客が一人いらした。さらに、列車通過までに10名ほどの撮影者が集まった。それでも、前国有鉄道のイベント列車の運行時ほどの混乱ぶりもなく、和気あいあいとした雰囲気で撮影できたのは何よりうれしい。
ねらった列車は定刻通りに姿を現した。自分の周囲のみなさんのカメラからレリーズ音がほとばしる。そんななか、列車はけっこうな速度で走り抜けて行った。三脚に据えたカメラをずらしてしまうというハプニングがありましたけど、まあなんとか撮れた。うーん、Takaさんのように側面ももっと写せばよかった。
じつは今日は凡ミスがほんとうに多かった。朝は待ち合わせに遅刻し、ウグイスの直前に来た大好きな秩父鉄道リバイバルカラーの1002編成を撮ろうとしたらピントを外したし。クルマの運転と子連れで自分に余裕がなかったのだろう。帰りにも道をまちがえる、ガソリンスタンドでどうしても給油口が引っかかって空けられなくて給油できずひやひやしたとか、チビっ子が手袋を昼食をとったドライブインに忘れたことに帰りに気づいて、店じまいする前に電話を入れてクルマで受け取りに戻ったなどと、いま思い出すといろいろあったのですよ。無事に自宅に帰り着いてよかった。
■チビっ子の写真ばかり撮っている変なおっさんですみません
さて、昼食をとってからは復路の列車をねらうTakaさんに最寄り駅まで送っていただいた。その駅で時刻表を睨み、急行停車駅である皆野まで出て上り列車を待った。ホーム端に立ちAI AF Zoom-Nikkor 80-200mmの200mmの望遠端で引き寄せて撮った。車掌氏が警戒している感じが写った。そうしていよいよ列車に乗り込んだ。
車内はほとんどが「同業者」の鉄のみなさまで、思い思いに最後の走りを楽しんでいる。そんななかで子連れででかい荷物で乗り込んで来て、座席に座らずに走行中にうろうろしながら車内の各部や連れてきた子どもを落ち着きなく撮る私は「すげー変な奴」だったろう。仕事をしている気持ちだったよ、あのときは。さわいではいないけれど、みなさんすみません。
列車は寄居でスカイブルーの1001編成と交換した。乗客のほとんどがガチ鉄であるこの列車では、列車交換があるたびに車内とホームがちょっとした騒ぎになるのがおもしろい。
さて、「さよならうんてんにのりたい」といっていたかんじんのチビっ子氏は、寄居を過ぎたあたりからまぶたがとろとろとふさがり始め、とうとう小前田あたりで寝入ってしまった。保育園の昼寝の時間だからね。
まあいい。チビっ子はそのうちに「秩父鉄道1000系電車1009編成のさよなら列車に乗ったこと」は忘れてしまうだろう。それはかまわない。出かけて電車に乗って楽しかったなら、父親と「列車に乗った楽しさ」だけでも記憶の片隅にでも残しておいてくれたら、じゅうぶんだ。
さよなら列車は熊谷に到着した。入れ替えをして、方向幕に「おわり」が表示されたようだ。私は眠ってしまった子どもがどうやっても起きないので、沿線に停めてあるクルマに乗せるために三峰口行きに乗り込んでそそくさと熊谷を後にしたので、1009編成の入れ替え終了後の姿は自分の目では目にしてはいない。
さようなら、ウグイス! お前には去年と一昨年に何度も乗ったし撮らせてもらったよ。いい思い出を作ってくれてほんとうにありがとう。
それから、Takaさんをはじめ撮影地でご一緒したみなさま、子連れでお騒がせして失礼いたしました。子どもには撮影地で走り回ったりカメラの前で急に立ち上がったりしないような仕込みはしていますが、みなさまにご迷惑でなければよかったのですが。
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【撮影データ】
Nikon D2X/AI AF Nikkor 35mm f/2D, AI AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>/RAW/Adobe Photoshop CC 2020