2021年4月21日水曜日

【カメラ機材の話】「コンタックスメタルフードよ! 私は帰ってきた!」などといいながらDタイプAFマイクロニッコールレンズにコンタックスメタルフードを装着している話

AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D(右)+67/86リング+メタルフード4
AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D(左)+55/68リング+メタルフード5

■コンタックスメタルフードをまたあれこれしているわけですよ
コンタックスメタルフードというものがある。以前数回ほど話題にしたあれのことだ。1974年から2005年まで京セラがカメラ事業を行なっていたころに、コンタックスのブランドネームで商品展開を行っていた。そのうち、カール・ツァイスブランドで35mm判RTSシリーズフィルム一眼レフ用のマニュアルフォーカス交換レンズ向けに用意されていた、金属製で組み換え可能な円筒形のねじ込み式レンズフードをここでは指す。

ねんのために記しておくが、現在のコシナ製カールツァイスブランドの一眼レフ用交換レンズのフードのことではない。ソニーEマウントや富士フイルムXシリーズ用でもない。京セラのカール・ツァイスでもAF化されたNシステムや645には、前述の現在の各種カールツァイスブランドレンズ同様にバヨネット式の専用フードが用意されているので、本稿では言及しない。また、金属製でねじ込み式の京セラ時代のGシリーズ用レンズフードも、筆者は自分自身で所有していないので本稿では触れない。

なお、京セラおよび前身のヤシカ時代は”Carl Zeiss”をナカグロ(・)つきで「カール・ツァイス」とカタカナ表記したが、現在はカールツァイスの日本法人である「カールツァイス株式会社」の社名も、ソニーで発売している各種レンズも「カールツァイス」と記し、ナカグロを書かない。さらにいえば「ツアイス」ではなく「ツァイス」だ。キヤノンの「ヤ」、富士フイルムの「イ」とはことなり小さい「ァ」で書く。

私はカール・ツァイス交換レンズを一本も所有したことが……Pentacon Six用の旧東ドイツのカール・ツァイス・イエナ(CZJ)のBiometar 80mm F2.8とFlektogon 50mm F4だけは持っていたか。よく考えてみたら、これらCZJレンズとKIEV-6SおよびSALIUT-S(KIEV-88)用レンズのためにコンタックスメタルフードを買ったのだった。今後は、現在のカールツァイス最新交換レンズであるOtusとMilvusを揃えるくらいの暮らしのゆとりがほしい。

余計な文字列が非常に多いな。とにかく、レンズは持っていなくてもかつての京セラコンタックス交換レンズ用のメタルフードだけはいくつか所有している。いくつかというよりは「いくつも」。「フード病」患者というよりも「レンズフードの鬼」だからね。あんたバカァ、だな。

AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D

AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8Dには⌀62mmのフィルター枠を装着している
62-67mmステップアップリング、67/86アダプターリング、メタルフード4

■金属製で作りがよくて汎用性があるが「効果」はあれだ
それは、金属製でしっかりとした作りが好ましいから。さらに⌀86ミリ口径の1から5までナンバリングされた円筒形フードを、レンズのアタッチメントサイズに合わせたアダプターリングと組み合わせるシステムが興味深いと思っていたからだ。

ただし、口径が大きい円筒式の金属製フードであるために、広角レンズには実用性があるとはいえない。大きくてカバンのなかで収納スペースばかり食い、重くなる。

一方、標準域から望遠域の焦点距離であれば、うまく組み合わせることができれば、斜光線によって生じるフレアを防ぐというレンズフードとしての効果を見込めるものもある。微妙な書き方をしたのは、⌀86ミリ口径にまで口径を広げてあるぶん、口径の小さいレンズで効果を得るには長さ(深さ)が足りないのではないかと思われるものもあるからだ。もっとも、古いレンズでは画面内に光源が入るような完全逆光では、レンズフードがあってもフレアは防ぎきれない。

もし1から5のメタルフードの前面にもねじが切ってあれば、連結して長さ調整がさらにできてなおよかったのにとは思う。いまさら思ってもどうしようもないので、レンズ側に装着するアダプターリングの長さを調節するほかない。同じ口径で連結できる金属製の円筒式のフードというものは、残念ながら国産用品メーカー製品には2021年4月現在では、在庫の残っているニコンおよびキヤノンのゼラチンフィルターホルダー用レンズフード以外には存在しないようだ。なにかと自力更生の精神を求められる海外製品でも数少なく、根気よく探す必要があるはずだ。

だから絶版になっているかつてのキヤノンゼラチンフィルターホルダーや、以前存在した共同写真要品(KPS)の連結式の円筒形レンズフード(K.P.S.プロレンズシェード)を持っている方は、大切にしたほうがいい。不要なら筆者にぜひお譲りくださいませ!

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dには⌀52mmのフィルター枠を装着している
52-55mmステップアップリング、55/68アダプターリング、メタルフード5

■とつぜんDタイプAFニッコールレンズに装着したくなった
これらコンタックスメタルフードを、おもにマニュアルフォーカスのAIニッコールレンズに装着していたのがいままでのお話。それが、ふと思いついてDタイプのAFマイクロニッコールレンズに組み合わせてみたところ、またおもしろくなってしまったというのが今回のエントリーだ。そのひとことをいうまでに、まるでA4用紙で28枚ぶんくらい長くて申し訳ない。

今回試しているのは、AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D+⌀62mmフィルター枠に62-67mmステップアップリングを介して67/86アダプターリングとメタルフード4という組み合わせと、AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D+⌀52mmフィルター枠に52-55mmステップアップリングを介して55/68アダプターリングとメタルフード5という組み合わせだ。

それは、DタイプのAFニッコールレンズにはレンズフード取りつけ部分がフォーカシングの際に動くレンズが多いから。AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-EDとGタイプレンズは取りつけ部分が可動しないからいい。取りつけ部分が可動するレンズに、やや重量があり本来は装着を想定されていないコンタックスメタルフードを装着することは、AF駆動系に負担を与えるのではないかと危惧する。だから、あまり強くはおすすめしづらい。

直線的なデザインのレンズには似合う……と思いたい

■似合うことは似合う
くどい注意書きをしているのは、真似される方はくれぐれも注意してほしいから。やや重量のあるこの手のレンズフードをAFニッコールレンズに限らずフード取りつけ部分が可動するレンズにもし使うならば、常時装着しておくべきではない。強い逆光や斜光線のもとで必要なときにだけ装着し、ふだんは外しておくほうがいいだろう。

AI AF Nikkor 35mm f/2D+55/86リング+メタルフード2
これは見た目が大きくなるだけだ

カメラバッグに収納するさいには
ポーチに入れてからフードを外してかぶせる

機材を大げさに見せるのが好きならば似合うとは思う。効果よりも外観ばかり気にする重症の「フード病患者」だとも思う。だが私にはコンタックスメタルフードは観賞用ではなく撮影に持ち出して使う実用の道具だ。手持ち撮影でハレ切りしたいときには、ハッセルブラッドプロフェッショナルシェードでは使いにくいことがあるので、手持ちのものでなんとかできないかと考えたわけだ。あ、よく考えたらハッセルブラッドプロフェッショナルレンズフードも、カール・ツァイスのレンズ用だ。

Df/AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D

Df/AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D

また、コンタックスメタルフードには残念ながら、重量があることと収納スペースを食うこと以外に、逆づけができないという短所もあるので、そのことも考慮する必要がある。そこで、カメラバッグ内に収納するには、レンズ本体をラッピングクロスに包むかポーチに入れて、そのうえでレンズフードをかぶせるといった工夫をしよう。金属製レンズフードで頑丈であるために、レンズを何も包まないでいるとカメラバッグ内でレンズとフードがこすれて傷をつけることもありえるからだ。レンズフードの傷は勲章だと考えよう。いやならレンズフードもカメラバッグ内でなにかに収納しよう。

D7200/AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D

こういう余計なことをおもしろいと思うのが、「写真好きでカメラ好き」の困ったところだ。カメラ好きと写真好きはともにカメラを所有していても、「混ぜるな危険」というくらいにずいぶんキャラクターや思考がことなる。私自身は買い物好きではなく、コレクション趣味も持ち合わせていないが、撮影に役立つ道具ならば好きだというふたつの要素を持っているので、ときどき困る。ははははは。えらいひとにはわからんのです。

【関連記事】
コンタックスメタルフードをマニュアルフォーカスニッコールレンズに使用している例は以下にあるほか「レンズフード」ラベルからご覧ください。ニッコールレンズに限らず、レンズのアタッチメントサイズに合わせれば現在のレンズに使うことができます。また、私自身は試していませんが、口径の小さいGシリーズ用レンズフードはライカマウントなどの小ぶりなレンズに活用することができるでしょう。

「ふたたび京セラコンタックスの理想を掲げるために! 私は帰ってきた!」などと焼き菓子(gateau)のような名前の男のセリフを思い出しますね。現代のカメラとレンズにも昔のアクセサリーを活用して撮影を楽しむ、そんな写真生活のご参考になればと思います。

思えば、昭和の終わりから平成年間というのはカメラ関連アクセサリーのバリエーションを楽しむことができた、栄光の時代だったのかもしれません。実店舗で簡単に入手できましたし。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』を観て、エディット・ピアフの『バラ色の生活』(La Vie en rose)でも聴きますか。やっぱりいろいろ古めかしい。

でもそんな過去への郷愁を思いつつ、庭に咲いたモッコウバラを見ながら紅茶にバラのジャムを入れてうっとりと感傷にひたるのもときにはいいのですが、そればかりではなく、これら過去の遺産を活用して未来を自分の手で築いていきましょうぜ。


【撮影データ】
作例写真:Nikon Df, D7200/AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D, AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D/RAW/Adobe Photoshop CC
機材写真:Panasonic LUMIX GX7Mark II/LUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH. POWER O.I.S./RAW/Adobe Photoshop CC