2019年8月16日金曜日
【関西リハビリ鉄2019夏】もと「角ズーム」2連が走る。南海高師浜線PETIT撮影記
■もと「角ズーム」2200系電車がトコトコと走る
2両編成の電車ラブ! とは常日頃、筆者は口を酸っぱくしてこの草の根ブログにて主張していることのひとつだ。「口を酸っぱくして」しているくせに「草の根」というところが、じつに皮肉なとりあわせでいいでしょ。単行運転(1両編成)もいいのだけど、少々さみしすぎる。2両編成くらいの都市郊外ぐらいのところが好きだから、というじつに説明しづらいことが理由なのだけど。いいのっ。「好きなことは説明できない(たで食う虫も好き好き)」(There is no accounting for tastes. )と、おおむかしのひとも言っているでしょ。
前回は2両編成で走る近鉄南大阪線・吉野線の「吉野くん」、ではなくて16000系電車16007編成(Y07)を取り上げた。今回の南海高師浜線の2200系電車はいわば、2両編成つながりというわけ。「編成」と「つながり」もちょっとくどい感じがするね。
この高師浜線は、南海本線羽衣(はごろも)駅から伽羅橋(きゃらばし)を経て、高師浜(たかしのはま)に至る全長1.5キロの支線で、日中はおおむね1時間に3本程度運行されている。もっぱら、もと高野線の「角ズーム」22000系電車を支線運行用に改造をした2200系および2230系電車がトコトコと起終点を結んでいる。なにしろ、全長1.5キロメートルだから、歩いてもそう遠くはない。
■本線から大きくカーブして高架線を登って……おしまい
南海本線羽衣駅はJR阪和線東羽衣支線の東羽衣駅のすぐ目の前にある。もっか、高架化工事が行われている最中だった。改札口からホームに入っても高師浜線の乗り場がわかりにくい……。でも、よく目を凝らすと上りホームの奥に所在なげに2両編成の電車が止まっていた。平日の2時半頃という微妙な時間のためか乗客は数人だ。
さて、床下からときおりコトコトと懐かしい古いコンプレッサーの音をさせる電車は、羽衣を出ると大きく右にカーブする。おお、どうなるかなと思っているとすぐに高架線に登ってしまい、高架線を登ったところに中間駅の伽羅橋駅があった。あたりは住宅地で、駅前は団地に囲まれている。羽衣からすぐでも数人の乗降があった。
伽羅橋を出ると今度は列車は左に大きくカーブする。そうしてすぐに終点の高師浜駅に着いておしまい。
そうなのだ。あっというまに列車の旅はおしまいになった。
■どうにかして絵にしなくては、と考えて
ありゃ困った。これはまた……どうすれば絵にできるだろうか。そもそも、梅雨入りした頃の午後2時半過ぎという、じつに微妙でなんともならない季節と時間だ。光線状態を選ばないですむという利点があるとはいえ、なにかこう映えるといいますか、エモく撮りたい下心があるわけですよ、私には。それをどうも活かしにくい。
走りを撮るのだって、いったいどうすればいいんだああ!
高師浜駅の駅舎のステンドグラスを見上げながらため息なんかついたりして。なんでも、もともとは、高師浜とは「北の浜寺(はまでら)(堺(さかい)市西区)にわたる白砂青松の景勝地をなし、『万葉集』はじめ詩歌に歌われた名所であった。1897年(明治30)現南海電鉄南海本線、1919年(大正8)同支線高師浜線が通じてから海水浴場となり、沿線は臨海高級住宅地として開発された」(『コトバンク』掲載の日本大百科全書より引用。リンク先はコトバンク)そうで、南海電鉄公式Webサイトにもこうある。
「羽衣~伽羅橋間開通の翌年、大正8年(1919)10月に開業しました。高級住宅地として開発された周辺の街並みにあわせて、ステンドグラスを配した西洋風デザインの駅舎が建てられました」
(南海電鉄Webサイト「高師浜駅」解説ページより)
という、ちょうど100年前と古くから開発された住宅地なのだそうだ。もっとも、1961年(昭和36)以降、泉北臨海工業地が造成されてから高師浜は埋め立てられて、高師浜駅周辺も海からは離れた住宅地といったおもむきだ。
うーん、それは知っていたけれど……どうやって絵にしたらいいのだろう。蒸し暑いからそのまま列車で引き返そうか。ほんとうは、ここから浜寺公園まで歩こうと思ってきたのだった。浜寺公園にある阪堺電車の保存車両を見たかった。けれど、あまりの蒸し暑さに気力がしぼんでしまい、なんとなく線路沿いを歩き始めた。すると、高架下を歩けることがわかった。ちょこっと歩くと伽羅橋駅下の商店街にたどり着いた。
■もしかしてブレードランナー的に撮れるかも
伽羅橋駅下の商店街はまた、じつにクラシックといえばいいのだろうか。いわゆる公団住宅にある商店街に似たような雰囲気だった。ほとんどのお店はどうやらもはや店じまいされているようだ。クラシックさとシャッター商店街ぶりに少々息を飲みながら、レリーズした。
そうして、ほんの少し歩いただけで蒸し暑さにくじけた私は、伽羅橋駅プラットホームに登った。するとここは超望遠レンズがあれば泉北臨海工業地帯を背に走る列車を撮ることができそうな場所だった。どことなく南武支線にも雰囲気が似ている。
ファインダーを覗きながら考えた。もしかして、雨の日の日暮れどきに大口径の望遠レンズがあれば、映画『ブレードランナー』みたいな絵になるのではないか、と。そんなにひともいないし、空をクルマが飛んでいないけれど……それを再訪して試すことなく帰京してしまったので、もと角ズームが走っているうちに試すことができればいいな。伽羅橋駅のプラットホームのベンチに折り紙でも置いてくればよかったかな。
【撮影データ】
Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH. /LUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH. POWER O.I.S./LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S./Adobe Photoshop CC 2019