天理駅との駅間にある有名撮影地に行くなどという、自分にとってはとてもめずらしい行動をしたせいか、いやちがう、ぜんぶ梅雨のせいだ。という理由からか、ぽつぽつと降っていた小雨がだんだん傘が必要な降りかたになってきた。折り畳み傘はきちんと持っているとはいえ、田んぼに囲まれて雨に降られながらずっと待つのも楽しくない。
そこで、西名阪自動車道のあたりまで戻り、天理インター前のセブンイレブンに行ってあれこれと食べ物を買う。高速バスの天理バス停はここにあるのか。あたりには、「天理ラーメン」という看板のある店がいくつか見える。まったく知らなかったけれど、そういうご当地ラーメンがあるのね。
ところが私はラーメン屋にはめったに入らない男なのだ。せっかくお金を払って飲食店に入るのに、あまりのんびりできないでしょう。だから、ほかの選択肢がないときではないと出先でラーメン屋に行かない。それに、クッソ蒸し暑い日だったからさ。
そうやって、コンビニ飯をけっきょく買うのだから粋ではないなあ、と思いつつ櫟本駅に向かうと、途中の神社の参道とおぼしきところにたくさんの縁日が出ていた。あとで沿道にあった張り紙から知ったことをグーグル検索にかけてみたら、この日は櫟本和爾下神社(いちのもとわにしたじんじゃ)の祇園祭というお祭りの日だった。だから、祭り提灯があちこちに飾られていたわけか。なんでも、前日の土曜日とこの日曜日の開催で、夕方からは花火大会もあるとか。
それにしては、駅前の提灯を17時前にそうそうに片づけているけれど……。子ども連れや浴衣を着た若い子たちがあちこちにいて、地元の商店街でも飲み物やヤキトリを売っている。ありゃあ。これをあらかじめ知っていたら、セブンイレブンではなくてここで買い物をしたのだが。こじんまりしたお祭りでじつに雰囲気がいい。私は子どものころから、買い物をしなくても神社の祭りが大好きなのだ。
■電車の運用もなんだか「105系祭り」!
おどろいたことに、夕方になるにつれて列車の混雑が激しくなってきた。そうして、若者たちがどんどん櫟本で楽しそうに降りてくる。桜井線の奈良〜桜井はふだんでも乗降が少ないわけではないし、平日昼間でも2両編成の列車の座席がほぼ埋まる。それが、車内で立ち席の乗客が目につくのだから、やはり乗降はふだんより多いはず。
30分程度おきに列車がやってくる。そのたびに、駅前には若者たちがどやどやと列車から降りて、きゃあきゃあと騒ぎながらいちように神社のほうへ歩いていく。
いっぽう、列車の運用のほうも105系電車をめあてにしてやってきた私にとっては「105系祭り」といっていい状況に。いや、たんに「227系が連続してやってくる」という状態から「105系がどんどん来る」という状態になっただけなのだけど。
まず、16時50分に遭遇した奈良行き(和歌山線 560S 王寺15:39〜高田15:56→桜井線 高田16:13〜奈良17:01)が105系だった。そのあとも、17時20分頃に上下列車が交換した。王寺発奈良行き(和歌山線 562S 王寺16:24〜高田16:40→桜井線 高田16:44→桜井線〜奈良17:30)が、さきほど奈良に向かった560Sの折返し列車(桜井線563S 奈良 17:08〜高田17:57→和歌山線 高田18:01〜王寺18:18)と交換して、パンダ顔同士が並んだ。
そして、17時45分頃に遭遇した次の奈良行き(和歌山線 564S 王寺16:39〜高田16:58→桜井線17:05〜奈良17:53)も105系でクハは常磐顔。これは15時半ごろに遭遇した王寺行き(557S)が戻ってきた列車みたい。そして、17時50分発王寺行き(565S 奈良 17:37〜高田18:23→和歌山線 高田18:24〜王寺18:40)も、「パンダ顔同士の交換」で見た奈良行き(563S)の折返しだ。これだけ105系に遭遇できればけっこう満足してしまい、お腹いっぱい。いちど見た列車が折り返してくるというのが、その場にいてダイヤグラムではなく時刻表でダイヤを確認していても、さすがに理解できたし。
■雰囲気がいい
1898年(明治31年)の開業当初からのものとされる駅舎、跨線橋を備えていて、しかもプラットホームは8両編成まで対応している。おそらく、かつては中央に通過線があったのだろう。なかなか立派で雰囲気がいい駅だ。
さすがに、しとしと雨の中で立ち続けて列車をみるのにも飽きてしまい、改札をして駅に入り、プラットホームのベンチに座って駅舎や設備を眺めていた。まあ、結局はさらに18時25分頃の列車交換を見て、さらに19時の列車までいたのだけど。
18時23分発の王寺行き(桜井線567S 奈良18:12〜高田18:57→和歌山線高田19:06〜王寺19:22)は想像通りにさきほど見た常磐顔の奈良行き(564S)の折返し。そして、奈良行きは(和歌山線566S 王寺17:26〜高田17:43→高田17:43→奈良18:33)は227系。
そうして、日没になったので帰るために乗ろうと思っていた列車は19時2分ごろに予想通り……227系同士で交換した。高田行き(569T 奈良18:51〜高田19:37)がまず先にやってきて、そのあとで奈良行き(568S 王寺18:04〜高田18:21→桜井線高田18:28〜奈良19:15)がやってきたので、乗り込んだ。
真新しい227系電車は明るいし冷房がきちんと効き、さらに静かに揺れも少なく走るのはいい。105系電車の敵役ではあっても、あまり憎めないな。これだけを撮影しに首都圏の自宅から大和地方まで来るかと言われたら、そこまではしそうにないけれど。正面のパノラミックウインドウのせいか、115系電車を正常進化させたみたいに見える。LEDのライト周りはちょっと変顔だけど……和歌山線にはセミクロスシートなら車窓が見やすくて楽しそうなんだけどなあ。ともあれ、ふだん利用するみなさんには、桜井線内ではどう見ても短距離で着席しやすいロングシートのほうがいいし、和歌山線でも「奈良や高田、王寺から和歌山までずっと乗り通す」乗客はヲタくらいしかいないだろうから、ロングシートで足りてしまうのだろう。
それはともかく、これから桜井線を走る105系電車をどうやって撮ろう……持っている装備では300mm相当の望遠までしか使えないし。それでも、昨年は30mm相当と85mm相当しか持っていなかったから、ずっと撮影しやすいはずではある。でもなあ、うーん。はて、どうしたものか、といささか考え込みながら家路についた。
「2019年9月30日に227系電車1000番台の投入が完了する」とJR西日本が発表したようなので、この夏しか撮影する機会が自分には作れそうにないからね。
【撮影データ】
Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH. /LUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH. POWER O.I.S./LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S./Adobe Photoshop CC 2019