2020年1月6日月曜日

【JR奈良線103系撮影記事】JR奈良線103系で撮り納め その2 国鉄型ヲタの2019年はこうして暮れた


■103系電車に乗ってとあるイタリアンレストラン「S」に行く
JR奈良線103系電車をわざわざ大晦日に追いかけた話の続きだ。午前中に宇治と棚倉で曇られた。きちんと撮ってはもちろんいる。そのあと、寒さに嫌になって京都行き列車に充当された103系NS409編成に乗った。昭和の国電はじつにいい音を立てて走る。もっとも、JR奈良線を走る列車は205系も221系も、界磁添加励磁制御でようは抵抗制御の改良版だから、インバータ制御のいまの電車よりもずっと重々しい「国電らしい走行音」がして、どれもいい感じだけどね。

ところが、温かい電車に乗ったから京都まで行ってみようかな……と思っているうちに、今度は空はみるみるうちに晴れてきた。晴れたんだよ、ほんと!

これはもう……なにごとも簡単にあきらめてはいけない、という天の啓示かなにかにちがいない。ずいぶん自分に都合のいい啓示だけどなあ。

そこで私はまたもや宇治で降りた。そうして宇治橋西詰のとあるイタリアンレストラン「S」(とくに名を秘す)宇治里尻店へ行った。晴れたけれどお腹が空いたのだもの。宇治に行くたびにこの「S」に行っているのは、宇治橋の目の前という立地のよさにつきる。観光客向けのお店とちがい、どうしてもならばささっと出ることも可能だから。そこで「S」にてしばらく休息す。

食事を取りながら「だれだれはむっちゃリア充や」などとクラスや部活の子たちについて話す中学生くらいの子たちの会話などを耳にするわけです。根暗なカメラのおっちゃん……陰キャにもほどがあるよな……ほっといてください。


■晴れた空を見ながら「負ける気がしねえ」とほえる
とあるイタリアンレストラン「S」を出て目の前の宇治橋に行く。午前中の暗い空が嘘みたいだ。ただ、計算外だったのは太陽の位置が夏と冬でだいぶことなること。8月にしかここで撮ったことがなかったのでわかっていなかった。夏はここからだと、午後は宇治橋から撮ると完全逆光なのに、冬だと列車の宇治方正面から日が当たるのだ。

でもまあいいや。午前中の暗い写真からはおさらばだ。おっちゃんのこと暗いやつやなんて誰にもいわれへんように、明るい写真を撮るでえ! などと夢想しながら待った。負ける気がしねえ! さっき乗った103系電車、はよ来い!


■ある意味「なにか持ってる」気がする
ところが、この謙虚さのない「負ける気がしねえ」などという思いに産土の神が眉をひそめたのか。宇治まで来たのに平等院をお参りしとらんやろ……という仏の怒りのせいか、ようしらんけど。さふ思ひて矢合わせなどす。

103系の南都……じゃなくて城陽行き各駅停車が姿を現すころに、太陽はまたしてもお隠れあそばされたのでありまして、宇治橋のあたりこそを暗くされたまひけれ。♪ウタムリョンナエソーンツェええ(ロシアタンゴ『つかれた太陽』←もうヤケ)……笑ったわ。スピリチュアルなものごともオカルトもいっさい信じないし、神仏にもまったく興味がない。運とか厄、そういうものもまったく当てにしない、古文は好きだったけれど文法はあらかた忘れた私でも、いま俺はなんかすごい……なにか持っているのではないかと思った。

俺の邪気眼、やりすぎだろ! ガチで大負けしてるじゃんか。


■好きな電車から美しい景色を見られてしあわせなんじゃない
ちょっぴりいらっときたのは、このあとまた雲が晴れたこと。でももう、宇治橋で城陽から戻ってくる列車を待つのはやめることにした。光の具合がいまひとつ気に入らないという思いもある。JR奈良線複線化工事のために、宇治橋東詰の京阪宇治駅方(JR奈良線黄檗方、宇治川右岸)の河川敷には入れないようだったし。そこで、荷物をまとめて宇治駅に行き、ふたたび南都……奈良行きの103系電車に乗ることにした。南都へこそ落ちんとおぼしけれ。

城陽からの折返し電車はすぐにやってきた。だんだん日陰が多くなってきたので、もうまじめに走りを撮ることはあきらめた。稲荷ほどは混雑していない東福寺で降りて、奈良行きとして折り返してくるのを待ち、ふたたび乗り込んだ。





すでに16時ごろで日没の時間だった。空がみるみる暗くなっていく。大気が澄んでいる季節でもあるせいか、それともふだん暮らしている町ではないから新鮮なせいか、あるいは大晦日の夕方に列車に乗っているという感傷のせいなのか。おそらく答えはぜんぶ。窓から見る日没の空のようすに息を飲んだ。急ぎの旅でもないのだから、棚倉あたりでいっそのこと降りてしまおうかと思ったほど。なにか絵にしたいけれど、絵にできないのも仕方がない。だから、この空のようすだけは覚えておこうと思った。仕事柄、写真にしたくてできないという状況ははがゆいとはいえ。

でもね、よく考えたら、大晦日の夕方はふつうはなにかとあわただしくて、遠出なんてできないよね。それがこうして、好きな電車に乗って日没を眺めていられるのだから、ずいぶんしあわせなんじゃないかな。写真に撮れなくてもしかたがないや。




けっきょく、103系電車に奈良まで乗った。奈良から堺をめざすことにした。けれど、近鉄には乗らない。『大和路快速』で王寺に行き、各駅停車の201系電車に乗りかえた。できるだけ国鉄型に乗らないといけないだろ、という思い込みによる命題があったから。柏原で近鉄道明寺線にふらっと乗り換えそうにはなったけれどね……。大晦日はそんなわけで、国鉄ざんまいで過ごした。ヲタ的にはずいぶんとしあわせな過ごし方だったと思うんだ。もっと乗っていたかった。

【撮影データ】
Panasonic LUMIX DC-S1, S1R/LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S., LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S./RAW/Adobe Photoshop CC 2020