2019年8月24日土曜日

【関西リハビリ鉄2019夏】令和を走る昭和の国電! JR奈良線103系撮影記事 その3「ふたたび宇治にて討ち奉れ」


■103系に揺られるたびに
じめて訪れたJR奈良線の不動川隧道で、103系NS409編成(クハ103-226、モハ102-611、モハ103-455、クハ103-225)が充当された上下の列車を撮ることができ、さらには予期していなかった103系電車NS407編成(クハ103-216、モハ102-614、モハ103-458、クハ103-215)の運用入りも知って満足した私は……蒸し暑さにめげて冷房の効いた電車に揺られることにした。

午前中に滞在先を出たときには空に晴れ間が見えたのに、奈良線沿線に着いてからずっと白っぽい曇り空であることも、撮り方をあらためて考える必要があると思わされたからだ。それにもちろん、1年ぶりに103系電車にも乗ってみたい。そこで、やってきた上り京都行きのNS407編成に乗り込んだ。

奈良線で用いられている、というよりもJR西日本で残存している103系電車はみな改修工事によって戸袋窓が埋められている。内装も明るい色合いに変更されているから、登場時の姿とはだいぶ異なる。大むかしは壁面は薄緑色の化粧板が貼られていて、床も灰色だったからね。埼玉・大宮にある鉄道博物館の101系電車900番代クモハ101-902のアレだ。そういえば、秩父鉄道1000系電車にもそのようすが残されていたのだったっけ。

国鉄民営化のころ、平成初期のころに各社の103系電車の内装に大規模改修が行われ始めたときのことはよく覚えていて、常磐線、武蔵野線や青梅線を走る103系の内装も手を加えるとこうして雰囲気が明るくなるものだなあ、と感心したものだ。とくに床の灰色を明るい色にすると明るく見えるようだ。103系電車はありふれておもしろみがない電車というのが、二十歳の頃までの私の偽らざる気持ちだった。それが、これら平成初期の大規模修繕が行われた車両を見て、103系もなかなかいいじゃないか、と見方が変わった。それからさらに四半世紀も経っているわけか。



さて、棚倉から乗った上り列車は玉水にかけて力強い力行を始めて、そのたいへん懐かしいモーター音やブレーキを耳にしながら……どうしても私のまぶたは開いたままでいられなくて。ええと、ここでまた記憶の消失が……さようならみなさん、さようなら……ぼくはしにましぇーん……生と死は等価値なんだよ……そうだ、京都行こう……。

はい。そんなわけで目が覚めたら京都だった。あずまびととしてはしかし、列車の中で居眠りをして目覚めたら京都(もしくは奈良)というのは、とてもぜいたくな感じがする。そんな生活をするためにJR奈良線沿線に引っ越すか。並走する近鉄京都線沿線でもいいか。

きみがなにをいっているかわからないよ、カヲルくん!

■青空が見え始めて「橋合戦」に思いをめぐらせる
京都で運賃の精算をしてもらい、ふたたび103系電車が充当される列車に乗り込んだ。NS407編成はこんどは各駅停車の城陽行きになった。さすがに居眠りはしなかった。列車は京都を出ると東福寺、稲荷、六地蔵、木幡と走っていく。奈良方面から京都へ向かってくるはずのNS409編成列車とはどこで出会うのだろうか。

「すはやNS409編成こそ南都へおちさせ給ふなれ。おツかけて討ち奉れ」とて、木幡山うちこえて、宇治橋のつめにぞおし寄せたる……などと『平家物語』の「橋合戦」の気持ちだ。だが、ちょっとまってほしい。103系は以仁王で私は平重衡か。でもあずまびとだよな、私は。討ち奉れ討ち奉れ!

だが私の乗っている列車は数分の遅延をしていたらしく、上下の交換を行う黄檗での停車時間がいささか長い。そこへ、車掌から案内があった。

「14時頃に京都駅でバリバリッがあった関係で、奈良線の列車は現在バリバリッほどブツッております。この列車とバリバリッを行う列車も宇治駅をバリッほど遅れて出発しております。お急ぎのところお客さまにはバリバリッをおかけいたしますブツッ(マイクをオフにする音)」

肝心のところが、マイクのノイズのせいで聞き取れない。思わず笑ってしまった。いかにも国鉄形車両に乗っている気持ちになって、うれしくさえあった。なにしろ、まったく急がない客だし。

そう思っているうちに、空にかかっていた雲が切れた。宇治川を列車が渡るころには、すっかり青空が見える。橋板は外されていなかった。これはもう……宇治で降りる! そう思って下車の支度をしてドア前に立った。すると、乗っていたNS407編成は宇治で京都行きNS409編成と交換するようすも見えた。ほほお! これならばそう長く待たずに京都から下ってくる列車を撮ることもできる。これはいい。







■偉大なるワンパターンではありますが
1年ぶりに宇治にやってきて、けっきょくは昨年と同じように河原に降りた。宇治駅から西詰へ向かった。午前中ならば宇治橋から見る奈良線の線路が順光になることも知っている。それでも、午後に宇治橋を入れて下流側から撮るのが私は好きなのだ。河原に降りてときおり水に触れたい。なんといっても、写真を撮らなくても、青空を背に走る列車を水辺で見ているのは楽しいのだ。

宇治橋には観光客が歩いている。バスや自家用車が行き来する。空を見上げるとときおりサギやトンビが舞っている。対岸の京阪宇治駅からも列車が発着する音が風にのって流れてくる。そんな町のようすを水辺の木陰で眺めているのが、私は好きだ。

京都から下ってきたNS409編成と城陽から上ってきたNS407編成、およびその折返しもこうして撮った。もちろん、そのあいまに行き来する221系電車や205系電車も撮っている。昨年と同じ場所に来てしまい、同じアングルではある。けれど、昨年と撮った写真を見返していてあれこれ反省点があった。反省はするだけではなくて行動に移さないとそれはいかせないからな。去年撮れなかった撮り方を試すことができたこと、iPhoneではなくLUMIX GX7 Mark IIで動画を撮影できたので、かなり満足できた。




■サイゼも宇治も、奈良線も最高かよ
ひととおり撮ってから、宇治で行きつけの「イタリアンレストランS(とくに名を秘す)」(友人の言い回し)……いや、サイゼリヤ宇治里尻店に今年も行って涼んだ。時間がそうそうないときに、料理もすぐ出てきてコーヒーも飲めて値段も手頃なサイゼ、最高かよ! と改めて思う。線路の方向、とくに出入り口のある宇治橋側が客席から眺めることができればもっといい。そうだったら、ずっといてしまうかも。

さて、サイゼリヤを出てから、目の前の宇治橋に行き、橋の中程からずっと日没のようすを眺めていた。ここから見る夕景はほんとうにいい。この夕景を今年も見ることができて感慨にふけった。宇治はいいなあ。そして、奈良線も最高かよ。



【撮影データ】
Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH. /LUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH.  POWER O.I.S./LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S./Adobe Photoshop CC 2019