ウクライナ独立後にザヴォート・アルセナール (アルセナール工場)で製造された MC ARSAT-N 2.8/20(MC MIR-73N 2.8/20)は アタッチメントサイズが直径62mmで AI Nikkor 20mm f/2.8S用レンズフードHK-14がよく似合う。 だが、今回はその話をしたいわけではなかった |
■DfにはアルカスイスタイプL形プレートが欠かせなくなった
「とあるアジアの国で製造された『素人さんは手を出すな』的なグリップつきアルカスイスタイプL型プレート」を昨年末にニコンDfボディに装着したという話を、以前このブログで書いた。
Df用として販売されていたにもかかわらず、入手したときの状態ではボディに装着さえできず、そういうものに簡単に引っ掛けられた自分の鑑識眼のなさに失望して数年間放置したのちに、にわかに腹が立ってグリップ内部を小型ハンドグラインダーで削って整形したところ、ようやく装着可能になり、さらにグリップ部分にもネットで見つけた方の例を真似させてもらってグッタペルカ(カメラ装飾用の貼り革)を貼ってきたら、やっと握りやすくなった。そういう、いろいろと手を加えた結果ようやくまともに使用できるようになったという、例のあれのことね。
非常にくせの強い品物であるために、諸手を挙げて万人におすすめすることができない品物だ。
ところがこの加工をしたあと、私にはこのL型プレートが欠かせないものになってしまった。純正グリップDF-GR1と比較すると軽量なところがまずいい。
そして、グリップ部分もそのままではつるつると滑って握りやすくはならなかったものの、グッタペルカを貼ったあとは純正グリップよりもずっと指がかりもよくなった。こうして、私にとってのDfボディ最大の弱点であった「握りにくさ」が自分にはかなり解消されたからだ。
Dfは好きなデザインだからなんとか手に入れたのに、自分の手と合わないのか握りにくく感じてくたびれるというのは、とても忸怩たる思いでいた。なんとか自分の手をカメラに合わせようとしていたのだ。
オリンパス、いやOMデジタルソリューションズのデジタルカメラのうち、OM-DシリーズボディにL型プレートを装着させている姿を見るたびに、1980年代の一眼レフにモータードライブやワインダーを装着している姿を連想させられて、とても好ましく思う。DfにL型プレートを装着してみたくなったのは、OM-DシリーズのカメラにL型プレートを装着したときの姿にヒントを得たから。
ニコンDfでもこのL型プレートによって、やはりそういう70年代から80年代の一眼レフのような雰囲気がかもし出されるよう感じられるところも、気に入っている。
アルカスイスタイプL型プレートを用いるには、対応している雲台か、アルカスイスタイプのクイックリリースクランプを用いる必要がある。
こういうふうに、マンフロット雲台に関して少々残念なトラブルが起きていたために、それまでよく見ていなかったアルカスイスタイプのクイックリリースクランプに興味がわいた。
そこで近所のホームセンターの金具売り場を見ているうちに、ワッシャーもセットになった1/4ねじのフックを見つけた。いくつか袋に入っていて200円もしなかったはずだ。ただし、そのフックは直角に曲げられていて丸められていなかった。そこでさらに、1/4ねじのアンカーフックを見つけた。そのフックとワッシャーを組み合わせて、3/8-1/4ねじのアダプターを組み合わせた。部品代はしめて500円くらいかな。
さらに、アルカスイスタイプL型プレートの本来の目的である、三脚使用時の縦位置撮影が非常にやりやすくなったことも見逃せない。自由雲台で縦位置撮影を行うと、横位置でセットしてあった場合と比べるとヘッド部分を横に倒すことになるために、不安定な姿勢にもなる。横位置から縦位置にすると光軸の位置や高さも大きく変わるので、高さから調整しなおす必要がある。それらの手間がかなり解消された。
縦位置撮影をするにはL型プレートは便利 |
背面モニターの水準器表示にあわせて 縦と横の画面の中心線に 蛍光イエローの粘着テープで指標を入れた。 そういう気の利いた指標もない品物だから やはりおすすめはしづらいのだ |
Dfに関してはそういうわけで、純正グリップDF-GR1を使わなくなってしまった。ところが、そこまで自分には便利でいまや欠かせない品物であるにもかかわらず、加工しないと装着さえできないものをみなさんにおすすめしたくないので、ブログ記事にもしづらい。金属を削る加工ができないと使えないのだもの。信じていただきたいが「加工すべき箇所を見つけて克服した俺スゲー」という自慢をしたいのではない。みなさんのヒントになりえないと思うのだ。
とにかく、こんないい加減なものはすすめられない。これは失いたくはない私なりの価値観だ。『シラノ・ド・ベルジュラック』の名セリフ"C'est mon Panache"みたいなものですよ。それが俺の心意気だ、ってやつ。
そこで、そのほかの最近行った三脚周りのあれこれをまとめて記事にすることで、くせの強さを薄めるつもり……薄まらないかなあ。虞や虞や汝を如何せん。
■マンフロット498RC2雲台をアルカスイスタイププレート対応にした
マンフロット200PL |
マンフロット498RC2MIDIボール雲台 |
そこでクイックリリースクランプを入手した。そして、数年来使用していたマンフロットMIDIボール雲台498RC2(以下、498RC2と略)のプレート部分と交換した。498RC2はそれなりの大きさがあるところが気に入っていたのだが、数年前に撮影先でヘッドの部分のねじが緩んでスローシャッターを切る場合に成功率が下がってしまい、おおいに困らされたことがある。六角レンチを撮影時に携行していなかったから。よりによってきちんと撮りたいD850をお借りして東武鬼怒川線に行ったときのことだ。
さらに、クイックリリースプレート200PLのうちのひとつのカメラ固定ねじのワッシャーが経年劣化によって摩耗し、カメラをしっかりと固定できなくなっていた。カメラ固定部分にガタがあるようでは安心して使用できない。
クイックシューはもの忘れが多い筆者には、運用に工夫が必要だった。いやいや「運用に工夫」だなんてかっこうつけすぎだ。プークスクス。つまり、クイックシュー自体を自宅に忘れないようにする必要があるということ。もしクイックシューを自宅に置いて出かけたら、三脚を持参しても撮影に用いることができない。そういう悲劇にはさいわい見舞われることはなかったが、玄関で出発時に機材の確認をしてあわてたことは数多くあった。
通常は固く固定されている中央のネジを外したところ。 長年の使用で緩んでしまったために、簡単に外すことができた |
クイックリリースクランプと マンフロット雲台用の変換ボスとねじ。いずれも*帯*路な品物。 この*帯*路のクイックリリースクランプは RRS(Really Right Stuff)やKES(Kirk Enterprise Solutions)の 真似ですよね、はっきりいってこれ(ため息) |
マンフロット498RC2の私製改造品のできあがり。 でも、KESのクイックリリースクランプにしたい |
マンフロット雲台のヘッド部分をアルカスイスタイプクイックリリースクランプに交換するには、変換アダプターとより長いねじが必要だ。アマゾンで探して購入した。いずれも深圳製の安価なものだ。こうしてそれを用いて498RC2をアルカスイスタイプにした。
手持ちの雲台をアルカスイスタイプのクックリリースプレートに対応させて、雲台の数を増やさずに済ませたという利点はある。だが、雲台自体の使い勝手はそう悪くはないものの、よくも悪くも498RC2のままだ。安定はしているけれど、そうそう高精度ではない。ちょっぴりおおらかなところがある。
マンフロット雲台を深圳の部品で私製改造するなんて、マルコ・ポーロ先生が見たら感激しちゃうかも。
■梅本製作所高精度自由雲台にL型プレートを
そして、以前から興味を持っていた梅本製作所の高精度自由雲台SL-60ZSCも使い始めた。最も大きなサイズのものだ。この雲台は評判どおりに優れた製品だ。カメラ固定部分が緩むことがなく、ボールヘッド部分もがたつかない。構図を決めたあとにわずかにカメラ固定部分が動いてしまうという、ストレスフルな現象に遭遇しないで済み、じつに頼もしい。きちんと締めれば、連続撮影のあいだにわずかにカメラが動いて構図が変わってしまうということがない。
唯一の希望があるとすれば、もしフリクション調整機構が備えられていたらば、私の理想に近くなってなおすばらしいというところだろうか。
DfボディにアルカスイスタイプL型プレートを使い始めたものの、ほかのボディにはまだL型プレートを装着していない。古い機種ばかり私有しているので対応する専用プレートがもう製造中止になっているものが多いし、高精度なものはどうしても値も張る。だから、現時点では複数台のボディを撮影に持っていく場合には、雲台を1/4ねじのままにして、そこにクイックリリースクランプを装着することにした。
ただし、この方法にも難点はある。それは精度がそう高くはないクイックリリースクランプを装着してしまっては、せっかくの高精度雲台のよさがだいなしになるということ。可動部分が増えるというだけで不安定要素が増えるのに。だから、そのうちほかのボディにもL型プレートを装着し、アルカスイスタイプの高精度雲台を入手することになるかもしれない。梅本製作所のクイックシュー直結専用雲台SL-60AZDに、高精度なアルカスイスタイプクイックリリースクランプを組み合わせるのもよさそうだ。
そうなっても、SL-60ZSCは従来の1/4ねじのカメラに用いるつもり。
そんなわけで、いまはもっかアルカスイスタイプのクイックリリースプレートとクランプの試験運用中というわけだ。
せっかくの高精度雲台の精度を落としている気がする |
■ジッツオ三脚にエンドフックを取りつけた
数年前に、センターポールのプラスチック製エンドカバーを破損させた古いジッツオ三脚G1120 Sport Performance MK2がある。まだフランスで製造されていたころの製品だ。
「センターポール」という単語を見ると「聖パウロ」「立教大学(Saint Paul's)」そして銭形警部の声で「国際刑事警察機構(インターポール)」をいつも連想してしまう筆者はだいぶあれかな。『クマのプーさん』(アメリカのディズニーアニメではなくイギリスの原作児童小説)では「ノースポール」という単語を聞いて「北極点」という意味だとわからず、クリストファー・ロビンとプーたちが「ポール(棒)」を探しに行くという話があったよね。
そんなダジャレはどうでもいいのだった。この古いジッツオ三脚はナットロック(ツイストロック)式ではあっても、脚部の分解が簡単で内部の固定部品の構造も単純であるためにメンテナンスもしやすく、水辺の撮影には先日のベルボン Professional Geo V640よりも気軽に用いることができるのではないかと思い、改めて使おうと思っている。
この三脚はむかし、ニコンFやF2、F4あるいはソビエト製レンジファインダー機で夜景撮影をするために「重いジッツオでもできるだけ小さいもの」として選んだ。小型三脚ながらアルミ製で2kg強の自重があるために、デジタル一眼レフでも望遠レンズを使わない場合ならば実用できるし、ミラーレス機ならば問題はないだろう。エンドフックを使いそこに荷重をかけておけばより安定するはずだ。だから、これにもエンドフックをつけたいと思った。
だが、ジッツオの現行製品のエンドフックを見ても、にせんえん近いお値段がする。ちょっと……いくらなんでもなお値段だ。しかも、スプリングが入っているようだ。私見ながらエンドフックにスプリングは不要ではないか。ぶれを伝えにくくするためなのだろうが、どうだろうか。スプリングがあってもなくても、ここにおもりを下げるときには地面に接地させないとかえってぶれの原因になる。
エンドフックを取りつけた |
センターポールよりわずかに大きい程度 |
取りつけたフックはセンターポールの直径よりわずかにはみ出る程度の大きさであり、脚部に触れないように回転させることはできるので、これならばフックが脚部に触れて傷をつけることはないだろう。
こうやって、あいかわらず本格的な撮影に出るというよりも「ゴルフクラブを磨いてばかりいてゴルフ場に行かない休日のお父さん」のように、機材いじりばかりをしている。デュエルをしないくせに「俺のターン」がいつ来てもいいように「最強のデッキ」を考えているようなものかも。戦争のニュースに消耗させられて気持ちがふさぐ。落ち込んでたまるものか、とは思うのだが。負けるものか。
【おことわり】
上記の加工や改造はご自分の責任で行ってくださいますよう、改めてお願い申し上げます。読者のみなさんが本記事を読まれて同様の加工・改造をなされたさいに、万が一うまく仕上がらなかった、望むような効果を得ることができなかった、何らかの損害を被った場合にも筆者はその責任を負いかねます。あらかじめご承知くださいませ。