2014年1月12日日曜日

【撮影術】秩父鉄道でミシシッピー・ワン


■サラ・ムーンみたいに撮りたいことがある
「秩父鉄道でミシシッピー・ワン*」などと書いても、秩父鉄道好きのお仲間にはさっぱり意味がわからないだろう。数人の写真仲間のかたには、あああれね、とご理解いただけるかもしれない。半分冗談だけど、半分本気だ。


■サラ・ムーンを知っているか
フランスの写真家でサラ・ムーン(Sarah Moon)という人物がいる(リンク先はAERA dotの写真展記事)。もともとはファッションモデルだったひとで、本名はマリエール・ハダン。フランスのユダヤ人一家に生まれたものの、ドイツ軍のフランス占領によりイギリスへ避難し、10代の頃は絵画の勉強をしていたのだそうだ(ロシア語と英語Wikipediaより。それぞれで少しずつ記述が違うのでどこまで正確かわからない)。


ファッションモデルとして活躍したのち、1967年より写真を始め(英語版では1970年より)「写真家サラ・ムーン」としてキャリアをスタートさせる。1972年にはピレッリのカレンダーに女性写真家として初めて採用されたほか、1979年には映画も撮り始めた。ヴォーグでの活躍のほか、シャネル、ディオール、コムデギャルソンなどのブランドで広告写真にも従事する。1985年より写真および映像作家として活動を行っている。ロシア語Wikipediaの言い方を借りると、幻想的なモチーフと写真術初期の頃、あるいはピクトリアリズム風の作風やシュールレアリズム的なスタイルを発展させた、芸術的な作風を強めた、のだそうだ。


■カメラのおっちゃんだって夢を見たい
いやその、そのサラ・ムーンの作風が好きなんですよ、私。なんとかああいうふうに撮れないものか、と思い出してため息をついていることがある。彼女のようにファッションや女性や子ども、動物を撮っているわけではないけど、せめてちょっとした風景を切り取るのに、繊細ではかなく茫洋としたあの作風を身につけることはできないか、などと考えるのだ。

プリントとしては古典写真の技法のような仕上がりだ。ハイエストライトを飛ばし、シャドーはにじみ、仕上げに調色しているかのような。いまはサラ・ムーンもデジタルカメラで撮影してインクジェットプリントをしているようだ。検索をかけると、キヤノンパワーショットシリーズやオリンパスOM-Dを構えている写真が出てくる。

そんなふうに考えていた昨晩、とつぜんやってみたのがこの数点の写真というわけ。でも、これではまだ仕上がりがきれいすぎる。いや、悪魔の声みたいなものが聞こえたのですよ。撮るときにもちろんシンプルな絵にする努力はして、あとはぶっちゃけ「アプリでやればいいじゃん」ってやつ。iPhoneではないから、もちろんAdobe Photoshopだけど。毎回こればかりだと痛々しいかもしれない。いや、今回だって痛いだろうけど、たまにはこういうふうに仕上げることを意図してねらううのも楽しそうだなあ、と思ったしだい。

ほんとうは被写体をもっと厳選しないといけないけれどね。

ちなみに、かつてのサラ・ムーンの写真の特徴はピールアパート式のネガが撮れるポラロイドを使うところにある。現像液成分がきれいには剥離できないネガをプラロイドフィルムで作り、それをプリントしていたようだ。そういうのをフォトショでやるのってどうよ、と思うかたは生暖かく見守ってくださいまし。

*『ミシシッピー・ワン』:1992年公開のサラ・ムーン監督の映画。ストーリーはググってくださいな。(→ネタバレ注意→)精神を病んだ男が幼女を誘拐して連れ回すというまったく感心しないストーリーです。でも、画面はきれいでしたよ。