2022年11月29日火曜日

【秩父鉄道SLパレオエクスプレス撮影記事】C58363が9年ぶりに後藤工場式除煙板を装着して走る

秩父の紅葉は終わりの時期だった

■C58363が9年ぶりに後藤工式デフを装着
さる11月25日(金)から27日(日)にかけて、秩父鉄道C58363号機に後藤工場式除煙板(後藤工場式デフレクターとも。以下、後藤工式デフと略)が装着され、ランボードに白線を入れられた姿で営業運転が行われた。ナンバープレートも形式なしのものに交換されて、前部にいつもとはことなるコの字型の手すりも設けられていた……ということに気づいたのはこのエントリーを書いた翌日以降なのだが。見えていないなあ、筆者!

後藤工式デフとは、米子市にあった国鉄後藤工場(現在はJR西日本後藤総合車両所)で改造された変形除煙板(デフレクター)のひとつで、通常の除煙板とことなり下部に切り欠きがある。あまり除煙効果がなさそうな下部を切り欠くことで、この部分の整備点検をしやすくすること、運転室からの正面下方の視界の確保に(多少は)効果があるのだろう。私は蒸気機関車のことは知識がなさすぎるので、調べながら書いているが自信がない。事実誤認があったらもうしわけないとあらかじめ書いておく。「国鉄後藤工場」「境線後藤駅」の「後藤」がもとからあった地名ではなく、鉄道誘致に貢献した後藤快五郎氏の姓から名づけられたなどということも、はじめて知った。

秩父鉄道C58363号機が以前このJNRマークの入った除煙板を装備したのは、2013年の春のことだった。もう9年もまえのことだ。あのころはそういえば、何種類かの除煙板を装着したことがあったね。走行シーンも撮影して旧ブログでは記事にしていたのに、現ブログに引き継ぐのを忘れていた。

2013年6月撮影。
このカットのみNikon D7000/AI AF Nikkor 50mm f/1.4D

そして、秩父鉄道を訪ねるのも思えば今年の2月に北武区間(羽生〜熊谷)を訪問して以来であり、SLパレオエクスプレスを撮ったのも昨年10月以来と、いろいろなひさしぶりが重なっての訪問だ。どうした秋山さん……いや、だってあれがああだったから仕方ないのさ。

■重役出勤して5001列車を終点近くでねらう

秋の終わりを写真にしたくて

列車を待つあいだにあれこれ写した

今回の後藤工デフに関してTwitterのタイムラインから得た情報から推測したところによると、どうやら、有志による貸し切り撮影会を企画された方がいて、そのためのものだったようだ。撮影会は土曜日夜に行われるために、金曜日から試運転として装着され、撮影会終了後の日曜日までそのまま走っていたということらしい。北見市に保存されている僚機C5833号機に後藤工式デフが装着されているので、今回はそれを模しているのだそうだ。また、私は最終日のようすしか自分の目で見ていなかったから知らなかったが、金、土、日にそれぞれ区名札も変更されていたようだ。

除煙板は走行性能にかかわる部品なので、変更して本線走行を行うには事前に試運転が必要だと、以前のオリジナル除煙板の装着の際にうかがった記憶がある。

金曜日に除煙板が変更されているむねがタイムラインにあらわれて、その日の夕方の上り5002列車、あるいは翌日土曜日に撮影に行くことができればよかった。だが、零細編集者の私は仕事を予定していたように終えることができなかった。そこで、私は最終日の日曜日にようやくでかけた。

秩父路は紅葉シーズンの終わりだ。だから、観光客も多いであろうことは想像できた。そこへC58363に国鉄時代の装いがなされるとなると……「どちらかというと電車派」の私が行くくらいだから、いつもよりも撮影者は多いはずだ。だから、かつて行っていたような「電車追いかけ撮影」はあきらめた。

今日撮っているのは業務の依頼写真でもなく自分だけの写真だから、最悪の場合は撮影できなくても困らない。

そして、特徴のある除煙板がわかるように側面がちにねらうことができて、なおかつ秋のようすも多少は写し込める場所……しかも人出がそう多くなさそうな、つまり「超定番」ではない場所を考えていて、自分のこのブログまで見て……やはり影森から下り方面の山のなかに足を運びたくなった。

SLパレオエクスプレス5001列車の秩父発車時刻は12時20分と正午過ぎだから、秩父より下り方向であれば始発で家をでるなどということをしないですむ。あは。

■紅葉は順光でねらってもきれいに写らない。そしてパレオの客には手を振るのさ

太陽光は画面右上からあたっている

道中の西武池袋線沿線の車窓から見える入間市内の加治丘陵や飯能市内の高麗丘陵でも、かなり紅葉が進んでいるだけあり、都内や平野部よりも気温が低い秩父ではもう紅葉は終わりのころだった。安谷川橋梁そばのイチョウの葉はすでに散っていた。それでも、よく晴れていて青空との対比は美しい……ただ、ちょっと晴れすぎなんだよな、と危惧しながら撮影地に選んだ駅で降りた。

雲ひとつない青空を好む方は少なくないようだが、写真を撮るにはハイライトとシャドーの輝度差が大きすぎるのではないかと思ったのだ。ダイナミックレンジ内に収められるかと考えてしまうのだ。RAW現像とレタッチでがんばるほかないか……。8ビット256階調しかないJPEGで自動露出(AE)では、露出補正とカメラ側でのトーン調整をかなり入念に行わない限り、きれいには撮影しづらい状況だ。自分はそう思うとJPEGでAEでは撮りたくはない。

とにかく、5001列車通過1時間まえの到着で一番乗りだ。この駅周辺は背後の木々が色づくところがいい。そして安谷川橋梁を越えて駅まで勾配を登り、駅を通過してからもさらに勾配があるのでそれなりに煙も期待できる。駅は山の影にあるが、正午過ぎだと下り列車正面には日が当たる。列車の側面は影になるものの、背景の木々は斜光線が当たる状態になる。でも、それだからこそこの場所を選んだ。紅葉している木々を順光で写してもきれいになんて写らないからだ。ベタ順光で見たら花も紅葉も美しくはない。人物撮影でも鼻の下に濃い影は出るし、被写体の方もまぶしくて目を開けていられない。

ただ、今日は荷物を軽量化したくて、逆光に強くないマニュアルフォーカスのAI-Sニッコールレンズばかり持ってきた。そして、ねらう構図にカメラを構えると太陽光が斜めから当たる。フレアにやられるのか。万事休すか!

ぜんぜんそんなことはありません。なぜならこういうこともあろうかと考えて、ベルボン「アンブレラクランプUC-6」とハレ切り用の傘を持参したからだ。そのようすをiPhoneで撮った以下で、傘によるハレ切りの効果をみなさんにもはっきりわかってもらえるのではないかと思う。

iPhoneで撮るとフレアーが出てしまう

傘の影から撮るとフレアーを出さずにすむ

私のiPhoneはiPhone 7 PLUSなどといういにしえの機種であるために、なおさら逆光と斜光線に激弱だ。だが、傘で遮光している2枚めの写真はフレアが生じていないことがわかると思う。レンズフードやハレ切り用ボードなどでもいいが、いちばん確実なハレ切りは光源のほうをさえぎること。いつもこれが使えるとは限らないのだが。

なお、ベルボン「アンブレラクランプUC-6」に付属していた裏面に白く塗料が塗られていた折りたたみ傘は、クリップオンストロボのアンブレラ(反射傘)としても使用できて、とても便利だった。だが、私の使っている個体は塗料が劣化してはがれ始めてしまった。現在のベルボン製品の取り扱いを行っているハクバ写真産業に問い合わせて、もし在庫があれば補修部品から売ってもらえるのかもしれない。UC-6自体はすでに製造中止になっている。在庫限りで販売終了のようで残念だ。そこで私は付属のアンブレラのかわりにホームセンターで見つけた大きめの黒い折りたたみ傘にして、ハレ切り専用にしてしまった。柄の持ち手の部分だけを交換すれば使うことができる。

こんなことをしているうちに、5001列車の汽笛が遠くから聞こえ始めて……やってきたところを写したのが冒頭の写真だ。SL座席指定券が2022年11月12日から12月4日までのあいだ、無料(事前登録は必要)なのだそうで、天気のいいハイシーズンの日曜日でもあるから、乗客が以前のようにたくさん乗っているように見えた。楽しそうでいい感じだ。

さらに、機関車が通過してから私は乗客のみなさんに手を降った。同時に撮っていた動画には、手を振り返してしてくれているみなさんのようすが写っている。ひさしぶりのSLパレオエクスプレス撮影だが、「パレオ撮影のコツその1:乗客に手を振ると振り返してもらえて楽しい写真になるのさ仔猫ちゃん(小沢健二ふう)」を忘れていなかった。

■5002列車は青空を背景に
イエーイ。いろいろな撮影のコツを忘れてなんていなかったぜ! と思いながら、上り5002列車をどこで撮るか考えた。5002列車は基本的には三峰口から熊谷までゆっくりと下り坂を降りてくるようなものだから、煙を出す区間が限られる。

そして影森〜三峰口のどこも今日はおそらく人出が多いはず。白久は寄っていないからわからないが、「湯之澤橋」と刻まれているあの陸橋のところはベストの位置は限られているのに、けっこうな数の撮影者が待機しているのを見てしまった。

だから、私は人出が多くてもなんとかできそうな場所を選びたくて、より上り方向へ移動した。どれだけひとが多くても収容人数は多い荒川の親鼻橋梁にひさしぶりに行こうかと思ったものの、水量が多いことと、上長瀞で下車していく乗客の数もたいへん多いので、あきらめた。そこで、以前に冬の特別運行のときに撮ったことがある曲線に行ってみた。

ここも1時間前の到着で一番乗りだった。今日は思っていたように、線路沿いの撮影者の年齢が高めだ。そうなると列車通過直前に自動車追いかけ組がどやどやと現れるのだろうなあ……と思っていたところ、自動車追いかけ組のみなさんはより有名な場所の方に集まっていった。この場所では私のようすを見ていた非鉄の観光客のおじさんが、私のうしろから私の動画のカメラの背面モニターを勝手にのぞき込みながら、スマホで撮っているだけ。見たいならばひと声かけてくれよな、おじさんよ。見るのはいいけどさ。

曲線区間を抜けていくC58363号機の白煙と青空の対比がなかなか美しく写って、けっこう満足している。令和の時代に昭和のAI Nikkor 50mm F1.8Sで撮ったのもなんとなく愉快だ。同時に撮っていた動画に使ったレンズはAI Nikkor 28mm f/2.8Sだ。え、私のレンズ昭和すぎ……。

ただ、自分の「自分にとっての撮影地データベース」のアップデートが足りていなくてちょっとうっかりだったのは、15時過ぎのこの場所に11月下旬では建物の影が予想以上に邪魔をすること。1月上旬にはそんなだったかな。RAW現像後のレタッチをかなりまじめに考えた。レベル補正レイヤーにレイヤーマスクでシャドー部分を明るくした。

15時でも低い建物の影が出てしまうとは。
1月上旬に撮ったときにはこんなに影は出なかった気がする

今年は体調も優れないことが多くて……というわけで秩父に足を運ぶ機会がないまま秋が終わっていこうとしている。でも、ひさしぶりにまじめに撮ったSLパレオエクスプレスはおもしろかった。真っ青な空の日は気持ちがいいね。いろいろとAdobe Photoshopでハイライトのシャドーの輝度の大きさに悩みはしたけれど、歩いていて爽快だったからまあいいか。

【撮影データ】
Nikon Df/AI Nikkor 50mm F1.8S/RAW/Adobe Photoshop CC

■ベルボンアンブレラクランプUC-6
通常の三脚用アンブレラホルダーは三脚に「きっちり」固定される仕組みです。いっぽう、このベルボン「アンブレラクランプUC-6」は意図的に三脚から「外れやすい」ように作られています。

カーボン三脚などの軽量で重心が高くなりがちな三脚に強固に固定されるアンブレラホルダーを使用していて、そこへ強い風が吹くと、傘ごと三脚と機材が転倒しかねない危険性があります。本製品は万が一の場合に傘部分だけが「外れてしまう」ことで、機材の転倒を回避しようという考え方のようです(とはいえ、強風が吹く状況での使用はしないでほしいと注意書きがありますので、使用にあたっての注意は必要です)。大きな洗濯バサミのような形状をしています。そういえば……デジカメWatchで以前記事を書いています。あわせてご覧くださいませ。

■Twitterにアップした簡易編集版の動画をごらんくださいませ