2023年4月25日火曜日

【ニッコールレンズとNikon Dfの話】非AIレンズをより快適に使うために「カスタムメニュー:f7」の「コマンドダイヤルの設定」で「絞り値の操作は背面メインコマンドダイヤル」「絞り環とダイヤルの回転方向を揃える」設定をした話


■絞り環の操作をどうするか
Nikon Dfはみなさんご存知のように、いろいろなレンズを装着できるカメラだ。Nikon F登場時の非AI方式のレンズから、CPU接点による絞り値の連動を行うGタイプAF-Sニッコールレンズ、電磁絞り方式になったAF-Sの最新のEタイプニッコールレンズにいたるまでの数多くのFマウントレンズを使用できる。

装着不能なのは、ミラーアップが必要なものやフォーカシングユニットAU-1が必要な超望遠レンズ、F3AF用のAFニッコールレンズ、IXニッコールレンズくらいだろうか。Fマウントではない、かつての距離計連動式カメラのSマウント、ライカスクリューマウントのLマウント、フランジバックの短いZマウントや1ニッコールレンズはなんらかのかたちで無理やり装着しても無限遠が出ないことは、いうまでもないだろうが書き加えておくね。基本的には、ほとんどのFマウントレンズを装着して使用することができるといっていい。

これらの使用可能なFマウントレンズをDfで使うさいに、絞りの操作をどう行うか、設定をどうするかという話を今日はしたい。令和5年にいまさらという気持ちもあるけれど。操作方法を忘れたときの自分への備忘録でもある。

いままで私は回転方向やダイヤルの設定をそう大きくは変えていなかった。だが、非AI方式レンズをしばらく連用してみて、気が変わったのだ。今回は「カスタムメニュー:f7」の「コマンドダイヤルの設定」に関する話を以下でしていこう。


まず、Dfの初期設定では絞り値の操作は以下のように設定されている。これはDfにかぎらず、AI方式の露出計連動レバーとCPU接点の双方を備えた一眼レフも同様だ。

【初期設定での絞り操作】
●AI方式MFレンズ:レンズ絞り環
●非AI方式レンズ:レンズ絞り環とサブコマンドダイヤル
●AFレンズ:サブコマンドダイヤル

DタイプまでのAFニッコールレンズはAI方式に対応した絞り環を持つので、レンズ側の絞り環の操作とボディ側のコマンドダイヤルでの操作のどちらかを選んで設定できる。だが、初期設定ではボディ側からの操作に設定されている。最小絞り値に絞り環を設定しておき、ボディのコマンドダイヤルで操作するというものだ。

絞り環のあるAFニッコールレンズは絞り環でも
ボディのコマンドダイヤルでも絞り値の操作は可能だ。
筆者は初期設定のまま、絞り環を最小絞りにしておき
コマンドダイヤルで操作する

筆者は絞り環のあるAFニッコールレンズに関しては、この初期設定のままだ。ボディ側から絞り操作している。1/3絞りの操作も可能になる。そして、絞り環のないGタイプAFニッコールレンズも混用するので「AFレンズは絞り環を使わない」と決めている。CPU接点のあるマニュアルフォーカスレンズ(AI-P)は所有してはいないので、絞り環で操作したいと思わない。最大の理由はゆとりのない撮影現場でも混乱しないようにという理由だ。それと、絞り環を意図せずに動かして絞り値が変わってしまうことを避けたい。

いっぽう、マニュアルフォーカス(MF)レンズを使う撮影は業務ではない。その場合は操作にも気持ちの余裕がある。だから、AI方式MFレンズでは絞り環を操作して楽しんでいる。なお、CPU接点のないAI方式MFレンズは絞り環による操作しかできない。コマンドダイヤルで操作したいひとはいないだろうけれど、ねんのため。

AI方式のレンズは絞り環で絞り値の操作をする

これはDfだけの特徴だが、マニュアルフォーカスレンズでも非AI方式レンズでは、絞り操作に絞り環はもちろん使う。ただし、ボディ側との絞り値の連動機構がないために、ボディにレンズの絞り値が伝達されない。そこで、あらかじめボディ側に焦点距離と開放F値、AI方式であるかどうかを登録しておく。そして、レンズ使用時にはその登録したレンズであることを入力したあとで、初期設定ではサブコマンドダイヤルでも絞り値の操作も行う必要がある。レンズの絞り環で設定した絞り値と同じになるように、サブコマンドダイヤルでも絞り操作をする必要があるということ。

このように、Dfで非AI方式レンズを使う場合に、撮影時に絞り操作には少しだけ手間がかかる。それでも非AI方式レンズで絞り優先AEでも撮影できるのだから、ありがたいと思う。貴重なレンズを改造しないでも済ますために、工夫してこういう操作方法が編み出されたといっていい。旧後藤研究室のみなさんに感謝の気持でいっぱいだ。

非AI方式レンズは大昔は絞り環をAI対応のものにニコンで交換していた。純正の「AI改造」とは絞り環交換サービスだった。そんな公式のサービスはとうに終わっている。AI対応の絞り環の形状のように削る方法がWebで流布しているし、そういうサービスをするカメラ修理店もあるようだ。だが、削って改造して原型を変えてしまうのは私には抵抗がある。そんなことをしないでも、非AI方式レンズを使える方法を編み出してくれた後藤さんたちは「さすが」というべきだろう。

AI方式レンズも含むCPU接点のないレンズは、
事前にセットアップメニューで焦点距離と開放F値を登録しておく。
露出計連動方式がAI方式かどうかもあわせて登録する

レンズ側の露出計連動爪に明り取り用の穴がなく
絞り環に突起がないのは非AI方式レンズだ

装着まえに必ずボディ側の露出計連動レバーを跳ね上げておく
これを行わないで非AI方式レンズを装着すると
最悪の場合には連動レバーを破壊して故障させるので注意

そのうえでレンズを装着する。
レンズとの絞り連動機構がキャンセルされていることになる

非AI方式レンズの絞り操作は、レンズの絞り環と
初期設定ではボディ前面のサブコマンドダイヤルの両方を
同じ値に設定する。ちょっとユニークな方法だ

■絞り環の回転方向とダイヤルの回転方向を揃えたい
非AIレンズはこうしてDfで使用可能になるが、初期設定ではボディ後ろから見た場合に正面のサブコマンドダイヤルの回転方向と、絞り環の回転方向が一致していない。

絞り環は、ボディ後ろから見て左に回すと絞り値が大きくなり(絞られて、絞りが小さくなる)、右に回すと絞り値が小さくなる(絞りが開かれる)。

いっぽう、サブコマンドダイヤルの初期設定は、ボディ後ろから見て左に回すと絞り値が小さくなり(絞りが開かれて)、右に回すと絞り値が大きくなる(絞られて、絞りが小さくなる)。

ボディ正面から見ればいいのかもしれない。そして、慣れてしまえばこの動作方向の不一致に困らないかもしれない。筆者は非AI方式レンズを使うこと自体が少なかったので、最近になってサブコマンドダイヤルを使って動作させるたびに「おや」と思う。違和感を覚えるというわけだ。

そこで、絞り環の回転方向とダイヤルの回転方向を揃えた。具体的には以下の設定だ。これも、サブコマンドダイヤルの形状が異なるDf以外の一眼レフでも同様の設定が可能だ。Df以外の機種ではAI方式の露出計レバーが可倒式ではないので、非AI方式レンズは装着できないけどね。

●f7「コマンドダイヤルの設定」→「回転方向の設定」→「する」
「カスタムメニュー:f操作」を表示し、「f7:コマンドダイヤルの設定」を選ぶ。



そして、「回転方向の変更」を「ON(する)」に設定しよう。



こうすると絞り環とコマンドダイヤルの回転方向が揃う。

■できれば背面のメインコマンドダイヤルで絞り操作をしたい
ボディ前面のサブコマンドダイヤルの設定の説明しておいていまさらなのだが、このダイヤルは正直にいうと、私にはあまり回しやすくはない。

そこで、ここに割り当てられている操作をボディ背面のメインコマンドダイヤルに割り当てることにする。これは「カスタムメニュー:f7」の「コマンドダイヤルの設定」にある「メインとサブの入れ替え」を行う。Df以外の機種でも私はこう設定している。

●f7「コマンドダイヤルの設定」→「メインとサブの入れ替え」→「する」



絞り優先AEモード時にのみメインコマンドダイヤルを使う設定も可能だが、筆者はマニュアル露出モード時にも、絞り操作はメインコマンドダイヤルで行いたいので、いちばん上の「する」に設定している。

コマンドダイヤルの「メインとサブの入れ換え」がこうして完了した

ボデイ背面のメインコマンドダイヤルで
絞り操作が可能になった

【「コマンドダイヤルの設定」で変更したこと】
◆回転方向の変更→絞り環とコマンドダイヤルの回転方向の一致
◆メインとサブの機能の入れ換え→メインコマンドダイヤルで絞り操作を行う

【設定した結果の絞り操作方法】
●AI方式MFレンズ:レンズ絞り環(初期設定のまま)
●非AI方式レンズ:レンズ絞り環とメインコマンドダイヤル(変更)
●AFレンズ:メインコマンドダイヤル(変更)

文中の設定をすべて行った結果の画面。
筆者はさらに再生時でもコマンドダイヤルを使っている

上記の設定により、Dfで非AI方式レンズとCPU接点のあるレンズを使う場合にボディ側で絞り操作を行うさいに、レンズ絞り環とコマンドダイヤルの回転方向が一致し、なおかつ指が届きやすいボディ背面のメインコマンドダイヤルで操作ができるようになった。この設定をしていると、ボディ前面のサブコマンドダイヤルを回しても、絞り値は変化しない。

こういうのはもちろんユーザー個々人の好みによる。だから「正解」があるわけではない。完璧な設定は存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね、ということ。やれやれ、また春樹語かよ。私もそのうち気が変わる可能性もある。みなさんご参考になればさいわいだ。

初期設定から変更するとfの上にアスタリスクが表示される。
こうやってみると、私はいろいろと手を加えているね

■そのほかのおすすめ設定も
関連して、絞り環のあるAFニッコールレンズや、絞り環とCPU接点の双方を持つAI-P仕様のマニュアルフォーカスレンズ、同仕様の最近のVoigtländerニコンFマウント用レンズシリーズ、カールツァイスZF.2シリーズレンズ、MilvusおよびOtusシリーズレンズのニコンFマウント用などを使う場合に、AI方式MFレンズ同様に絞り環で絞り操作をしたいユーザーにむけて、その設定方法を記す。Df以外のAI方式露出計連動レバーを備えた機種でも同様の設定が可能だ。

●「カスタムメニュー:f7」→「絞り値の設定方法」→「絞りリング」



この設定は絞り環のあるCPU接点を持つレンズにのみ効力を発揮する。具体的にはF3AF用をのぞくAFニッコールレンズ(S、D)およびAI-Pニッコールレンズ、同仕様他社レンズなどで、絞り環のあるCPU接点つきレンズの絞り操作にだけ影響する。つまり、こう設定しても絞り環を持たないレンズには影響しない。

さらに、AI方式でのみボディとレンズのあいだで絞り値を連動させるAI方式MFレンズは、この設定をしなくても絞り環で絞り操作を行うことができる。少しくどいけど、これはだいじな注意事項だ。

●黒地に白文字
こちらは完全に好みによる設定。筆者はスマホもパソコンもダーク表示(黒地に白文字表示)にしている。そのほうが筆者には文字の視認性が高く感じられるから。また、暗所での撮影時には白地黒文字表示ではややまぶしさを感じて幻惑されることがあることも、理由のひとつだ。

この設定変更は「カスタムメニュー:d8」の「インフォ画面の表示設定」で「手動」から「白文字(W)」を選ぶ。

いちおう説明しておくが、Wはインターネットスラングの「ワロタ」とか「草」ではないからな。「ホワイト(White)」のダブリュー、フランス語でいうところのドゥブルヴェ(Vがふたつ、といういいかた)だぜ。わかってクレメンス。魔剤ンゴ。

余談だが、2023年になると「ワロタ」の意味でWを頻用するのは、やや古臭く感じるし、小馬鹿にしている印象を筆者は受けるから使わないようにしている。いかにも中年ぽくもあるし。INTERNET YAMEROだ。

Wは「ワロタ」「草」ではないからね

周囲の状況に応じて「白地黒文字」「黒地白文字」に
自動的に切り替わる設定ではなく
常時「黒地白文字」にするということだ

黒地白文字にするとこう表示される

■非AIのNikkor-S Auto 55mm F1.2がいまごろ楽しくなっている

F1.2

F2.8

F2.8

F2.8

前回のエントリーにも記したように、ふとしたきっかけで使い始めたAI改造のなされていないNikkor-S Auto 55mm F1.2を連日使ってみて、いまごろになって楽しく思えるとは。操作の手間がAI方式MFレンズよりもかかるし、絞り込んだ高精細な描写がほしいわけでもないから、たいていはF2.8のままで、絞り値をひんぱんに変えることはしない。F2.8での描写が安定的で気に入っている。

好きなレンズフードを装着しながら、逆光や斜光線に当たる被写体にカメラを向けて、同時に左手で注意深くハレ切りをしてみると、なかなかいい感じに写る。筆者は「いまどきの写真」を業務ならばともかく、ふだんは自分では撮らない。だから、ハイキーにしないしフレアも生じさせないようにしている。

でも、いまどきの若いみなさんの好むような、ハイキーでフレアとゴーストをめいっぱい入れた写真がほしければ、逆光を選べば簡単にできるともいえるかな。

【撮影データ】
(作例)Nikon Df/Nikkor-S Auto 55mm F1.2/RAW/Adobe Photoshop CC