2024年5月25日土曜日

【航空自衛隊YS-11EB】空模様の変化は想像しづらい


■空模様の変化は予想できない
5月末から梅雨にかけて、日没時の空が強く赤く焼けることがある。冬よりも色が赤く見えるのは大気中の水蒸気の量が多いためだそうだ。ただ、この焼け方はなかなか事前に予想ができないところがとてもおもしろい。

自宅で作業をしていたある日、航空自衛隊の基地からYS-11EBが離陸する音が聞こえた。航空自衛隊のYS-11FCの退役により、オリジナルのロールス・ロイス「ダート」エンジンを積んだ機体はもう飛んでいないが、ゼネラル・エレクトリックT64エンジンに換装してプロペラも3枚にした「スーパーYS」シリーズのYS-11EAとEBはまだ残されている。日本国内で飛行する最後のYS-11シリーズだ。ただし、ダートエンジンとは異なる音なので、耳にすればわかる。回転数が変わるときに音が止まって聞こえるような特徴もある。C-130HのアリソンT56にも少し似ているが、T56はもっと低音でもっと大きな音がするように思う。

■スーパーYSが飛ぶタイミングも予想できない
2021年3月のYS-11FCの退役以降、私は滑走路沿いに行くことが少なくなっていた。それは、自分が好きだったのは「航空機」ではなく「YS-11FC」だったからにつきる。平日の日中に撮影に行けなくなった期間もあったし。そして、残されたスーパーYSが飛ぶタイミングと自分の行動がうまく合わなくなってもいた。

さらに私は航空自衛隊の配備についてよく観察しているとか、SNSでようすをうかがうことも最近はめったにしていないから、なおさら事情もわからない。専門誌も読んでいないし。スマホに入れていた「Flightradar24 | フライトトラッカー」も課金をやめてアンインストールしてしまった。ときどき、風向きによっては自宅に近い方の滑走路端を見に出かけたくらいだろうか。だから、スーパーYSを撮る回数が減っていた。

すでに後継機種とされるRC-2も飛んでいるから、そう遠くはないうちに置き換えられてもおかしくないはずだ。

そんなある日、晴れてはいても湿度の高く空が白っぽい日の夕方にYS-11EBが離陸したというわけだ。風向は南風で、RW35から離陸したところを見ると、自宅からは遠いRW17に着陸するようだ。空が白いのはかっこよく撮れないなあと思いつつ、思い立ってD7200と300mmレンズを持って滑走路沿いに出かけた。日没時の太陽の位置の関係で、RW17側のほうがうまくいくとこの時期は空の表情を写しやすい。

そこへYS-11EBが戻ってきた。空をRGB:255.255.255(つまり真っ白)にしない露出を心がけつつ、プロペラを完全には止めない1/640秒から1/500秒よりも低速のシャッター速度にして、追い写しをした。

しばらくするとYS-11EBは基地周辺の短距離の周回飛行を始めた。そして、白っぽく曇っていた空が少しずつ赤みを帯びてきた。


■こんな色になるとは
YS-11EBは基地周辺を小さく周回し始めたので、撮影のチャンスが何度もあった。レンズを交換したり、カメラを構える場所を移動しながら絵柄を変えるように務めた。

以前はこれ以上暗くなるとD7200では感度を上げにくく、したがってシャッター速度をあまり高速にはできないので、ぶれが多かった。手ぶれ補正機構などというモダンな装備のない300mm F4をつけて1/125秒では、無風で追い打つ写しをしないでもぶれがこわい。しかも、古いレンズだから絞り開放では撮りたくないためにひと絞りは絞る。だが、いまはAdobeのAIノイズ除去機能があるから、RAW+JPEGで撮っておいて現像時にそれを使うことを考えて撮影した。以前よりも撮影できる時間が増えた。


すっきり晴れた日ではないので、美しいというよりもむしろ少し気味の悪い空の焼け方をした。ただ、過去を振り返ってみても、こういう焼け方をするところをYSが飛ぶ姿を写せたことは少ないから、これはこれでおもしろい。

■薄暮で見る姿がやはり好き
この日は明るさが空に残っているうちにYS-11EBは着陸してしまった。そこで、同じ場所で昨年の夏に撮ったカットを見つけたので、こちらも合わせてご覧に入れたい。いずれも、AdobeのAIノイズ除去機能をめいっぱい使って現像している。それがないと以前は見せられる絵にならなかった。





こういう夜の撮影のたびに、もっと新しく高感度耐性の強いカメラと最新のコーティングの施されたレンズがあればと思う。D7200もすでに8年も使っているのだもの。だが私には、メインカメラのAFはD7200の位相差AFなみ性能を持っていてほしい。Dfは手持ちで300mm以上の大きなレンズは装着しても、バッテリーグリップがないからホールドしづらく、AFはD7200よりひと世代前のもので、暗いとお手上げだ。

そうなると望遠撮影ではAPS-Cサイズのボディを選びたいが、使いたい機種がもはや少ない。しかも、高感度耐性を考えたら35mmフルサイズボディでなければ置き換える意味がない。D7200よりも画素数が少なく画像処理エンジンが新しくバッファーメモリー容量が多いD7500は便利だが、バッテリーグリップがないからD7200と同じ使い方ができない。D7500と同じセンサーと画像処理エンジンのD500は自分にはどうもおおげさだし、あれだけのサイズであるならば35mmフルサイズを使いたくなる。

そして古い300mm F4をAPS-Cフォーマットボディで使っている私からすると、新しくてもフルサイズのレンズでもっと大きく重くなるのは振り回しにくくなりそうだ。D6とAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRは使ってみたい。

2024年のいまでも一眼レフの位相差AFのほうが、こういう暗所での撮影ではまだAFの信頼性も高いように思えてならない。そういうわけで、いまだにミラーレス機に全面的に置き換えることができないでいるし、D7200を積極的に置き換える気がしないままだ。旧製品だから修理不能になる可能性もあるので悩んではいる。高感度で使わない場合のD7200の生み出す絵の繊細さに魅せられているからという理由もある。

そう考えているところにAdobeのAIノイズ除去機能が現れた。こういう撮影以外で300mm以上の超望遠レンズを使いたいことが私には少ないから、ボディとレンズを積極的に買い替えたいとも思えない。だから、しばらくは古い機材のままで撮影を続けることになりそうだ。かつて8年間もD2Xを使い続けたような人間だからね。

空模様の話がいつのまにかカメラの話になっていた。最新機材で撮ることへの興味もあるが、いまの手持ち機材で絵柄を増やすこともやってみたい。

【2024年6月6日追記】先日行われた入間基地ランウェイウォークのさいに、YS-11EA 162号機のプロペラが外されている姿の写真がネット上にありました。RC-2の導入による用途廃止と思われます。

【撮影機材】
Nikon D7200/AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW/Adobe Photoshop CC/AIノイズ除去