2020年6月17日水曜日

【秩父鉄道撮影記事】ピンクのデキ504が現れて「草が生えた」


■ピンクデキを見かけてスタンバイ
父鉄道をふらりと訪問した日の最後の記事だ。武州原谷貨物駅を通過する「疫病退散! アマビエヘッドマーク」のついた7506編成から、すでに積荷を満載して出発準備をしている鉱石貨物列車を私は見かけていた。その先頭にいたのはデキ504号機。2018年にピンク色に塗られた機関車だ。私が自分の目ではじめて見たのはその年の秋だったか。写真で見るよりもじっさいに目で見るほうが衝撃的だ。


貨物時刻表も持たないでやってきたので正確なダイヤはわからなくても、武州原谷を出発するのはわりとまもないということは想像がついた。そうしてしばらく待つうちにデキ103号機が牽引する下り返空列車(とキジのつがい)が現れたので、その列車が武州原谷に到着したらピンクデキも現れるはず。

■あたりが暗くなるころにお出まし
デキ103号機が牽引する下り列車が出発して5分ほどしたら、案の定遠くから風に乗って汽笛が聞こえてきて、前照灯が見えた。ピンクデキのお出ましだ。



D7200よりはダイナミックレンジは広くて高感度にも少し強いDfを持って構えていても、あまり暗くなるのは望ましくはない。なにしろ、Dfは2020年春モデルに比べると数世代前の機種だ。D7200よりも前の世代だからね。暗くなるときれいには写しづらいな……とは思っていたので、日没ぎりぎりになって姿を現してくれたのはありがたい。それに、薄暮のなかではピンク色も背景に溶け込ますぎずにアクセントになっていいかな。

でもやっぱり……似合っているとも思えないし、目の前に現れるといつも私は思わず吹き出してしまう。ニコニコ動画みたいに「ちょっ」「おま」などと興奮のコメントが脳裏に文字で現われそうな、そんな感じ。原色に塗られたほかの機関車はまだ目にしていないけど、きっとそう思うだろう。

■そんなわけで「草が生えた」
このところ草花を写すのがなんだか楽しくなってしまい、ピンクデキを待つあいだにも線路沿いの草花をあれこれ写していた。まあ、ピンク色の機関車を見て思わず「草が生えた」というところですよ。ははは。



■特定の鉄道車両を写すだけではなく
正直にいうと私は草花が好きというよりも、レンズのぼけやにじみをいかしてなにかを写したいだけなのだと思う。じっくりピントを合わせてトーンを考えて写真を仕上げる行為が楽しい。さらにいうと、「特定の列車や鉄道車両それ自体を写さなくても鉄道沿線の情緒を描くことができないか」などと、このところいつも考えている。

まじめなことをいえば、「ありふれたもの」だって写真になるはずという思いが私にはある。特別なものしか写真にならないのであれば、写真術はつまらない。だからInstagramでもいわゆる「映える」と一般的にされているものを写すのではなく、ごくありふれたものを雰囲気よく仕上げることができないかとずっと実験しているのだ。それでいつも私の写真は地味なの。ものすごい高彩度や、明瞭度、「かすみの補正」をぐっといじって疑似HDR効果みたいな写真に私はしない。

画面が小さいスマートフォンで見るとSNSではそういう写真は目を引くのはたしかだが、それをやりすぎると私には写真的に見えない。ラッセンの絵とか核戦争終了後の終末世界みたいになってしまうのだもの。『友引全史第一巻 終末を越えて』序説第三章より抜粋ですわ。とはいえ、そういう「写真」が必要なことももしかしたらあるのだろうから、用途によりけりということなのかな。

さらに、一枚の写真だけでなにかを見せるのではなく、複数枚でストーリーを描いてみたい。秩父でデキを見てもそんな訓練をしていたのかも。

【撮影データ】
Nikon Df/AI Nikkor 50mm F1.8S, AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED/RAW/Adobe Photoshop CC 2020