2021年11月13日土曜日

【秩父鉄道撮影記事】「秩父路の三原色」赤デキ-青デキ-緑デキに遭遇した話


■第一便は赤デキ牽引
三輪鉱山の主(ぬし、もしくはあるじ)を眺めた日は、朝から昼過ぎまでずっと三輪線を見ていた。武甲山の麓の駅に到着した段階で第一便を牽引するのが赤デキ(デキ506号)で、第二便の牽引機は青デキ(デキ302号)なのはわかったので、まずはそれぞれが動くようすを見るために三輪鉱山手前の湯乃澤橋で待った。

なお、この陸橋はもともとは別の場所にあり、湯の沢と呼ばれる沢にかかっていた古い橋を再使用しているものだそうで、この鉄道の跨線橋自体は「湯乃澤橋」という名ではないのかもしれないが、便宜上これからもそう呼ぶことにする。

そうしてまず8時半ごろに赤デキが汽笛を鳴らしてから動き始めて、三輪鉱山へ向かって構外側線の勾配を登り始めた。

前回のエントリーでも書いたように、山の陰になるので午前中は三輪線一帯にはあまり日が差さない。順光になる上り方、逆光になる下り方のどちらを写すにせよ、よく晴れるとむしろ、日陰にいる被写体を写すには明るい背景との大きな輝度差を考慮する必要がある。日陰と日向の両方を満足行くように写すのは無理だ。とくに8ビット256色で階調再現を行うJPEGファイル形式での撮影では、露出補正を行なってもきれいに仕上げるのはむずかしいかもしれない。ダイナミックレンジの狭さにより、日向と日陰の輝度差が収まりきらないだろう。

もしそれでも日向と日陰の両方を描きたいならば、14ビット(機種によっては12ビット)で記録するRAW形式ファイルでやや露出アンダーになるように露出補正をしながら撮影して、現像時に16ビットモードでシャドーを持ち上げる工夫する必要がある。私はふだんの撮影でもそうしている。だが、この状況ではRAW形式ファイルでも輝度差が大きすぎて、日陰と日向の両方を再現しようとしても、きれいには仕上がらないと個人的には思う。コントラストを低くして眠い感じにせざるを得ないからだ。なにしろ、HDRやグラデーションハーフNDフィルターを使いたいほどの大きな輝度差があるもの。

だから私はここまで大きな輝度差であれば、日向にいる被写体だけ、もしくは明るい背景を写さず日陰のなかにいる被写体だけで写す構図にする。被写体を日陰に置いて、背景の明るい山の稜線を写し込むというようなことは避ける。肉眼で見るのとはことなり、写真では大きな輝度差はうまく再現できないから。そこで、少し遠目の日向の場所に機関車がいる姿を撮った。日陰になる部分を画面内にできるだけ多くしないようにしながら。

最近は荷物を軽くするために、APS-Cサイズボディを望遠レンズ代わりに持ち出すことをしている。だからD7200にAI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-EDを装着して270mm相当にして撮影した。予備ボディにもなるので、この方法が気に入っている。

このあと、デキ506が勾配の途中で止まってしまい、D502号が鉱山から出てくるなどという一幕もあったのも前回のエントリーで書いたとおり。そして9時20分ごろに三輪鉱山からそろりそろりと慎重に降りてきた列車は、いちど麓の駅で停車してから三ヶ尻に向かっていった。7104列車というやつだ。この繰り返しをしばらく見るつもりで来た。

それにしても日陰で見ると赤デキもそう派手な感じはしない。この赤と青、そして緑のデキは彩度が高くて、Adobe Photoshopで表示の校正設定を行うたびにおどろかされる。それは、RAW現像時に彩度を上げる処理を行わなくても、商業印刷でのCMYK印刷では色飽和してしまうという色域外警告が出てしまう色なのだ。


■第二便は青デキ牽引
第一便が麓の駅から三ヶ尻へ向けて出発してすぐ、9時半ごろに動き始める三輪鉱山行き二本めの列車の先頭に立つのは、前夜から駅構内で赤デキと並んでいた青いデキ302だ。デキ300形はデキ500形の後期型であるデキ506号を見たあとだと、前面窓の小ささに目が行ってヲキフ100的な面構えをしているように思えておもしろい。そう思うのはガチヲタな私だけかもしれない。

第一便の時間よりも日が当たる場所が少し近づいたので、機関車をより大きく写すことができた。


第二便は10時20分ごろに三輪鉱山を出てきた。7204列車だ。背景を見るとわかるように、日が当たる場所は増えた。だが、下り方を写すには、線路にはまだ日が当たらない。

あれれ、デキ302号は上り方の前面窓は左右で窓ガラスのパッキン(Hゴム)の色がちがうのね。なんとなく、「前夜目をこすってしまい、朝起きたら片方が腫れていた」感じに見える。どうして電気機関車を擬人化したがるのかといわれると、とくに理由はないよ。


■ひとつ飛んで第四便は緑!
ここまでは予想ができた部分だ。そのあと、10時50分ごろに麓の駅を出て三輪鉱山にやってきた第三便(7303列車)の先頭に立っていたのは、標準塗装のデキ507号だった。そして、デキ507号は11時半ごろに三輪鉱山から7304列車として降りていった。

その次の第四便7403列車はなにが牽引して来るのだろう、と思っていたら遠くから汽笛が聞こえてきて、正午ごろに姿を現したのは、なんとまあ緑色のデキ505号! 朝から三原色のおでましだったというわけだ。「順番が赤、緑、青だったらRGBだなあ」などとくだらないことを考えた。職業病かもしれないな。



■このあと予期せぬ機関車がやってきた
12時40分ごろに三輪鉱山から第四便7404列車のデキ505が出てきた。下り方を見るとだいぶ日が当たるどころか、こんどは逆光だ。この一本まえの第三便だと車体左側面に少し日がさすこともある。この場所は日差しを考えるといろいろむずかしい。それでも、列車の背後の木々が輝いて見える昼過ぎからのこの雰囲気は私は好きだ。

ここまで湯乃澤橋のところにいたから、体も冷えた。同じ場所にいるのもさすがに飽きてしまった。なにしろ8時すぎからずっと同じ場所にいて同じ構図の写真を撮っていたら、いくらなんでも飽きるよ。カメラボディを2台持っているのをいかして、あいまに予備ボディで列車以外のものを写したくもなる。頼まれてきたのではなく自分の趣味で来ているのにね。

そこで、どこかへ移動したくなって機材を撤収して駅に向かった。そこへ、こんどは7005列車を牽引して、予期していなかった機関車が姿を現したのだった。

【撮影データ】
Nikon Df, D7200/AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED/RAW/Adobe Photoshop CC