2019年1月15日火曜日

【2018年夏関西リハビリ鉄記事】もうひとつの「近鉄」こと近江鉄道訪問記 最終回. 900形はイルカ?

あれ、イルカはいるか?

■彦根駅は……いいものだ!
江鉄道の鉄ヲタにとっての魅力のうちのひとつとして、とても有名だったのは彦根駅構内の留置車両のようすだった。いや、つい10年ほど前までは、留置車両どころか解体部品も多数置かれていて、宝のありかといっても過言ではないほどだったようだ。みなさんがネット上にアップしてくれている写真をいま見ると、思わずアツくなる。

その彦根駅構内も2007年に駅前再開発とともにだいぶ整理され、さらに近江鉄道ミュージアムとしてときおり構内が公開されるようになっていたのは私でも知っていた。そこにいる各種電気機関車や、西武鉄道から購入した新101系電車と301系電車が見られることも。けれど、私はついぞ訪問することができなかった。

言い訳はいろいろできるけれど……やむを得ない。そうして、その近江鉄道ミュージアムも閉館が決まり、西武鉄道から購入した車両も着々と改造工事が進んだいまになってようやく彦根駅にたどり着いたというわけだけれど……2018年8月末の様子であっても私はたいへん萌えた。いいものだな……指先で八日市から乗ってきた100形電車103編成を弾きたいほどだった。

近江鉄道は……いいものだ!

■イルカはもういなかった
八日市から乗ってきた電車の乗客のほとんどがJR東海道本線に乗り換えていくなか、米原行きの列車はしばらく停車している。私は米原まで乗るつもりなので、ホームからわずかに彦根駅構内を観察していた。

まず、元西武鉄道新101系電車269編成であった900形電車は、西武ライオンズのレジェンドブルーにピンクの帯とイルカ模様ではなく、白地に各種ドットの塗装にされていた。なんでも滋賀県観光キャンペーン「虹色の旅へ。滋賀・びわ湖」のPR電車として、「虹旅号」として年末まで運行されていたようだ。知らなかったけれど、T.M.Revolutionの西川貴教さんって滋賀県出身なのね。

■近江鉄道ってなんだかすごい
この電車の興味深いところは、塗装ではなく、近江鉄道が購入した西武新101系電車のうち唯一、車内の座席のほかにブレーキシステムが変更されたことだ。

近江鉄道のたいへん興味深いところは、吊り掛け式駆動の電車を用いていたころから、ブレーキシステムだけは最新鋭のHRD-1電気指令式ブレーキを用いていたこと。技術的なことは私には解説しづらいけれど、電気指令式ブレーキはブレーキの効きのよさと、空気管を運転台に引き込まないで済むなどのメンテナンスのしやすさが利点なのだそうだ。

現在、近江鉄道の主力車両である元西武鉄道401系電車である800形・820形や、数年前まで営業運転されていた220形もすべてこの電気指令式ブレーキを用いている。900形はその仕様に合わせたといっていい。近江鉄道の魅力は、こうした高い技術力を持っていて、手持ち部品で電車の新造さえ行うところにもある。メンテナンスを外注する鉄道会社だって少なくないのに。

西武鉄道時代のようす(新101系269編成) (2008年10月)

ところが、そのあとに西武新101系電車から改造された100形電車は、このブレーキシステムの改造は行わず、種車のブレーキシステム(HSC-D電磁直通ブレーキ)をそのまま用いている。

その理由はおそらくは改造費用を抑えることと、工事期間を短くするためなのだろう。今後、800形・820形電車を置き換えていくと、その解体部品を再利用して100形電車のブレーキシステムも改造されるかもしれない。

また、いまのところ残置されているふたつのパンタグラフも、片方のみにされる可能性もあるのではないかと思う。900形と100形は電動機の出力が800形・820形よりも大きいぶん、電力消費が多いはずであり、800形・820形や700形はいずれもパンタグラフをひとつに改造されているから。もちろん、すべて勝手な想像なのだが。

それにしても100形だって、もともと2両固定編成の第1編成から第3編成に仕様を合わせるかのように、第4編成と第5編成は301系電車の中間車に両端の先頭車の運転台部分を切り継いで改造をするとは。運転台直後の窓の有無が改造の目印。そういうところは「さすが近江鉄道」と思わされた。

まさか、西武新101系の2両固定編成がこうして増えるなんて。高宮で留置されている3000系電車もこんな感じで2両編成に改造されるのかなあ。

この301系電車の運転台を中間の電動車に切り継いだわけか(2010年5月)

8両固定編成の301系を撮っているのは少ないかも(2012年10月)

そんなことを考えながらプラットホームから留置されている220形電車や工場などを見ていても、興味深くて退屈しない。見たかった赤電塗装の822編成には遭遇できなかったのは残念だけど、これはまたこの近江鉄道を訪問せよ、という天の声だと私は解釈した←すごく自分に都合のいい天の声だこと

「ぶさいく」といいつつ各地の譲渡車を撮るほど好きなんだな、私は
(2012年5月、所沢)

■彦根でみなが降りた理由をようやく知る
さて、10分ほど停車した米原行き電車にふたたび乗り込んだ。車庫の裏手に線路が回り込むとトンネルがあり、にわかに車窓風景が変わる。そして、木立を抜けて列車は走る。新幹線からも見えるのはこのあたりだ。エレベーターの研究塔を見ながらゆっくりゆっくりと列車は走って米原にたどり着いた……。

あー! 彦根と米原って東海道線なら5分なのに、新設されたフジテック駅と鳥居本駅の二駅を経て倍の時間をかけて走るのか。そして、同区間の運賃はJRは190円で近江鉄道は310円。だからみんな彦根で乗り換えるわけね……。2018年12月に発表された近江鉄道の経営状態を示す資料によると、この区間の最混雑列車で乗車人員が64人とは。なるほど……カメラのおっちゃんは地図を見るまでわかってなかったのだ。

高宮にいた第4編成は先頭化改造したやつだね。元303編成

3000系も同じように2連化改造をするのかな

そうして米原で降りて私のはじめての短い近江鉄道初乗車が終わった。こんどはもっと健康なときに近江鉄道訪問を目的にして、時間をかけて撮りに来るから……その日が遠からずめぐってくるように、といまも願っている。

なお、昨年9月より続けていた「関西リハビリ鉄」記事もこれで最終回となります。長らくのご乗車お疲れさまでした。

【撮影データ】
■近江鉄道:Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH. /LUMIX G 42.5mm / F1.7 ASPH. / POWER O.I.S.
■西武鉄道:Nikon D2X, D4/AI AF Nikkor 50mm f/1.4D, AI AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>
いずれもRAW/Adobe Photoshop CC 2019